2008年12月1日(月)17:00−19:00 ICU第二教育研究棟301
「外国人児童生徒の日本語―学習言語の伸びをどう測るか」中島和子先生公開講演会
フロアからの質問(質問用紙を通して)と先生からの回答
1.カナダのろう教育について参考文献などよかったらおしえてください。
たくさんあります。まず、『バイリンガルでろう児は育つ』(2008生活書院)のカミンズ論文に一部私が解説を加えました。もっと詳しい解説は2009年に出版する本の中にあります。『バイリンガル教育と外国人児童生徒教育』(2009ひつじ書房)。英文のものは山ほどあります。
2.地域の日本語教室で週に1度2時間中学生を教えています。中学生から来日した子には言語習得がキビシイということを日々感じています。本日のお話でもつくづく感じました。そういう私たちに元気をいただけるような「そういう立場の子はこうするとうまくのびるよ」というお話はありませんか。
・森迫龍一「日本語教室でルーツ語の保持・伸長を測ろうールーツ語やアイデンティティの喪失をくい止められなかった反省として」『部落快方』200711号589号pp.20-31
・アイデンティティーブック www.multiliteracies.ca カナダで行われている子どもの自尊精神を高めて学習意欲を積極的にする試み。
3.引用文献の中で築樋さんの二つ目の出典先はどちらでしょうか。もし手にいれたい時の参考までに教えてください。
東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター『フォーラム 在住外国人児童生徒のための教材開発から見える課題とその解決に向けて』報告書 (2008年7月27日)次のウェブサイトからダウンロード可。
http://www.tufs.ac.jp/blog/ts/g/cemmer/publication.html
4.パワーポイントの最後の「どのぐらいで追いつくのか?」の中で、「教科学習言語」の7-10年の到達部分はネイティブの大人を想定されているのでしょうか?7-10年の10年が長いので前提を是非伺いたいです。
年齢相応の子どもの力です。大人のネイティブではありません。例えば、カナダが2000年のPISA読解力テストの結果で(A)移住児童生徒の学力が何年ぐらいで(B)非移住児童生徒の読解力レベルに近づくか調べたものがありますが、大体7.5年で(B)との競争力がつき、14年で(B)を(A)が追い越すという結果が出ています。そのほかデータはいろいろあります。
(http://www.statcan.gc.ca/pub/81-004-x/200410/7422-eng.htm)
5.OBC,JDRAなど児童生徒のある時点での、かつ、「テスト」という文脈を設定して測るテストの良い点(役立つ点)と改善点(機能しなかった点)を教えていただきたいと思います。「書く言語能力と場面(文脈)依存度」の関係性も教えていただけるとありがたいと思います。
*改善点について
・OBC ⇒ テスターあるいは、採点者のトレーニングが必要なことです。(トレーニングのプログラムがない)
・ JDRA ⇒ 現在開発・フィールドテスト中ですから、すぐには入手できないこと
でしょう。
* 場面依存度との関係
OBCは、対面テストなので、場面を作り出すことが可能です。状況場面に加えて、絵カードを使いますので、場面に依存するA,B,Cの領域の力を測ることが出来ます。問題点は、テスターが関与すること、また会話力の数量化で採点者のトレーニングが必要です。
DRAは、領域Dのテストです。データが5000ぐらいになると標準化が出来て、実践の上でも研究のためにも使えるテストになると思います。
認知力要求度
A B
OBC
自然会話タスク 対話タスク
基礎タスク
場面依存度
・認知タスク DRA
C D
6.生まれた時から日本で生活している中学生(母語は日本語でない)の日本語力を測りたい場合、どのテストが能力を判定できるのでしょうか。
・ 英語と日本語と両方のOBCおよびDRAを実施するとよいと思います。
以上(文責鈴木庸子)