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2013年1月1日
指導教員：岡村秀樹 |
割り箸のきれいな割り方
1. 背景
古川修氏のきれいな割り箸の割り方の先行研究によると（古川 2011）、
（1）割り箸を水平で先が左、根本が右方向になるように向け、上下に割れるようにする。
（2）先からスリーフィンガーあたりの同じ位置で、右手が下、左手が上になるようにして、箸をつまむ。
（3）ゆっくり静かに左手を上に持ち上げていく。右手は動かさない。
という割り方が割り箸を綺麗に割れる方法であるそうだが、割り箸を持つ部分、持ち方、割り方、割る速さが関係しているように伺える。
2. 目的
古川修氏の割り箸のきれいな割り方に関する先行研究があったが、条件が複雑であり実際に必ずしもうまく割れない。これに変わる誰でもきれいに割れるような割り方を割り箸を持つ部分、持ち方、割り方、割る速さなどの要素から検討する。
3. 「点数化」についての説明
最終的に分かりやすい結果にするため、割れた割り箸に点数をつける。しかし、「綺麗に割れた」「綺麗に割れなかった」の判断は、主観的なものであり、人によって違うものである。採点者同士による採点基準の差を軽減するためにも、割れた後の箸の形状に基づいた判断基準を以下のように設けた：
・
○（２点）：綺麗に割れたもの。分解された２つの木材の横幅はおおむね均等である状態。
・
△（１点）：まぁまぁ綺麗に割れたもの。横幅が均等でないとはいえ、どちらの箸も持ち手の形は整っている。
・
×（０点）：全く綺麗に割れなかったもの。片方の箸の持ち手がもはや尖っているもの。
以下の次の図は、それらの見本である。
図：採点基準の見本
実験によって得られた点数は、最高点（すべて○の状態で割れたときの点数）との比でパーセンテージ化される（実験によってサンプルの本数が異なるため）。基本的にはパーセンテージの一番高い割り方が事実上の「最も割れやすい割り方」となるが、その際他の条件との差が偏差値以内だった場合実験結果は無効となる。
4. 実験1
〔手法〕
本実験前の予備実験として行った。以下のファクターを考慮して実験した。
（1）割り箸の先端の向きを変えて割る
（2）割り箸の持つ位置を変えて割る
（3）割り箸の湿度を変化させて割る
ファクター（3）では割り箸が含む湿気の量を変化させるため、以下のような状態の割り箸で実験した：
A: ストーブの前に置いておいたもの
B: ヤカンから出てくる水蒸気にヤカンの口から5 cm ほど離した位置で1分間当てたもの
C: お湯に5分浸けたもの
D: お湯に30分浸けたもの
〔結果〕
（1）割り箸の先端の向きを変えて割る
|
持ち方 |
○ |
△ |
× |
点数 |
％ |
|
上 |
20 |
10 |
0 |
70 |
78% |
|
下 |
19 |
11 |
0 |
68 |
76% |
|
右 |
16 |
14 |
0 |
62 |
69% |
|
左 |
16 |
13 |
1 |
61 |
68% |
（2）割り箸の持つ位置を変えて割る
|
位置 |
○ |
△ |
× |
点数 |
％ |
|
上から1/4 |
3 |
2 |
5 |
13 |
43% |
|
上から3/8 |
6 |
4 |
0 |
26 |
87% |
|
真ん中 |
7 |
1 |
2 |
23 |
77% |
|
上から5/8 |
8 |
2 |
0 |
28 |
93% |
（3）割り箸の湿度を変化させて割る
|
条件 |
○ |
△ |
× |
点数 |
% |
|
A |
2 |
13 |
5 |
17 |
43% |
|
B |
2 |
12 |
6 |
16 |
40% |
|
C |
2 |
12 |
6 |
16 |
40% |
|
D |
1 |
16 |
3 |
18 |
45% |
〔考察〕
割りばしを縦方向に5/8の位置で割るのが最も綺麗に割れるという結果が得られた。また実験結果より、割りばしの向き、持つ位置は割り箸の割れ易さに変化をもたらすものと考察できた。
一方、湿度の変化は結果に大きな違いがみられなかったので、これ以降の実験対象からは除外することとした。しかしながら、“湿度の変化は箸の割れ方に影響を及ぼさない”という事実は、割り箸の柔らかさを変化させても割れにくさが変動しないということを意味する。つまりは、割り箸には木目が存在し、いくら湿らせても割り方が統一されていればその木目に沿って箸は割れていくのだ。割れ方が木目に左右される度合いはその箸の製造方法に大きく左右されるが、箸の木目の入り方には個体差がある故、同じブランドの製品を使っても上手く割るものとそうでないものに別れる。また、この実験は漢字でパッケージが書かれている割り箸と英語でパッケージが書かれている割り箸の2種類の割り箸で実験を行った。漢字のパッケージの割り箸はアルファベットのパッツケージの割箸よりも割りやすかった。従って、箸の材質、木目の入り方が割り箸がきれいに割れるか否かを左右する大きな要因という考察も得られた。この結果を踏まえて、次の実験からは同じブランドの割り箸を使い、最も木目に逆らって綺麗に割る方法を模索することとなる。
4. 実験2
実験1の結果から出てきた「縦に割った方がきれいに割れる」という仮説と、考えられる他の要素を検証する。考えられる他の要素とは、向ける方向や持つ位置の他にも、持つときの指の本数や割るときのモーションなどである。そのため、検証を行うのは以下の2つの要素である。一つ目は持つときの指の本数、二つ目は割るときのモーション（動き）である。 上記の理由から実験2では①縦に持って割る②横に持って割る③片方を口にくわえて割る、の3つをそれぞれ指の本数、モーションを変えて検証する。共通条件は真ん中で割ることと、自然なスピード＝何も考えない（つもり）で割ることの2点である。
