DHMOから読み解く騙しの背景・テクニック」

 

1.このようにして署名を 求められた場合、あなたは直ちに応じますか(応じたと思

いますか)?

 

  もしこの物質の本当の 正体に気づかなければ、署名しているだろう。この文章だ

け読めば明らかに危険な化 学物質であるからだ。近年、環境汚染などにおける化学物

質の問題が深刻になり、メ ディア・教育など様々な場面で取り上げられている。フロ

ンによるオゾン層破壊や、 二酸化炭素による地球温暖化、あるいは水銀などの公害が

その例だ。このDHMOもそうした一種なのではないかと考えてしまうと思う。こうした

文章に人がだまされる背景 には、やはり化学物質による環境破壊の深刻化が原因にあ

るのだろう。化学物質が危 険なものだという認識がなければ、こうしたDHMOも危険な

物質であるという錯覚に陥 らないはずだ。

  私にはそういう化学物 質が危険なものだという認識がある。それはおそらく現代

社会に生きる我々皆が多少 持っている認識であろう。それが故にこういった文章に騙

され、署名してしまうので ある。ある意味で、騙されて当然といった時代になったの

であろうか。

 

 

2.DHMOとは一体何でしょう?そして謎が打ち明けられた時に、あなたは何を感じ、

何を考えましたか?

 

  初め、「無色、無味、 無臭」という時点でもうこの物質が水(H20)であると気

づいた。しかし、この文章 の項目(1〜15)を読めば読むほど「なるほど」と感心

させられた。そして、WikipediaDHMOが何の略であるかを見 て、このDHMOという

略称まで嘘やでまかせでは なかったのかと感心させられた。この文章の中に嘘はなく、

すべて真実で、それでいて 人間に恐怖心を与えるあたりがすごいと思った。

  社会統計などでもそう なのだが、こうした調査・文章は嘘を言わずしても真実を

曲げ、人をだますことがで きる(たとえば、国民は本当はそれほど政策に反対してい

ないのに、ある特定の批判 的な人々だけを抽出し、国民全体が批判しているように見

せかける、など)。今回の 場合も規制すべきでない、そしてできるわけもないこの物

質を、このように規制しよ うと行動すれば人はだまされるということを示している。

 

  「不妊男性の精液や、 死亡した胎児の羊水、癌細胞から多量に検出される」とい

う文章からもこの化学物質 の危険性が現れているように思えるが、ここでは一般の男

性の精液や一般の胎児の用 水などに触れていないあたりが、普遍的な事実は伏せてお

き特定の事実のみを公開す る事で危険性をあおる、という重要な騙しのテクニックに

なっている。

  「全米の湖や川、果て は母乳や南極の氷にまで高濃度のDHMOが検出されている」

というのも同じ技法であ る。この文章を読むと、そんな事はどこにも書いていないの

に、この化学物質が全米で 広がり、国際的海洋にも浸透し、あげくの果てに人体にも

蓄積しつつあるという印象 を受ける。しかし実際はDHMOが、人間が存在する遥か以前

から存在する物質である。 そうした事実を嘘をつく事なく伏せ、そして事実を曲げて

いるのである。

  こうした「騙しの手 法・テクニック」は、ある特定の概念を主張したい時には有

効な手段である。しかし、 そこにある資料に嘘はないとはいえ、それは真実ではな

い。我々にはデータリテラ シー・情報リテラシーというものが必要である。つまり、

データや情報に対して正し い知識をもって批判的に読み解き、その真偽を見抜く「情

報を評価・識別する能力」 が必要なのである。今回の場合も、文章に裏がないかを見

る必要がある。つまり、DHMOが「酸性雨の主成分」と言われ、それが雨に溶けている

化学物質ではなく、雨それ 自身であるのだと気付く能力だ。