Swing speed of a baseball bat

バット のスイングスピード

ICU(国際基督教大学) 物理学の基礎と概念 グループ9

指導教員:岡村秀樹


研究の背景

野球選手がバッターボックスに入る前に、マスコットバット を利用したり、バットを2本まとめて素振りをするのをみか ける。*マスコットバット :通常のバットより質量の大きい素振り用バット


msn相談箱の同様の質問に対しての回答:

重いバットでのスイングは、長期続けると遅筋と言われる持久力重視 の筋肉が発達すると言うのを聞いたことがあります。 なのでスイングスピード自体はあまり上がらないのではないかと私は思います。 ただ経験上、マスコットバットを数回振ってから普通のバットを振ると 軽く感じ早く振れます。 その数回のスイングで筋力が上がってるとはあまり思えませんので、 感覚的な問題だと思います。


研究目的

msn相談箱の回答のとおり、本当に感覚の問題なのかを検証する。


実験方法

1.通常のバット(900g)を3回振る 2.重いバット(1100g)を3回振る 3.再度通常のバットを3回振る

スイングスピードをスピードガン(Bushnell スピードスターV)で計測

*被験者には野球部3人を選び、目的を伝えないまま実験を行う。

  *計測者にも同様に実験の目的は伝えない。(二重盲検定)   *計測した3回の平均値をとる。   *スピードガンはバッターの正面に構え、スイングの中間の位置を計測し、バッターとの距離は約2メートル。(次スライドの写真参照)


実験の様子。右下に写っているのがスピードガン




実験結果



通常のバットでのスイングスピードは、重いバットを振った前後でほとんど変化なし。

しかし、被験者は重いバットを振った後のほうがスイングスピー ドが上がる気がするという。


考察

福岡教育大学教育学部保健体育講座准教授の兄井彰「筋運動感覚残効が運動パフォーマンスに及ぼす影響」によると、 そういった感覚が生まれるのは、筋運動感覚残効の影響。

筋運動感覚残効:

先行して行われた運動の経験により、後続して行われる運動に伴う筋運動感覚の知覚に歪みが生じるという現象のこと


この説明は実験結果を矛盾無く説明しているので、仮説として成り立つ。


まとめ

重いバットを振っても、その前後の通常のバットを振ったときのスイングスピードに変化はない。


しかし、筋運動感覚残効(仮説)によって、重いバットを振ったあとの ほうが速く振れるような感覚を覚えることができるため、バッ ターボックスに入るときに精神的なリラックス効果を期待できる。このために、野球選手はバッターボックスに入る前にマスコットバットを使ったり、バットを2本まとめたりして素振りを行うことがあるのではないかと考えられる。


参考文献

msn相談箱 素振りの際に重いバットを使用する理由http: //questionbox.jp.msn.com/qa2181056.html

兄井彰 「筋運動感覚残効が運動パフォーマンスに及ぼす影響」

http://libir.fukuoka-edu.ac. jp/dspace/bitstream/123456789/577/1/aniyi_54_5.pdf