足音の科学

国際基督教大学
GEN011 N1: 物理の世界(A)- 科学的な考え方
2014年11月20日(木曜日)
指導教員:岡村秀樹教授

Group 9
151072 橋口 佳奈
151145 神宮司 博基
151147 地主 悠
151503 谷山 奈津実
161196 小林 叶
161449 住谷 有紀
171060 降旗 由希子
171244 益田 源太郎



アウトライン

1. 実験の背景
2. 研究の目的
3. 実験1
a. 背景
b. 仮説
c. 実験方法
d. 結果
e. 考察
4. 実験2
a. 背景
b. 仮説
c. 実験方法
d. 結果
e. 考察
5. 結論
6. 参考文献



1. 実験の背景

授業中の廊下などを歩く際に自分の足音が気になってしまうことから、静かに歩く方法を調べようと考えた。角田(2008)の調査によると、他人の靴音がうるさいと思ったことがある人は全体の65%であり、思ったことのない人は35%であった。

騒音を発生させないようにするためには、歩き方を工夫するなど周囲への配慮が必要である。
靴の形状と歩き方、歩く場所などが、どのような影響を足音に与えるのかを調べたい。




2. 研究の目的

靴の形状と歩き方が、足音の大きさに影響を与えるのかを調べ、
どのように歩けばあまり音を立てずに歩けるのかを明らかにしたい。




3. 実験1

a. 背景

様々な歩き方があるが、どの歩き方が最も静かに歩けるのか?
また、靴の種類によって、最も静かな歩き方は違うのだろうか?

【足音に関する先行研究】
・忍者の「抜き足差し足忍び足」
忍者マイスターより(http://www.2nja.com/2nja_ability/2nja_shugyou.html)
 忍者の最大の特徴であるのが、「歩き方」です。俗に言う「抜き足差し足忍び足」は、忍者の独特の歩法である「足並み十法」に示されている足音を立てにく い歩き方を並べたものなのです。また、忍者は「忍歩」と呼ばれる独特の歩法を持っており、普通に歩効率よく長距離を行くことが出来るといわれています。

・抜き足差し足とは
抜き足
 足を小指から徐々におろしていく歩き方。前に進んでいる時に、こっそり片足を出し着地する。
差し足
 着地した抜き足の横位置にもう片足を着地させる。前傾姿勢にならない。
忍び足
 差し足が着地した一呼吸後に抜き足でやや前傾姿勢で出す。

・なんば歩きとは
右手と右足、左手と左足と足と体を合わせる歩き方。
なんば歩きでは足音がたたず静かな歩きとなり、腰もねじれず頭も上下左右にはぶれないため、長距離を楽に歩くことができると言われる。
腰をねじらずにまっすぐにしたまま、手を振らずに小股にスーッと歩く。
「忍歩は、右手と右足、左手と左足と言うように踏み出す足と体をあわせる歩き方です。腰の動きがほとんど無いため疲れにくく長距離を歩けるといわれていま す。」
(忍者になるために必ず身につけたい術と知識 http://nanapi.jp/37925/ )
腰の動きがほとんど無いという事は歩く際の音に影響が見られるのではないかということで今回の歩行方法に採用した。

インターネット上で様々な歩き方が検索できたが、最も静かな歩き方に関しての先行研究はなかった。また、くつの種類の違いによる足音の違いにも言及されて いなかった。
下の仮説をたて、靴の種類ごとの最も静かな歩き方を明らかにするために実験を行った。

b. 仮説

i. 衝撃の少ない歩き方が静か(なんば歩き・抜き足差し足)
ii. 足に密着した底が平らな靴が静か(スニーカー)

c. 実験方法

被験者:20代男女7名(グループメンバー)
実験場所:理学館3階廊下
床の材質:リノリウム
使用機材:
 Garage Band(音圧測定用・録音用)
 Photo Booth(録画用)
 単一指向型マイク
手順:
 グループメンバー各自が様々な靴を持ち寄り、8メートル先からマイクに向かって歩いた。
靴の種類:
 サンダル, ランニングシューズ, 厚底靴, ハイヒール, ぺたんこ靴, ブーツ, ローファー, 作業靴, うわばき, 革靴, 下駄, モカシン,ウエッジサンダル
歩き方:
 i. ベーシック

 ii. エレガントウォーキング(足を交差するように)

 iii. なんば歩き

 iv. 抜き足差し足

 v. かかと歩き

 vi. つま先歩き


d. 結果

歩き方 足音の静かだっ た靴の種類
抜き足差し足
(爪先の小指側からついて歩く)
スニーカー、革靴、ゴム靴など
爪先歩き ハイヒールのある靴(踵部分の素材が硬いもの)
 ※他の歩き方をすると一番音が大きい
踵歩き 踵が遊ぶ靴(ビーチサンダル、下駄)
 ※他の歩き方では踵部分が地面を打ってしまう
その他の歩き方 特筆すべきものなし

e. 考察

一部例外(ハイヒール)はあるものの、抜き足差し足が静かと感じられることが多かった。
ハイヒールの足音はよく響いてうるさい。
ハイヒールの場合、歩き方と足音の関係性が他の靴と異なる。
サンダルの場合、足音だけでなく靴と足の衝突音が鳴っていた。

