グループ5 自転車の実験
実験の要約
実験のテーマ
自転車のどの位置に荷物をおけば一番安定性をたもてるか
安定性の定義
”安定”とは、線状をまっすぐに走った際、ハンドルが左右にぶれずに、線からはみ出さない状態を保つこと
どう安定性を測るか
二種類
1. 携帯のアプリ"SparkVue"をつかってぶれを測る
2. 自転車の車輪に水を垂らし、通った後の跡を目視することでぶれを測る
仮説と結論
仮説=重心が下がれば下がるほど安定する
採取したデータを分析し、考察を出す
結論=仮説の正否と実験方法の瑕疵の有無
先行研究
1.The Study on the Stability of Compact Bicycles 岩佐崇史 (東大)、須田義大 (東大) 日本機械学会機械力学・計測制御部門講演会論文集 2001, Pt.2, 380-382, 2001
自転車実験の概観把握と実験方法の策定の際に参照
日本工業規格(JIS)の「自転車操縦安定性能試験方法」を参考にしている
安定性を計測する手法として、間隔0.3mの日本の軌道も起票を路面に引き、走行時にその線からはみ出す度合いを利用していることを本実験の視覚的実験に参照
2.A Bicycle Can Be elf-table Without Gyroscopic or Caster Effects
J. D. G. Kooijman, J. P. Meijaard, Jim M. Papadopoulos, Andy uina, A. L. chwab. cience, 15 Apr 2011:Vol. 332, Issue 6027, pp. 339-342
キャスター効果やジャイロ効果は自転車の安定には不可欠な要素ではない。
この実験によれば重心の配分が重要
我々のコメしから挙げられた数多くの安定性への影響要因から重心を実験対象に選択するきっかけに
問いと仮説
問い
自転車のどの部分に荷物を置いたら一番安定するか
仮説
重心が下であると安定する
仮説を立てた理由
重心が高くなると重力の影響を受けやすくなる。車体が大きく傾く分、立て直そうとする反動も大きく働き、不安定になると考えた
実験について
対照実験
<測定する条件>
安定性① タイヤの跡のぶれをみる
安定性② SPARKvueのデータ分析
道具
自転車、荷ひも、メトロノーム、振動計(SPARKvue),2Lペットボトル3本、500mlペットボトル一本(タイヤに水のあとをつけるためのもの)、バック、ケータイを自転車に固定するもの、カメラ、ワイヤー(ペットボトルを固定するために使用)
変える条件
・荷物を置く場所(前かご、後ろの荷台、背中にリュックで背負う、左右どちらの肩にもかける)
変えない条件①
<道具系>
自転車、荷紐、メトロノーム速さ(♩=120)、使用する振動計 (SPARKvueというアプリ)、ペットボトル1本重さ、バック(ど置 き場所でも同じもを使用)、ケータイを自転車に固定する器具、 iPhoneストップウォッチ機能、ペットボトル本数(2Lペットボト ルに水をほぼ満タン一定量入れたもを3本)
変えない条件②
<その他>
ストップウォッチを持っている人立っている場所、荷紐で荷物 を固定する場所、SPARKvueが起動しているiPhoneを固定する 場所・位置、ペダル漕ぎ出し位置、被験者目線、走っても らうルート、カメラを構える位置(スタート地点が真正面にくる位置)、荷物を置く場所(各場所)
実験方法①-水の跡をつけてタイヤのぶれをみるもの
1) まず自転車をスタート地点に立たせて、荷物をそ時測る場所 に置く。
2) 被験者に自転車に乗ってもらって、スタンバイ。メトロノーム係 人メトロノーム音が被験者に聞こえるように用意し、お水を 入れる係り人お水をカゴ前ペットボトルに入れてスタンバイ。
3) 被験者用意された直線上を走ろうとする (そ際、目線 前、漕ぎ出し時ペダル位置も一定 )
4) 走り終わった時点で、カメラを構えている人が水跡全体が写 るように写真を撮影 (今回どれもスタート地点が真正面に来るよ うな立ち位置で撮影 )。振動計が止まっていることを確認。
