国際基督教大学
GEN011物理の世界(A)-科学的な考え方
2016年2月18日
指導教員 岡村秀樹教授
181401,181437,191057,191058,191227,191268,191484,191555,191766
<目的>
炭酸飲料に含まれている炭酸の量を計測し比較する方法を見出すこと。また、未開封の状態にある炭酸飲料に含まれている炭酸を可能な限り空気中に逃さずに体内に摂取する方法を探ること。
<先行研究>
まず炭酸飲料に含まれている炭酸の特徴や特性について調べた。振ると炭酸が逃げるってことを説明したい。炭酸(二酸化炭素)が液体に溶け込んだ状態になっていて、そのままそっとしておけば何も変わらないけれど、物理的な衝撃を与えると気体に変わる。
気体に変わると、密閉された気体と混ざり合い、気体部分の圧力はどんどん高くなって、蓋を開けると、高まった圧力が解放され、液体の中でまだ溶け込んでいた二酸化炭素も気体に変わり結果、液体も混ざって噴き出す。
物理的に、温度変化や気圧などのショックを与えると溶け込んでいた二酸化炭素が気体に戻る。
「液体に含まれている炭酸の量を計測、あるいは比較する手法を確立する」
<目的>
液体中の炭酸量を測定する方法を探る。
<概要>
当研究を行うにあたって、液体中に含まれる炭酸量の計測方法を見出すことは第一に達成しなければならないことであった。二酸化炭素濃度の計測機器は存在するが、高額であったため使用できなかった。そのため、炭酸を測定する方法を手に入れられる道具で実現する必要があった。本論で用いる計測方法は以下3つの方法の中から選定した。
<計測方法1>
炭酸飲料の容器の先端に水風船を取り付ける方法。道具:水風船
-結果
炭酸ガスが発生することを可視化することは可能であるが、水風船の個体差によって膨らみ方が異なるため炭酸ガスの量を数値化することが難しい。また、一度先端から水風船を外すとガスは空気中に逃げてしまう。
<計測方法2>
炭酸飲料を注入したシリンジから発生する泡の数を計測する方法。道具:シリンジ
-結果
シリンジの先端から発生する炭酸ガスを確認することができたが、一定時間で泡は出てこなくなった。後にシリンジの先端を塞いで振ると、シリンジ内部に炭酸ガスが発生することから液体中に存在する炭酸の量を計測できてるとは考えられない。
<計測方法3>
炭酸飲料を注入したシリンジを振った際に発生したガスの量を測定する方法。道具:容量50mlのシリンジと25センチのビニルチューブ
@目盛りを30mlになるまでプランジャを引く
Aシリンジ内の気体と液体の体積を測定
Bプランジャをシリンジ内の気体を押してなくす
C肘を軸として10回振る(振り幅90度)(リズムは108回/分)
D発生した炭酸ガスの体積を測定する
EDの数値/シリンジ内の液体量 の計算により1mlあたりの炭酸の発生量を測定。
-参考 炭酸を含まない水道水をシリンジに入れて振っても気体は発生しなかった。
プランジャを引く速さは発生する気体の量に影響しなかった。
炭酸ガスが空気中に逃げないようにビニルチューブの先は手で塞いだ。
-結果 同一条件(温度、初開封からの時間、容器の種類)において、1ml程度の誤差は発生するが液体中の炭酸量を測定することができた。
<結論>
計測方法3を利用する事で、液体中の炭酸の量を計測する事が可能である。したがって、本論において計測方法3によって炭酸の量を計測し、他の条件と比較することとする。
<目的>
予備実験を通じて見出した炭酸量の計測方法を用いて、炭酸を飲む時に変化しうる条件がどのように炭酸量に影響を与えるのかを探る。実験を通じて最も炭酸飲料中の炭酸量が減りにくい条件を策定する。
<方法>
飲料メーカーや飲料の種類により炭酸量や性質が異なる可能性が高いため、当研究において使用した飲料は日本コカ・コーラ株式会社から販売されている「コカコーラ 500mlペットボトル」を使用した。炭酸の計測方法は予備実験の計測方法3を用いた。
<方法>
ペットボトルに入ったままのコーラとグラスに注いだコーラ(どちらも冷蔵庫で予め約1時間冷やしており、開けてから・注いでから30秒後に測定した)
<実験結果>
@ペットボトルに入れたままのコーラ
→30ml中液体は17ml、気体が13mlに分かれた。
シリンジを振る操作では液体17mlが液体14ml、気体3mlに分かれた。
3/17=0.18
Aグラスに注いだコーラ
→30ml中液体は19ml、気体が11mlに分かれた。
シリンジを振る操作では液体19mlが液体18ml、気体1mlに分かれた。
1/19=0.05
