生命の誕生(なぜ地球上に生命が発生し、今まで存在できたのか?)

 

化学進化から生物進化へ

1.有機化合物の生成(34億年前)

原始大気中で大気成分からアミノ酸、糖(グルコース、リボース)、核酸塩基が生成し海に溶けた。

それらが、火山周辺の岩のくぼみに蓄積し水が蒸発して高濃度になった。

粘土表面は化学反応を容易にする触媒作用をもつので、高濃度の有機化合物どうしが反応して高分子になる。その結果、タンパク質、核酸(RNA)、多糖類などの生体物質が合成されたと考えられる。

 

2.コアセルベート(原始細胞)の生成

一種の液胞で、その中に金属イオンやアミノ酸や糖などの小分子を包み込んでいたと考えられる。コアセルベートの中は外部よりも1000倍も濃度が高いのでその中で物質代謝(生体物質の合成、変換、分解反応)が起こりうる。こうして無生物から原始細胞(生命体)が発生した。

コアセルベートの成分:タンパク質高分子は水に溶けるが、イオン性の溶液(Ca2+, Mg2+) <すなわち、海水>中では集合体をつくるので、初めはタンパク質が液胞をつくっていたと考えられる。しかし、後にコアセルベートは単細胞(生物)へと進化し、脂質が細胞膜を形成する物質として使われるようになった。

 

3.簡単な発酵システムをもった生物の出現

(酸素が無かった時期の細胞のエネルギー生産法:発酵)

原始生物(藍藻類、バクテリア)は、グルコースを栄養源として使い、エネルギー運搬体(ATP)とアルコールをつくる。<不完全燃焼エンジン>。ATPは物質代謝のために使われる。

 

4.核酸(DNA)による自己複製システム

生命活動にはタンパク質が必須(物質代謝を円滑に行わせるための触媒(酵素)として、細胞をつくる構成体として)。細胞を複製し、同じ機能をもつタンパク質合成の遺伝情報を備えた自己複製システムを構築した。細胞核にDNAとして遺伝情報を保持。

  
     

    転写   発現  

  RNA  DNA  RNA  タンパク質合成

         ↓ 複製

        DNA

 

5.光合成と呼吸(20億年前)

緑色生物は太陽エネルギーを使って二酸化炭素(CO2)と水からグルコース(糖)と酸素をつくるシステムをつくった。<光合成>

酸素はまた、太陽の紫外線によりオゾンに変換されて大気上空に蓄積するようになった<オゾンは地上に降り注ぐ紫外線を和らげる装置の働きをしている>。

 

その後、バクテリアも植物も動物も酸素を使ってより多くのエネルギー運搬体(ATP)をつくるシステムをつくりあげた(これを呼吸という)。呼吸は発酵より19倍のATP生産能力がある。

それまで酸素は有機化合物やコアセルベートを分解する作用をもつ毒ガスであった。呼吸は毒ガスを有効利用システムへの変換である。

 

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