胸ポケットからiPhoneを落とさない条件
国際基督教大学
物理学の基礎と概念
担当教員 岡村秀樹
2014年11月19日
自由研究
グループ08
・大宅早紀
・小野陽子
・大桐麻実
・金井奈穂
・中山咲良
・山内馨
・李南昊
・白坂主税
・矢崎萌
概要
胸
ポケットからiPhoneがどのような条件で落ちるか
・
ポケットの深さ
・
実際の動作
に
ついて「中肉中背のサラリーマン」のモデルケースで考察する
動機
日
常的にポケットに入れていた鍵やiPhoneをなくしたり、落としたりする事案は発生する。
特
にiPhoneを落としてしまい画面にひびが入ることは多々あることで、研究グループでも一人は既に落として割ってしまっていた。
そ
のためどうしたら落とさずに済むのかを調べ、その被害を減らしたい。ポケットに入れなければよいなどと言うがそれではポケットが存在する意味がない。
そ
こでポケットに入れたままでどのような行動をとった時に落ちるかと、どのような条件なら落ちないのかを調べる。
今回の実験では胸ポケットから落ちてiPhoneが壊れてしまう被害が多いといわれるサラリーマンをモデルケースにした。

先行研究・仮説
ワ
イシャツの販売を手がける株式会社フレックスジャパンによれば(田中2012)、「15.5cm〜17.5cm」
の深さの胸ポケットがiPhoneを落としにくく、機能的であるそうだ。
しかし、この情報にはどういった動きを想定しているのか表示されておらず、またどの動きと深さがどういった関連があるのかも表記されていなかった。
そこで胸ポケットがある程度浅く、かがむような動作の時に落下しやすいのではないか、という仮説のもとポケットの深さを調節しつつ、さまざまな動作でもっ
て検討しどのような対策をとればよいか考察する。
実験1
【想
定】中肉中背の中年サラリーマン
【使
用するiPhone】
プラスチックケースのiPhone5s
ポ
リエステル100%(スーツの胸ポケットの裏地と同じもの)のシャツの片袖を切り、ポケットに見立てて左の胸ポケットに縫い付ける。
同
じ行動を5回繰り返し、落ちた回数を記録する。
ポ
ケットの深さを変えていき、その変化について考察する。
ポ
ケットの深さは10cm~30cmを30cm~20cmまでは5cmおき、20cm~10cmは1cmおきに変えていく
実
験ではポケットの深さの位置を縫いあわせることで調節した。
iPhone
が落ちてしまうと想定される、以
下の3通りの行動で実験を行う。
@電車に間に合うよう走る行動
A高い場所の物をつかむため跳ぶ行動
B
屈
んで物を拾う行動


結果
|
走
る |
跳
ぶ |
拾
う |
30cm |
0 |
5 |
4 |
25cm |
0 |
5 |
0 |
20cm |
0 |
5 |
0 |
19cm |
0 |
5 |
0 |
18cm |
0 |
5 |
0 |
17cm |
1 |
5 |
0 |
16cm |
0 |
4 |
1 |
15cm |
0 |
4 |
0 |
14cm |
5 |
5 |
3 |
13cm |
5 |
5 |
5 |
12cm |
5 |
5 |
2 |
11cm |
5 |
5 |
4 |
10cm |
5 |
5 |
5 |
考察
「走る」場合、15cmまでは落ちず、それよりも浅いときに大体落ちると
いう結果が得られた。
先
行研究の15.5cm~17.5cmで落ちない、というものに沿った結果になった。
「跳ぶ」場合、ほぼすべての区間で落ちていたが、15cm~16cmの時
にのみ落ちない時があった。
こ
れは全長13cmであるiPhoneが入口でひっかりやすい高さだったために得られた結果だと考えられる。
「拾う」場合、30cmでだけ落ち、それ以降は14cm
に到達するまで落ちづらかった。
30cmの時に落ちていたのは深すぎるために
ベルトの部分やおなかの肉に押され落ちる、という理由であった。
全
体を通して、15cm~16cmが最も落ちづらいという先行研究とほぼ変わらない結果が得られた。
仮
説ではかがむときに落ちやすいのでは、としていたが、この実験を通して胸ポケットに入れているiPhoneはかがむときよりも跳ぶ時のほうが落ちやすい、
つ
まりポケットが横を向くときよりも上下運動をしている時に落ちやすいと考えられる。
実験2
前
回の実験ではプラスチックケースで行ったが、
ケースの材質を変えることで滑りやすさが変わり落ちにくくなるという要素が考えられるので、
ほぼ毎回落ちる範囲の12cm~15cmの走る場合と跳ぶ場合に限定し
ケースの材質を合皮カバーに変更してもう一度実験を行った。

結果
|
走る |
跳ぶ |
15cm |
0 |
5 |
14cm |
2 |
5 |
13cm |
5 |
5 |
12cm |
5 |
5 |
考察
ケースの材質を変更しても跳ぶ場合にはほとん
ど影響がなく、
走る場合、14cmの時に少し落ちにくくなった。
材質は滑りやすいプラスチックのケースと滑りにくい合皮ではあまり差がなかったため、
iPhoneの滑りやすさと落ちやすいことは関連が低いと考えられる。
全体としては15cm〜25cm程度の深さのポケットであ
れば跳ぶ以外の動作ではiPhoneはほぼ落ちないことがわかった。
iPhoneが胸ポケットから落ちる要因は上下運動が最も関連すると考察できる。
結論
仮説とは反し、iPhoneが最も落ちる行動は上下運動であり、iPhoneカバーの滑りやすさはあまり関連がなかった。
基本的にある程度の深さのポケットにiPhoneを入れれば跳ぶことさえしなければ落とすことはないが、
跳ぶ必要性がある場合ではポケットからiPhoneを出すか、蓋のついたポケットを利用する。
iPhoneのケースで対策する場合、滑りにくさはあまり関連がないため落としたときに衝撃を吸収するものや、
そもそも落とさないようにポケットにぴったり密着するほどの大きさのものを購入する必要がある。
参考文献
田
中 弘次(2012)「ス
マートフォン対応ポケット(スマポケ)サービス開始」,<http://www.plateau-
web.jp/hpgen/HPB/entries/117.html>2014
年10月29日アクセス.