野菜の火の通り方の研究
国際基督教大学(ICU)
物理学の基礎と概念 2013年度自由研究
学籍番号 151062
指導教員:岡村秀樹
背景
日ごろ料理をする際に、なぜ野菜によって火の通り方に違いがあるのかと疑問に思った。
調べたが、先行研究は見つけられなかったため、自分で調べようと考えた。
目的
本研究の目的は、野菜によって火の通り方が違うかどうかを実験的に確認し、その原因を考察することである。
方法
火の通り方の定義であるが、本研究では、各種野菜を湯に入れ、一定時間加熱した後、野菜の表面と中心の温度を測ることによって、その温度差が小さいものを、火の通り方がよい、と考えることにする。
そして、火の通り具合と、それぞれの野菜の各種要素を比較し、どの要素が、火の通り具合に最も関連しているかを調べる。
まず、野菜によって水分量が異なるので、水分量が関係する可能性がある。
また、水に浮く野菜と浮かない野菜があるが、そのことも関係する可能性がある。浮く浮かないは、密度によって分かる。
実験では、2cmの立方体にカットした野菜を、一定時間沸騰した湯で煮る。その後、野菜を湯から取り出して半分に切断し、表面と中心の温度を棒温度計で測定する。
結果
下表に結果を示す。下表において、水分量は、可食部100g中のg数である。(参考文献
1より)。実験は2回行った。1回目、2回目それぞれの左側が外側の温度、内側の温度である。それぞれの実験での、外側と内側の温度差を、2回分並べて記
載した。さらにそれらの合計を一番下の欄に記入した(これを2で割ると平均値になる)。温度の単位は摂氏である。

考察
表をみると、外側と内側の温度差が大きい食材はにんじん、ジャガイモ、大根、サツマイモなどであり、これらが本研究の定義でいえ
ば、火の通りにくい食材、温度差が小さいものは、なす、かぼちゃ、きゅうり、ズッキーニであり、これらが、火の通りやすい食材、ということになる。野菜は
火が通りやすく、根菜類は火が通りにくい、と言えそうである。
また、ジャガイモやサツマイモは、湯から取り出してすぐに温度が下がるようだ。こららは、上述のように外側と内側の温度差が大きい、すなわち火が通りに
くい食材である。これは内部まで温度が上がっていないからであろう。にんじん、なす、キュウリなどは、温度が下がりにくい。これらは外側と内側の温度差が
小さく、すなわち火が通りやすい。これより、湯から上げてからの温度と、火の通りやすさとは関係がありそうである。火の通りやすい食材は、温度が下がりに
くい傾向がある。
水分量と比較してみると、火の通り方と直接は関係していないと言えそうである。
密度との関連性も見てみよう。一般に、野菜は水よりも密度が小さく、水に浮く。根菜類は、密度が高く、水に浮かない。(これはおそらく、地中で育つか、
空気中で育つか、のそれぞれの育成環境の違いにより、冠水時等に、被害を最小にするためではないかと考えられる)。火の通りやすさと比較してみると、水に
浮く、水よりも密度の小さい野菜は火の通りがいい。逆に、密度が高い根菜類は火の通りが悪いと言えそうである。
以上より、火の通り方は単純な熱伝導率の問題ではない。密度との関連性から、密度の小さい野菜には何か隙間のようなものがあり、そこから高温の蒸気や水が内部まではいりやすく、そのため内側でも温度が早く上昇するという仮説が考えられる。
結論
密度の小さい野菜は、火の通りがよい。密度の大きい根菜類は、火の通りが悪いことが見いだされた。野菜類は、高温の蒸気や水がはいりやすく、そのため内側でも温度が早く上昇するということが考えられる。
参考文献
植物構造学
1) 野菜ナビ 水分の多い順 主要野菜
2) WholeFoodCatalog いも及びでん粉類 さつまいも(塊根、生)