ICU_GEPhysics_Project 国際基督教大学
GEN011 物理の世界A-科学的な考え方
岡村秀樹教授
自由研究 2014
グループ11
171531 R.U
161500 Y.T
171062 T.F
161025 T.C
161265  M.M
171066  Y.F
              M.Y





カレーうどんのつゆの飛び散り方についての物理学的考察
The  Reserch about the Splash of Soup of Curry Udon 

序論 introduction
   カレーうどんを食べるとそのつゆがよく飛び散ると感じている人が存在する。この現れとして、先行研究で、カレーうどんのつゆを飛び散らないで食べる方法が 考案されていることが分かった。また、麺類を食べたときの汁の飛び散りに関しては、麺をすするという行為にその大きな原因があることが判明している。
    本レポートでは、まずカレーうどんのつゆは実際に飛び散りやすいのかどうかを実験する。そして、その結果を踏まえて、カレーうどんのつゆが、その結果にど のように影響しているのかを、つゆの特性に注目して検証する。これにより、カレーうどんつゆ自体に、飛び散りやすさに起因する要因があるのか否かを解明す る。



方法 methods

実験の方法は大別して以下の2項目
1. カレーうどんと素うどんの汁の飛び散り方を比較する。
2. 「カレーつゆ」の特徴を調べる。

実験1: 2種類のうどん食べ比べ実験
実験詳細
同種の器を2つ用意し、その中に同量のカレーうどんと素うどんを入れ、被験者21人にそれぞれを同じ本数だけ食べてもらった。それぞれの器の下には白い紙 を敷き、食べ終えた後のシミの数を計測した。なお、この実験はダブルブラインド法を用い、被験者には、どちらのうどんの場合も食べ方には気をつけないで食 べてもらった。
(『濃縮つゆ』生活クラブ、『カレーうどんの素』トップバリュー、『熟成仕込みうどん』マック食品株式会社、直径17cmの器)

仮説1
「カレーうどんのつゆはよく飛び散る」という通説に則り、「カレーうどんのシミの数の方が、素うどんのシミの数よりも明らかに多くなる」と仮説を立てた。

結果1
飛び散ったシミの数 (総計)

 カレーうどん: 79個     素うどん: 71個

カレーうどん シミ素うどんシミ

議論1
この結果から、カレーうどんと素うどんのつゆのシミの数には、大きな差はなく、仮説は棄却された。
よって、カレーうどんのつゆは、他のうどんと比べてよく飛び散るとは言えない。
一般に考えられている説とは異なる結果となったが、これはなぜだろうか。
カレーうどんと通常のうどんのつゆの間には、一見して物理的特徴に明らかな違いがあるように見受けられる、つまり「普通のうどんと比較して、つゆがたくさ ん、べったり付いているような気がする」という印象があるのだが、実際の結果に差が出なかったところに、新たな疑問が生まれた。
そこで実験2を行い、カレーのつゆの「べったり」している要因である物理的特性を明らかにしようと試みた。

仮説2.カレーうどんのつゆは、粘性が高く、かつ質量が大きいため、素うどんのそれと比べて「べったり」している。


実験2-1 カレーつゆの粘性検証
実験詳細
ガラス管を用い、その中において汁の通過時間を比較

仮説2−1 
カレーうどんのつゆは、粘性が高いため、通過時間が素うどんよりも長い。

結果
素うどんと比較して、カレーうどんには明らかな粘性有り(動画より)
カレーうどん:1分32秒       素うどん:11秒



実験2-2
汁自体の質量計測
同体積(110ml)での重さを比較

仮説2−2
カレーうどんのつゆの方が、素うどんよりも重い

結果
素うどんと比較して、カレーつゆのほうが明らかに重い(写真より)

カレーつゆ:115g       素うどんつゆ: 102g

カレー重さ素うどんつゆ



上記の2つの実験より、仮説2の「カレーうどんのつゆは、粘性が高く、かつ質量が大きい」ということが分かった。

そのことから、麺に付着する汁の量は、素うどんよりもカレーうどんの方が多いといえるだろう。実験2−3によって検証した。


実験2-3
うどんに付着する汁の量計測
一本のうどん(同じ長さ、質量)を同量に計ったそれぞれのつゆに同じ時間浸し、その後の重さを比較

仮説2−3
麺に付着するつゆは、カレーうどんのほうが素うどんより重い

結果
カレー汁のほうが多く付着する(つゆに浸す前は各々6g)

カレーつゆに浸した後:12g 素うどんつゆに浸した後:7g

付着素うどん付着


実験2−3によって、麺に付着する汁の量は素うどんよりもカレーうどんの方が多いことが確かめられた。



議論2
    実験1から「カレーうどんのつゆは実際に飛び散りやすい」という仮説は否定された。しかし、カレーつゆと素うどんつゆの間には明らかな物理的違いが見て取れるため、実験2よりその特性を明らかにした。
    実験2から、「粘度が高い上に、質量の大きいカレーうどんは、麺に付着しやすく留まりやすい。そのために、麺をすすった際に空中に出てくるつゆの総量は多 くなる」ということが分かった。実験2のストーリーに従うならば、カレーつゆのほうが、空中により多くのつゆが出てくるということになり、その分だけ素う どんつゆより多く飛び散ることになるはずである。しかし、これは実験1の結果と一致しない。 
 その原因として、新たに考えられるのが、粘度の高さと粘性摩擦力の関係である。つまり「その粘性ゆえに、麺に付着したつゆがそこから離れない」ということである。上記のストーリーに粘性摩擦力の要素を掛け合わせることで
「粘性が高い上に、質量の大きいカレーうどんは、麺に付着しやすく留まりやすい。そのために、麺をすすった際に空中に出てくる汁の総量は多くなる。しか し、その粘性ゆえに全ての汁が麺から離れるとは限らない。したがって、カレーうどんの汁と素うどんのしるの飛び散りの間には大きな差が見られなかった」と 推察することができる。




結論 conclusion
    カレーうどんのつゆは他のつゆと比較して、粘度や質量といった観点から考えて特殊なものであった。しかし、上記の実験から、カレーうどんのつゆは通常のつ ゆの飛び散りと違いはない、と結論づけられた。それでも、人がカレーうどんが飛び散りやすいと感じるのであれば、そこには、シミの色が目立つという視覚的 錯覚や、その重さによる、飛び散った時の気づきやすさ等が強く作用しているのではないだろうか。つまり、それは人の思い込みがもたらした結果であると言え る。また、今回の実験では「つゆ」のみに焦点を当てて検証してきた。仮に「麺」に注目して考えたとしたら、他の麺類と比較したうどんの特殊性が明らかにな り、うどん全般が他の麺類よりもしるを飛ばしやすい、という結論が得られるかもしれない。
 後続の研究においては、物理学的見地のみならず、理学的、色彩学的側面からの検討をも期待しつつ、本研究の結びとする。



参考文献

日本経済新聞 “達人が伝授 カレーうどん、汁はねなしで食べるコツ” http://www.nikkei.com/article/DGXDZO35779050R21C11A0W03201/

ヒロの絵描きブログ “カレーうどん(松屋)の味や感想について!スープが飛び散らない方法は?”
http://katsu1122.com/1712.html
圓城 僚真 “カレーうどんの汁はなぜ飛ぶのか?”http://www.shizecon.net/sakuhin/50es_kasaku_9.html
ESR Group “粘性抵抗と慣性抵抗”

http://spinman.phys.se.tmu.ac.jp/Lecture/Mech/Viscosity/Viscosity.html