5) 水跡が乾くを待ち、また違う置き場所で同じ測定方法を繰 り返す。
実験方法②-SPARKvueをつかいデータを見るもの
1)自転車の水の測定法を用いた時と同じスタート位置につかせ、荷物をそのとき測る場所に置く。
2)被験者に自転車に乗ってもらって、スタンバイ。その際に、振動計のアプリを開き、すぐにデータが取れるように準備。振動計をある行っての時間が経てば止まるようにする(7秒
)。メトロノームの係の人は、メトロノームが被験者に聞こえるように準備。
3)自転車が走り出すとともに振動計をスタートさせ、被験者には用意した直線上を走ってもらう。(目線は水の測定法のときと同じ)
4)走り終わったら、振動計が止まっていることを確認し、スタート位置に戻り、また別の置き場で同様の実験を繰り返す。
データと分析
2種類のデータ
・視覚的データ:水の跡でどのくらい自転車が直線をはみ出しているのかを見る
視覚的データ(なし)
視覚的データ(前かご)
視覚的データ(左)
視覚的データ(右)
視覚的データ(荷台)
視覚的データ(リュック)
視覚的データの分析
・前かご:走り出しぶれるがmスピードに乗るとブレが少ない。
・右:走り出しに右にぶれることが多い。その跡に修正する動きが見て取れた。
・リュック:走り出しはぶれているが、その後は緩やかにブレが減っていく。
※黄色の被験者は、カメラががりを避けようとして最後は左に向かっている。
数値データ
・実験に使われた振動計はSPARKvueといって、この表でX軸は時間(s)を表し、Y軸では加速度(m/s/s)を表す。
写真は被験者1の荷物なしのデータから
数値データを用いた計算方法の説明
・加速度と振動はどう関係するのか。
調和振動では、位置はx(t)=A cos(ωt) で計算できる。(Aは振幅、ωは角周波数のこと)
微分はものの変化を測るため、位置を二回微分することによって加速度の式も導きだせる。(すなわち、速度の微分)
1) 速度=[d(x)t]/dt=[Acos(ωt)]d/dt=-ωAsin(ωt)
2) 加速度=[d^2x(t)]/dt^2=[-ωAsin(ωt)]d/dt=-ω2Acos(ωt)
加速度が-ω2Acos(ωt)とはどういうこと?
2Acos(ωt)は振動の位置(x(t))のこと。つまり、加速度=-ω2Acos(ωt)=-ω2 x(t)
この式からわかることは、加速度と振動は比例するということ。
加速度と振動が比例するということは、加速度の振幅と振動の振れ幅もまた比例するということ
つまり
振動の振れ幅=加速度の振幅/ω^2,で計算できる
= 振幅が大きいほど、安定していない
角周波数(ω)は振動計で1秒間の間に振動した回数を2πでかけたもの
加速度の振幅は、二乗平均を使うことによって出す、加速度の振幅の平均
二乗平均
*二乗平均は平均との誤差を計算する。そのため、加速度の平均ではんかう、加速度の平均からの誤差(加速度の平均振幅)を計算することができる。
数値データを用いた計算方法(step1~3)
1) 加速度の平均振幅の計算
2) 角周波数の計算
・測定した7秒間の間の周波数を数えて、7で割ることによって1秒間の周波数を計算する。
・その値に2πをかけることによって角周波数を計算する。
3) ステップ1で出した数値を、ステップ2で出した数値で割る。
振動の平均振幅=加速度の平均振幅/ω^2=(ステップ1)/(ステップ2)
ここででる値が振動の平均振幅!これらの値を比べることによって、安定性を検証する
被験者の感想
「前カゴに荷物を入れると、(自転車を)安定させようとして手に力が入ってしまったような気がする。」
「荷物がなくなると逆にぐらつく気がした」
「荷物に載せていた時が安定していたように感じました。」
「いつも前カゴに荷物を入れているからみんなと違う結果が出たと思う」
考察