<結論>
この実験により、コーラはグラスに注ぐことによって約3.6倍炭酸が弱まるということがわかった。
<方法>
冷やしたコーラを4つの素材の異なる容器に注いだ
<実験結果>
常温のいくつかの種類の容器を用いて行った(氷は無し/水で表面を濡らした状態)
1.ガラス
2.陶器
3.プラスチック
4.アルミニウム
<ガラス> →30ml中液体18ml、気体が12mlに分かれた。 シリンジを振る操作では液体18mlが液体16ml、気体2mlに分かれた。 2/18=0.11
<陶器> →30ml中液体20.5ml、気体が9.5mlに分かれた。 シリンジを振る操作では液体20.5mlが液体12.5ml、気体8mlに分かれた。 8/20.5=0.39
<プラスチック> →30ml中液体20ml、気体が10mlに分かれた。 シリンジを振る操作では液体20mlが液体19ml、気体1mlに分かれた。 1/20=0.05
<アルミニウム> →30ml中液体18ml、気体が12mlに分かれた。 シリンジを振る操作では液体18mlが液体16.5ml、気体1.5mlに分かれた。 1.5/18=0.08
<結論>
実際の数値が示す炭酸の強さの結果と、中間発表の際に行った人間の感覚による結果に異なりが生じた。アルミニウムとプラスチック、さらにアルミニウムとガラスとの結果の差はとても微小なためどちらが炭酸が強いとは言い切れない。しかしながら、陶器の容器で飲む場合が最も炭酸が強く感じられるという結果は判明した。
<方法>
6度の冷蔵庫で2時間冷やした未開封のコーラと常温で2時間放置した未開封のコーラ
<実験結果>
@冷蔵庫で保管して冷えた状態のコーラ
→30ml中液体16ml、気体が14mlに分かれた。
シリンジを振る操作では液体16mlが液体12ml、気体4mlに分かれた。
4/16=0.25
A常温で保管したコーラ
→30ml中液体10ml、気体が20mlに分かれた。
シリンジを振る操作では液体10が液体9ml以上、気体が1ml未満の量に分かれた
1/10=0.1(仮にシリンジを振る操作で発生した気体の量を1とした)
<結論>
この実験では計算上冷えたコーラの方が単位量あたりに2~3倍の炭酸を含んでいるという結果になった。したがって、温度が低い方が炭酸が多く含まれるといえる。
<方法>
未開封のコーラを、氷の入っていない容器に移した時と氷の入っている容器に移した時を比べて、どちらが多くの炭酸を含むか調べる。
<実験結果>
@氷の入っていない容器に移した状態のコーラ
→30ml中、液体21ml、気体9mlに分かれた。
シリンジを振る操作では、液体21mlが、液体18ml、気体3mlに分かれた。
2/21=0.0952381
A氷の入っている容器に移した状態のコーラ
→30ml中、液体25ml、気体5mlに分かれた。
シリンジを振る操作では、液体25mlが、液体24.8、気体0.2(目分量)に分かれた。つまり、ほとんど変化は見られなかった。0.2/25=0.008(シリンジを振る操作で発生した気体の量を0.2だと仮定した場合)
<結論>
この実験では、計算上氷の入っていない容器に移したコーラの方が単位量あたり11〜12倍の炭酸を含んでいるという結論を導き出すことができた。したがって、氷を入れない方が炭酸を多く摂取することができる。
<方法>
まず、冷蔵庫で1日保管した未開封のコーラ二本を開封した時点の炭酸量の計測を行う。一定の内容量を減らした後に一方には40kgの重石を載せて容器内部の気圧を高めて同一環境で2時間放置する。その後炭酸量を測定する。
<実験結果>
@重石を載せずに放置したコーラ
(放置前)
開封直後:30ml中 液体20ml 気体10ml
振った後:液体20mlが液体20ml 気体8ml
(放置後)
開封直後:30ml中 液体21ml 気体9ml
振った後:液体21mlから気体3mlが発生した。
A重石を載せて放置したコーラ
(放置前)
開封直後:30ml中 液体20ml 気体10ml
振った後:液体20mlから気体8mlが発生した。
(放置後)
開封直後:30ml中 液体22ml 気体8ml
振った後:液体22mlから気体10mlが発生した。
<結論>
重石を載せて放置したコーラの方が圧倒的に振った後に液体から発生した気体の量が多かった。したがって、内部の気圧が高い方が炭酸を液体中に留めておくことができるといえる。
「缶で炭酸飲料を飲む方が炭酸が強い」と感じる人は多く存在するが、実際にペットボトルと缶とで炭酸の量は変わるのだろうか。
<方法>
