ICUでの量子力学の講義では、テキストとして、D. J. Griffith, Introduction to Quantum Mechanicsを用いています。この教科書は、米国の大学ではよく用いられているもののひとつです。現代的な題材も扱っています。この教科書の特徴は、practicalである、ということでしょう。はじめに、シュレディンガー方程式が出てきます。「習うより、慣れろ」という感じでしょうか。しばらく進んでから、量子力学の(やや抽象的な)枠組の話が出てきます。
これと対照的なアプローチをとっているのが、有名なJ.J. Sakurai, Modern Quantum Mechanicsです。こちらのほうはなかなかシュレディンガー方程式がでてきません。量子力学を基礎からしっかり学ぼうとするときには適した教科書だと思います。これをちょっと簡単にしたものが、J. Townsend, A Modern Approcah to Quantum Mechanicsです。この本も米国の大学の量子力学入門コースでよく用いられているようです。
日本語だと、とりあえずざっくり全体をつかむには、小出昭一郎、量子力学I, II(裳華房)あたりがよいと思います。独学でも読めると思います。ただ、最近重要視されている話題についてはあまりふれられていません。清水明さんの新版量子力学の基礎(東大出版)は面白いです。また、最近、長らく出版が待たれていた(というか、もう出版はないのではないかと思われていた)高木伸さんの量子力学I, II, III(丸善)がついに出版されました。かならずしも初めに読む本として勧めませんが、これもまた面白い(いろいろ反省させられる)。
いずれにせよ、1冊の本だけでみなわかるということはあまりないと思うので、違う感じの教科書を読んでみるのがよいのでは。。。もちろん実際に問題を解いたり(ときには計算機を使って)することが大切です。私自身は学部学生のころは、朝永先生の量子力学を読み(眺め?)、そのあとランダウリフシッツをよく読んで(見て)いました。就職してからセミナーでJ.J. Sakuraiを読んでずいぶん理解が深まった(よく理解していなかったということがよく分かった)感じがしました。