第2章 水の科学史

 

§1 むかしむかし

原始時代の人にとっての水

 基本認識:生き物は、動物も植物も(人間も)水が無ければ死ぬ。

 生活水:料理、洗い物、陶器作り

 住居:水辺(川、湖の近く)に住む。

    ICUのある台地も住み良い場所であった。        

    井戸を掘ると(地下水)が出る=生き延びるための知識  ▲縄文火焔土器

 原始自然観:アニミズム/汎神論(animism)          (模様に注目) 

    水、石、木に命が宿っている。

    雷は神の怒り

世界四大文明発生の頃

  中国、インド、エジプト、メソポタミア

 

 古代エジプトの例

  ナイル川:周期的に氾濫 → 肥沃な土地

  周辺に文明が栄えた

   水の利用:農業、染色、紙(パピルス)

  壁画に描かれた生活/

       パピルスに描かれた豊かなナイル川の様子

   化学(技術)の元祖、豊かな農業、漁業、狩猟の様子

    金の冶金

    金属製の道具づくり(銅→青銅→鉄)

 

§2 古代ギリシャの哲人たちの物質観(特に水について)

 多くの自然哲学者が、「自然の本質は何か?」という大問題に関心をもった。

  水についての共通理解(経験的知識)

  ・生物に不可欠
  ・かたちを自由に変える(雨、ゆげ、氷、雪)
  ・万物は水を含む

●ターレス(BC 600)

 自然現象には必ず何かの原因があって起こる、と考えた。

 それは何か?

 全てのものをつくっている元のもと:element/アルケーは?

 「万物のもと(アルケー)は“水”である」と唱えた。

●アナクシメネス(BC 550)

 「万物のもと(アルケー)は“空気”である」

 アルケーは水よりも軽くて流動的なものであるハズだ。

●クセノファネス(BC 500)

 「万物のもと(アルケー)は“土”である」

 アルケーは形をもち確かな実体をもったものでなければ万物は安定していられない。

●ヘラクレイトス(BC 450)

 「万物のもと(アルケー)は“火”である」

 アルケーは活気があり力があり、人生のように絶えず変化してゆくものだ。    

●エンペドクレス(BC 450)

 「万物は水と空気と土と火の4つの元素(アルケー)からなる」。

 全てのものは4種の元素の組み合わせ(愛の力で結合し、憎しみの力で離れる)によって説明できる。

 一元論を退け四元論を提唱

    

 

 ●アリストテレス(BC 384 - 322)

   四元素仮説:

「4元素には元々異なる基本的性質があり、その性質の組み合わせが変わると元素が変換する」。

 

 ●デモクリトス(BC 460 - 370)

   原子仮説:

「万物はそれ以上分割することのできない最小単位(原子/atomos)空間からなる。目に見える物体は原子の集合体で、原子の形、配列のしかたの違いによって色、におい、固さなどの性質が決まる。原子は空間(真空)に存在し、原子が集まったり離れたりすることによって物質変化が起こる。物質は消滅することはない。」

   * 水は水の原子が集まって水となる(デモクリトスにとっての水)  Democritus ( Newtonから)

   

  ギリシャの哲人たちは、自然を知ろう=自分の頭でとらえようとした。

ギリシャの哲人たちは、自然を知ろう=自分の頭でとらえようとした。

“なぜ”をつきとめる姿勢(考える存在としての人間の歩み)が始まった。

しかし彼らの考えは、実験に基づいたものではなく頭の中で作られた理論であった。(演繹的論理)

科学ではなく哲学(Naural philosophy)であった。最終的な正否の判断が不可能であった。

歴史的には、力(権力)の大きな者の意見が勝った。

 

アリストテレスの四元素仮説が1700年間も信じられ、金属変換(錬金術)の基礎理論となった。

デモクリトスの原子仮説は、1800年まで埋もれ、ダルトンによって近代原子説として復活する。

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