6度の冷蔵庫で冷やした「コカコーラ 500ml ペットボトル」と「コカコーラ 350ml 缶」を使用し、シリンジを振る前と一度気体を押し出して液体のみにしてからシリンジを振った後の気体と体積の割合を比較し、缶とペットボトル内の炭酸量の違いを調べる。
<実験結果>
ペットボトル
@シリンジを振る前の気体と体積の割合
→30ml中、液体14ml、気体16mlに分かれた。
A一度気体を押し出して液体のみにし、シリンジを振った後の気体と液体の体積の割合→17ml中、液体14ml、気体3mlに分かれた。
3/14=0.21
缶
@シリンジを振る前の気体と液体の割合
30ml中、液体16ml、気体14mlに分かれた。
A一度気体を押し出して液体のみにし、シリンジを振った後の気体と液体の体積の割合
19ml中、液体16ml、気体3mlに分かれた。
3/16=0.19
<結論>
シリンジを使用してペットボトルと缶の気体と液体の割合を比較した結果、二つの容器に含まれる炭酸量に大きな違いは見られなかった。炭酸飲料は実験3で証明されたように温度が低い方が炭酸が強いのである。そのため、表面がペットボトルより冷たい缶の方がプラシーボ効果によってペットボトルよりも炭酸を多く含むと人間は感じてしまうのだ。しかし、この実験によって、缶とペットボトル内に含まれる炭酸量はほとんど変わらないことが証明された。
まず、測定方法についてシリンジを用いて炭酸量を計測する方法はあくまで比較を可能にする測定方法であり、絶対的な炭酸の量を測定する方法ではない。加えて、測定誤差が生じている可能性は大いにあるため、さらに正確な測定方法、あるいはすでに存在する測定機器を用いることが必要であると感じた。
実験3と実験4について温度という観点で矛盾が生じている。なぜなら、氷によって当然温度が下がることで炭酸にとって溶けやすい環境が生じるはずであるにも関わらず、氷がある場合は炭酸量が少なく計測されたからである。したがって、温度という要素以外が炭酸に与える影響を調べることが必要である。推測される要因は氷に炭酸水が当たることによって生じる衝撃、氷と炭酸飲料によって生じる化学反応が考えられる。この点についてはさらなる研究と検証が必要である。
ちなみに、容器の素材の種類による炭酸の強さの実験(実験2)に関して、実際の数値が示す炭酸の強さの結果と、選考研究で行った人間の感覚による結果に異なりが生じた。おそらく、今回数値化したのは、人間が炭酸飲料を口に含み飲み込む際に感じる炭酸の強さであると思われる。また、口に含んだ際の炭酸の強さは、最初に吸い取った時に生じる気体の量から比較し計測できると予想される。予備実験の際にガラス製の容器が最も炭酸が強いように感じるのは人間のプラシーボ効果や、唇に触れた際のガラスの冷たさによって影響を受け左右されているのかもしれない。 また、容器の熱伝導率に関しては、実際のところプラスチックが極めて高く、その他3つは横ばいとなっている。このことから、素材の熱伝導率と炭酸飲料に与える影響における関係性は見出せなかった。(熱伝導が関係ないとすれば、おそらく容器の表面の凸凹などが影響しているのではないかという予測も浮かんだ。)
実験1から6を通じて以下の結論を得た。
未開封の状態にある炭酸飲料に含まれている炭酸を可能な限り空気中に逃さずに体内に摂取する方法は「ペットボトルか缶であるかは関係なく、別の容器に移さず、できるだけ低い温度で、氷を入れず、飲料が余った場合にはその容器にできるだけ圧力をかける」であると考えられる。また、容器に移して炭酸飲料を飲む場合、素材によって炭酸が失われる量が異なるため選ぶ必要がある。実験2の結果を用いると、ガラスなどよりも陶器の方がより炭酸を逃がさない。しかしながら、普段の実生活において炭酸飲料を飲む際に毎回、陶器を用意するということは現実的とは言えない。現実的に考えられる素材として、ガラス・プラスチック・アルミニウムが挙げられるがそれらにおいては差があまり観察されなかったため、影響はそれほど大きくないと考えられる。よって、現実的に考慮すると容器に注ぐ際は基本的に種類を選ぶ必要はない。
<参考文献>
「Why does a shaken soda fizz more than an unshaken one」
http://www.scientificamerican.com/article/why-does-a-shaken-soda-fi/
「教えてgoo--炭酸飲料を振ったらどうして」
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/392060.html