【問題点】
・被験者バイアスがかかってしまったため、先行研究により静かだと思っているなんば歩きや抜き足差し足では歩き方が慎重になってしまった。
・歩く人も、使う靴も異なっていたので、データとして正確性に欠けていた。
・抜き足差し足は確かに静かだったが、歩き方が難しかったため歩行速度が遅くなり、テンポが他の歩き方のときと異なってしまった。
・耳で聞いた音を実験結果として扱ったため、主観が大きな影響を与えてしまった。

【次の実験に向けた改善点】
・被験者に真の実験目的とは異なる実験概要を伝え、足音を気にせず歩いてもらう。
・靴を統一する。
・急いでいるときに静かに歩く方法を探るのが実用的だと考えたので、急いで歩くよう指定する。
  =静か、かつ急いで、歩いてもらう。
・音を周波数やデシベルで測るソフトを使い、記録する。
・どのような歩き方をしているかが分かりやすいよう記録する。




4. 実験2

a. 背景

バイアスのない被験者の場合も、実験1のような結果を得られるのか?
より精密な観察を通して、分析を深めたい。

【靴音の鳴る仕組みについての先行研究】
ここ数年、婦人靴による甲高い靴音が駅の階段やエスカレーターなどで鳴り 響き、多くの人を不快にさせている。(角田 2008)
田中基八郎らの足音の研究(2001)によると、靴音の音圧の時間波形は、図1のように一歩の着地のときの二つの大きな衝撃波から成り立っている。第1波 がかかとの着地音であり、第2波が靴 底前半部の着地音である。通常の一本の着地では、第1波のかかとの着地がやや衝撃的であり、第2波の靴底前半部の着地で体重のほとんどが床に伝わるため、 第2波めの音圧は第1波めにやや近づいた大きさのものとなっている。
女性のハイヒールの歩き方の場合女性においても、はっきりとした二つの音圧が計測される。(図4)


参考文献:
角田由美子ほか「婦人靴による騒音に関する調査」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007054773/
田中基八ほか「靴音の解析(<小特集>音響利用技術-音響情報・音響エネルギー-)」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002386148/


調べた内容を元に、それが静かな歩き方と関連付けられないかを考えた。実験1での観察や先行研究から、足音の計測にハイヒールが適していると考え、被験者 にはハイヒールで歩いてもらうこととした。

b. 仮説

実験1より、静かに歩くために爪先のみで歩くはず。

c. 実験方法

靴の種類:サイズ24cm、高さ7cmのハイヒール

被験者:20代女性5名
実験場所:新D館会議室251
床の材質:フローリング
使用機材:
 レコーダー(録音用)
 Decibel 10th(デシベル測定用)
 Wave Surfer(音圧測定用)
 単一指向型マイク(録音用)
 iPhoneのカメラアプリ(録画用)
 slo pro(スローモーション再生用) 
 ビデオカメラ(録画用)
 デジタルカメラ(撮影用)
手順:
 被験者には実験内容を伝えず、会議前および会議中に電話がかかってきたと想定して早足で歩いてもらう。
 まずは静かさを意識せずに歩いてもらった。
 次に、静かな状況下で歩くことを意識させて2回歩いてもらった。

d. 結果

・足音音量の平均

一回目 二回目 三回目
被験者(1) 58
61
51
被験者(2) 66
53
53
被験者(3) 59
49
49
被験者(4) 63
47
46
被験者(5) 57
49
47
(単位:dB) 

上の表から、最も静かに歩いたのは被験者(4)ということがわかる。
そこで、最も静かに歩いた被験者(4)の歩き方を分析し、被験者(4)以外の被験者とどのような違いがあるかを比較検証する。

【動画】
・被験者(1)

・被験者(2)

・被験者(3)

・被験者(4)

・被験者(5)


*共通の歩き方
・一回目
踵から着地し、爪先が最後につくような歩き方をしている。
また、つま先のつく順番としては、小指側から親指側に向かってついている。
中には、小走りで歩いているため、足が浮き上がってからどたんとついている人もいる。例えばそれは被験者(1)(2)に顕著に表れている。その場合、靴の 着地時の靴と床面の衝突音、靴と床面との間にある空気の圧迫音も大きな音の原因になっているように見受けられる。

