6.考察と結論



以上の実験の結果から、私たちは以下のような考察に至った。

@私たちは当初、先行実験の多くにミルククラウン形成の際、液体を落とす液面を浅く設定してい
 た例が見られたことから、ミルククラウンは落とした液体が底に当たって形成されるものである
 と考えていた。だが、今回の結果から液体を落とす液面の深さが深くても、一定の条件化ではク
 ラウンが形成されるという結果が得られた。
    →クラウン形成における高さと深さは滴下される液体が持つ運動エネルギーの問題であり、
     単純に液面が浅いからクラウンが形成されるという問題ではない。つまり、高さを変え
     ることで様々に変化する液体の運動エネルギーに対し、それに応じたクラウン形成にと
     って好ましい深さに水面の深さがあれば、クラウンは形成されうる。

A牛乳と比べ、コンデンスミルクではきれいなクラウンが形成されなかった。
    →液体の粘度も形成の一要因ではないか?
     (水あめの原理:水あめの上に水あめの滴を落としても、下に敷いてある飴の上に落ち、
      しだいに吸収される)粘度が運動エネルギーの伝達を妨げているのではないか?

B水ではAのついたクラウンが形成されず、クラウンに似たものもかなり限られた条件化でのみ
 形成された。
    →水の表面張力の大きさが他の液体に比べて大きいからではないか?
     表面張力によって水は丸くなろうとする。(例えば、ミルクは水に比べて丸くなろうと
     せずに膜になる)この性質によって膜ができにくい水は、水滴を落とした際に下にしい
     てある水が上からの運動エネルギーによって押し出され、反作用が働き、斜め上方向に
     水の飛沫が上がる。つまり高さのあるクラウンを形成することができない。

CBより、水でクラウンが形成されにくい原因に表面張力が関係しているとするならば、
 水に界面活性剤を混ぜ、表面張力を下げればクラウンが形成されるのではないかと考えた。
 今回の実験により、水と比べて石鹸水ではクラウンが形成されやすいという結果が得られた。
    →水に界面活性剤を混ぜる、すなわち表面張力を下げることによって出来た石鹸水のほう
     がクラウンの形成がされやすいということから、表面張力の少ない液体の方がクラウン
     が出来やすく、表面張力がクラウン形成の一要因。

Dしかし、牛乳と石鹸水におけるクラウン形成の結果をそれぞれ比較すると、牛乳の方がきれいな
 クラウンが形成された。
    →単純に表面張力が低いとクラウンが形成されやすくなるというわけではなく、表面張力
    以外にもクラウン形成に必要な要件が存在する。


結論
過去に行われてきた実験では、クラウンの形成要因は粘度とするものが多かったが、液体の表面張力と
滴下される液体の運動エネルギーも美しいミルククラウン形成の一員であることが分かった。


参考資料: 
石井秀樹、郡司博史、斉藤亜矢、酒井敏「Digital VideoによるMilk Crownの観察」
<http://www.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/~sakai/project/milk/html/index.htm>
―――「ミルククラウンに関する実験」『ながれマルチメディア』
<http://www.nagare.or.jp/mm/2003/gunji/index_ja.htm>
Dror Bar-Natan "Milk Drops." Dror Bar-Natan's World-Wide-Web Home Page
<http://www.math.utoronto.ca/~drorbn/Gallery/Misc/MilkDrops/index.html>
「ミルク・クラウン現象」 ミルクの館『牛乳に関する豆知識』
<http://milk.asm.ne.jp/chishiki/crown.htm>
「ミルククラウンを撮影しよう」『科学のつまみ食い』
<http://www.kagaku.info/milkcrown0003/index.htm>




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