走り出しがぶれて徐々に修正されていくのは「人が無意識のうちにバランスを保とうする力」と「自転車の前輪が左右に振れて安定する力」の両方が関係していると考えられる。
「なし」の場合も、直前の方向までの荷物の重さを体が記憶していたために、被験者によっては一番安定した数値が得られなかった。
被験者が普段自転車をこぐ際にどのように荷物を持っているのかという「慣れ」の要因も大きかった。
結論
自転車の安定性は…
①荷物を持つ場所によって変化する重心の位置や動きが影響する
②個人の習慣が大いに影響する
なぜこのような結論に至ったのか
①荷物を持つ場所による重心の変化
・荷台に荷物を載せた時に安定して感じられたのは
a) 前カゴやリュック場合に比べて重心が低い位置にあったこと
b) 荷物が固定されていたことで左右への振れが少なかったことが走り出しのブレを軽減させていたと考えられた。
・前カゴ、リュック、左、右に荷物をのせた場合の走り出しのブレは、自転車が安定しようとして左右に傾く際の重心の変化が大きいことが原因ではないか
②個人の習慣によって自転車のどの部分に荷物をおけばより安定性を保てるかが変わってくる
・例えば普段からリュックを使っている人の場合、重たい荷物を持っていたとしても荷台に置くより、リュックを背負って自転車を漕いだ方がより自然と感じるかもしれない。
・利き腕などにもよって、どちら肩から荷物をかけて自転車を漕いだほうが安定する かも変わってくるではないか。いつも右肩から物を下げてる人は自転車走行中も左の肩を使うより右の方がより自然に運べるのでは?
実験の直すべき箇所
①距離を測っていない
- メジャーで計測せず地面にある目印を使った。
- 二日間に分けて実験したため距離が違う可能性がある。ーデータに影響
②振動計(スマホ)を右ハンドルに固定
- 利き手が影響しているのではないか
- 左ハンドルにも振動計をつけてやれば違いがあるかどうかわかるのでその検証もすればよかった
③荷物の順番
- 実験でどの位置から荷物をのせるかなどの順番を変えなかったため、順番による安定性の影響を測定することができなかった。
被験者データ
- データが5人分しかないため結論にあまり説得力がない
2種類実験方法から得たデータ
- 得たデータは別々の方法で集めたデータ
- 水の跡と振動計を同時に測定できる方法があればもっと信用性の高いデータを得られる。
-
⑥自転車のサイズ
- 使われた自転車を一定条件するため一つの自転車を使ったのはよかったのだが、一つの自転車のみを使うことによって
人によっては自転車のサイズがあっていなかった。
⑦カバンの種類
- 通常肩かたぶらさげて使うようなカバンをリュックとして使ったため、リュックが不自然なものであった。
実験の良かった点
1) 複合的な実験を行うことができた。
-視覚的実験(ペットボトルから水を垂らし、そのあとをみるといった実験)と振動計アプリにより出た数値の実験結果から考察することができた
2) 予備実験から本番の実験に向けていろいろ修正できたこと。
-振動計アプリの使いかたをより理解し、スタートから7秒たつと自動的に測定を終了するやり方などを見つけ、それまで被験者が自ら止めるような形にしていたが、その無駄がなくなった。
-中間発表で紹介した実験コースは非常に長かったが、今回の自転車の安定性とは走り出しから加速するまで、と自分たちのスケジュールに合わせ実験を行えるように努力したこと。
3) 振動計アプリで得たグラフ結果などからどう平均振幅を出すまでの計算式に工夫をこらした。
参考文献
Physics for IB Diploma Program. (2012). Stg Rep edition, Oxford University Press. 岩佐崇史 (東大)、須田義大 (東大)
日本機械学会機械力学・計測制御部門講演会論文集 2001, Pt.2, 380-382, 2001
「二乗平均粗さRq(RMS)」(2016年2月16日閲覧) http://www.fujimfg.co.jp/benri/roughness_RMS.htm