・二回目および三回目
被験者(1)の実験の際指示がうまくいかず、被験者が音を気にせず歩いてしまった。踵から着地して歩き大きな音が鳴ったので、以降は静かさを意識するよう 強調して伝えた。
すると残りの被験者たちは音を気にしながらの歩行になっていたためか、ヒール部分が地面から浮いていたようだ。

*被験者(4)(最も静かな歩き方だった被験者)の歩き方
・普通
ひざの伸縮が自在に行われており、足を下ろす際にもヒール部分がとんと床に衝突した後に小指から親指の順に爪先が着地した。
・静か
音を立てないように、膝を曲げた状態で歩を進めており、足の着地の際には、ヒールは浮かした状態で(時たまヒールが少し床に触れたとしても、またヒール部 を浮かせている)爪先しかついていない。また、小指側の爪先から足を置いているため、抜き足差し足と同じ歩法が用いられている。


【音声(音圧波形)】(縦軸は音圧を、横軸は秒を表す。)

被験者(1) 
(1回目)

(2回目)

(3回目)



被験者(2)
(1回目)

(2回目)

(3回目)



被験者(3)
(1回目)

(2回目)

(3回目)



被験者(4)
(1回目)

(2回目)

(3回目)



被験者(5)
(1回目)

(2回目)

(3回目)




・普通に歩いてもらった時の音圧の波形を見ると、踵が床に着くときに生じる音の第一波と次につま先が床に着くときに生じる第二波がはっきりと見える形で出 た。静かに歩いた時の歩行では、全体的に第一波が普通に歩いた時と比べて小さく、全体の音圧の振れ幅も小さいものになった。これは静かに、かつ急いで歩く という指示により無意識に踵をつく歩き方を避けて爪先で歩いたからだと考えられる。
例えば、最も静かに歩いた被験者(4)の三回目の歩行の波形を見ると、第一波が普通に歩いた時の第一波と比べて平均的に小さい。この第一波はつま先を主に 使って着地した時のものだと考えられる。
・被験者(1)の場合指示がうまくいかなかったため、普通に歩いたときと静かに歩いたときの差異が無いが、指示をし直した被験者(2)からは、差異が確認 された。

e. 考察

全体を通して最も静かな歩き方だったのは被験者(4)の三回目の歩き方、次点で被験者(5)の二回目だった。映像で確認してみると、普通に歩いた時は踵を 最初につけて歩いているが、静かに歩いたときは爪先と踵同時か、爪先から床についていた。無意識にヒールの踵を着けない歩き方をしていると考えられる。

(被験者(4)歩き方1)        (被験者(4)歩き方3)


(被験者(5)歩き方1)        (被験者(5)歩き方2)

     
ハイヒールを履いている際のもっとも静かな歩き方は、踵を浮かした状態でつま先のみで着地する方法。また、つま先も小指側から親指側にかけて着地すること によって、静か、かつすばやく歩行することができると言える。




4. 結論

  足音が立たないように歩くためには、小指から親指の順に爪先をおいて踵を最後につける抜き足差し足が効果的である。ただし、これは靴の種類にも関係してお り、サンダルのように足と靴とがきちんと固定されていないものの場合には、抜き足差し足だとかえってぺたぺた音が鳴ってしまう。
 ハイヒールは、靴底のヒール部分と床面との衝突が特徴的であるため、他の種類の靴に比べて足音が響く。つまり、足音が気になりやすいハイヒールを履いて いる際すばやく、かつ静かに歩く方法としては、踵を浮かした状態で小指から親指の順に爪先を着地させる、抜き足差し足と似た歩き方が推奨されると考えられ る。その他の靴を履いている際も、ハイヒールのように足音の鳴りやすい場所が分かっている靴であれば、その部分の接地を避けて抜き足差し足で歩けばよいと いうことである。




5. 参考文献

藤原健固(1988)『歩きの科学』,ブルーバックス,講談社
角田由美子,石川亜沙美,2008,「婦人靴による騒音に関する調査」『學苑』    809,昭和女子大学,A117-A123  http://ci.nii.ac.jp/naid/110007054773/
田中基八郎,巽 敏寛,千田 剛,藤野 隆,渡邉 鉄也,佐藤 太一,戸田 富士夫,2001「靴音の解析(<小特集>音響利用技術-音響情報・音響エネルギー-)」『日本機械学會論文集. C編』67(657)一般社団法人日本機械学会,p1303-1308  http://ci.nii.ac.jp/naid/110002386148
「忍術」鬼ノ煙 http://www.k5.dion.ne.jp/~marici/waza3.htm 10/15
「忍者マイスター」忍者トータルサイト忍者マイスター 2007忍者マイスター Limited Company SEO Creative Solutions http://www.2nja.com/2nja_ability/2nja_shugyou.htm 10/15
「忍者になるために必ず身に着けたい術と知識」生活の知恵が集まる情報サイトnanapi nanapi inc. 2012年5月29日http://nanapi.jp/37925/ 10/15