選択課題2

 

「高校生を前に水について語る」原稿案

 

増本朱華

 

 

水と言うのは液体のH2Oの呼び名です。氷は固体のH2O、水蒸気は気体のH2Oを意味しています。

 

 物質の温度が上がるとその物質を構成する分子や原子の運動が活発になり分子間・原子間の距離が広がるので、温度の上昇に伴って体積が増え密度が低下する事になります。逆に温度が低下すると密度が増加します。しかしH2Oでは約4℃の水の状態で最大の密度となり、固体の氷になると約10%密度が低下します。つまり固体の方が液体よりも密度が低いと言う他の物質に無い非常に不思議な特長を持っています。だから、氷は水に浮くのです。

 

 このような特徴があるので湖や池では表面から凍り始めます。つまり、冬になって気温が下がると水面の水温が下がり密度が上昇するので低温の水が底に沈み、温かくて密度の低い水が上昇していきます。これを繰り返しているうちに、最も密度が大きい4℃の水が底に溜まりそのうちに全体の水が4℃になった段階からさらに冷えると、今度は密度が低下するのでこの4℃以下の水は表面にとどまるようになり、結局表面だけが冷やされる状態になります。そして表面の水が0℃以下になったら凍り始めますが、この氷も水より軽いために浮いたままで表面に残ります。その結果、氷が水に蓋をした状態になるので表面は凍っていても下は水のままの状態を長時間保つことが出来るようになります。だから、湖や池に住んでいる魚などの生物が死滅せずに生存可能なのです。もしもH2Oにこのような特長が無かったら氷が底にたまり続けて短時間のうちに全体の水が凍ってしまい、またなかなか解けないために生物は生き残れないでしょう。

 

 水は0℃で氷に100℃で水蒸気に変化します。しかし100℃にならなくとも水の表面からは徐々に水蒸気に変化して空気中に拡散していきます。このように地球上の生物が通常生活している温度範囲で液体から気体へ、また逆に液体に戻ることが出来ると言う性質は非常に重要です。海にある水分が太陽に暖められて水蒸気になり、それが上空に上って冷やされて再び液体に戻り雨となって陸地に降り注ぎます。だから陸上に植物が育ち、草食動物が繁栄し、さらに肉食動物が出現できたのです。もしも水と水蒸気の間の変化が起こりにくかったら雨が降る事は無く、陸上には全く生物は存在しなかったでしょう。

 

 空気中の水蒸気がもっと冷やされると固体の雪になって陸上に降り積もります。かつて地球には何度か氷河時代が訪れました。氷河時代には海水中の水分が数百メートル以上の厚さの雪として陸地に堆積し氷河となり、その結果海水面が低下して現在の浅い海は陸地になっていました。ユーラシア大陸と北米大陸の間のベーリング海峡もその当時は陸地になっていたので、氷河時代にアジアから種々の動物が移動しそれを負って人間もアラスカへと移動していきました。さらに人間は徐々に南下しパナマを経て南米にまで達したといわれています。ですから、アメリカ大陸の先住民はアジア人と同じ人種だと言えます。

 

 現在の人間はアフリカで発生し徐々にユーラシア大陸に拡散していきました。しかしもしもH2Oが簡単には固体にならない性質だったとしたら雪も降らず、氷河時代の生物や人類の移動は起こらず、近代になるまでアメリカ大陸には人類は存在していなかったかも知れません。

 

 このように、H2Oが地球上の通常の温度範囲で気体(水蒸気)・液体(水)・固体(氷)へと容易に変化する性質と氷の方が水よりも軽いと言う異常な特長があるおかげで、地球上特に陸上で生物が繁栄できるようになったのです。