〔手法〕
割り方：(a)扇形：肘を固定させて腕を横に開くように割った。
(b)平行：箸を持った腕をそのまま正面にスライドさせた。
持ち方：(A)親指と人差し指
(B)親指と人差し指と中指
〔結果〕
|
|
動き＋指の本数 |
○ |
△ |
× |
点数 |
% |
|
縦 |
扇＋指２本 |
7 |
19 |
4 |
33 |
55% |
|
扇＋指３本 |
10 |
16 |
4 |
36 |
60% |
|
|
平＋指２本 |
9 |
19 |
2 |
37 |
62% |
|
|
平＋指３本 |
15 |
14 |
1 |
44 |
73% |
|
|
横 |
扇＋指２本 |
12 |
14 |
4 |
38 |
63% |
|
扇＋指３本 |
8 |
16 |
6 |
32 |
53% |
|
|
平＋指２本 |
10 |
17 |
3 |
37 |
62% |
|
|
平＋指３本 |
5 |
20 |
5 |
30 |
50% |
|
|
口 |
扇＋指２本 |
12 |
14 |
4 |
38 |
63% |
|
扇＋指３本 |
8 |
16 |
6 |
32 |
53% |
|
|
平＋指２本 |
10 |
17 |
3 |
37 |
62% |
|
|
平＋指３本 |
5 |
20 |
5 |
30 |
50% |
縦に割った場合の平均％：63％
横に割った場合の平均％：57％
口で割った場合の平均％：57％
〔考察〕
実験より、(扇)+(指2本)が最もきれいに割れることがわかった。しかし、(平行)+(指2本) も点数化すると高い値が出た。したがって、口でくわえて割る場合は、親指と人差し指で箸をもって割るときれいに割れやすいと考えられる。
実験結果によれば、箸を指3本で持ち、平行に力をかけて割るのがベストということになる。実験1から導き出された「縦に割るのがベスト」という仮説も、実験2では否定されなかった。
しかしながら、“綺麗に割ろう”という意識こそが実験結果に影響を及ぼしているのではないかという疑問が実験者の中で生まれた。実験3では、この疑問に答えるべく、被験者によるブラインド実験を行う。
5. 実験3
〔手法〕
ここでは被験者を3人用意し、各被験者に10本ずつ合計で20本の割り箸をわってもらう。はじめの10本は被験者にいつも通りわってもらい、残りの10本は意識させて綺麗にわってもらう。質問は前者は「割り箸をわるのを手伝ってほしい」と伝え、後者では「ごめん、実は図工で使うから綺麗にわってほしい」と統一して行った。
この実験では最終的に意識の違いでどのような差が現れるのか調べる。
〔結果〕
|
|
意識していない |
意識している |
||||||||
|
被験者 |
○ |
△ |
× |
点数 |
％ |
○ |
△ |
× |
点数 |
％ |
|
子供（5才） |
3 |
6 |
1 |
12 |
60% |
2 |
6 |
2 |
10 |
50% |
|
子供（11才） |
3 |
4 |
3 |
10 |
50% |
4 |
4 |
2 |
12 |
60% |
|
大学生A |
3 |
7 |
0 |
13 |
65% |
6 |
3 |
1 |
15 |
75% |
|
大学生B |
3 |
6 |
1 |
12 |
60% |
6 |
2 |
2 |
14 |
70% |
|
大学生C |
5 |
5 |
0 |
15 |
75% |
4 |
4 |
2 |
12 |
60% |
|
大学生D |
5 |
4 |
1 |
14 |
70% |
5 |
4 |
1 |
14 |
70% |
|
大人（30代） |
7 |
3 |
0 |
17 |
85% |
4 |
6 |
0 |
14 |
70% |
|
大人（50代） |
2 |
7 |
1 |
11 |
55% |
7 |
2 |
1 |
16 |
80% |
|
大人（80代） |
5 |
5 |
0 |
15 |
75% |
6 |
4 |
0 |
16 |
80% |
|
大人（30代） |
5 |
4 |
1 |
14 |
70% |
7 |
3 |
0 |
17 |
85% |
|
大人（30代） |
4 |
4 |
2 |
12 |
60% |
6 |
3 |
1 |
15 |
75% |
|
統計 |
平均％ |
66% |
平均％ |
70% |
||||||
|
誤差％ |
10% |
誤差％ |
10% |
|||||||
〔考察〕
力学的にどのような影響を及ぼしているかは分からないが、11人中8人の点数は意識の改善と共に上がったこと、しかし意識している状態としていない状態で平均点数のパーセンテージが誤差範囲である10%に収まってしまうことが分かった。よって割っているときの意識は結果に変化を及ぼさないという結論に至った。
6. 結論
実験1では割りばしを上に向けて、縦方向に5/8の位置で割るのがベストと仮定された。それと同時に、箸の割れ方が元々の木目に大きく左右されることが確認できたため、それ以降の実験では同じ製造方法の箸で実験が繰り返された。実験2では箸を指３本で持ち、平行に力をかけて割るのがベストとされ、さらに実験1の縦に割るのがベストという仮説も肯定される形となった。実験3では被験者による意識で結果に影響が出るか試したが、大きな変化は見られなかった。
結論：箸を指3本で縦に持ち、平行に力を掛けて割るのが一番きれいに割れる。持つ位置は先から5/8あたりが良い。
参考文献
古川修〔インターネット〕.2011.割り箸を綺麗に左右均一に割る方法；〔2012年12月19日アクセス〕.