課題5

 

匿名希望

 

 

 「水とは生命にとって必須なものである」。これが、私が36個中31個知っていた化学的知識の中で一番目を引いた項目だ。一見しただけだと常識のように思われる知識だが、私はこの「自然の化学的基礎」という授業を通していかにこの項目が水ならではのユニークかつ価値のある知識なのかを学んだ。この独自性と重要性を示すために、他の科学的知識についての項目をいくつか挙げようと思う。

 

 まず第一に挙げられるのが、「水は様々な形で地球の表面の約70%を覆っている」という項目だ。これは、水が他のどんな物質よりも地表の表面積を占めていて、どれだけこの地球には水という物質が豊富にあるかということを示している。また他の項目にあったように、地球に存在する水のうち98%が液体の水(塩水+淡水)である。こんなにも液体の水に溢れた惑星は、現在確認できる限りでは地球だけなのだ。この事は、生物が生息する地球にとってとても大きな意味を持つ。水のユニークな性質の一つとして、その比熱の大きさが挙げられる。水は地球の表面を広く覆い、そしてこのユニークな性質で地球の気温差を小さく保ってくれているのだ。もし水にこの性質がなかったら、地球は生物が生息できるような環境になっていなかっただろう。

 

 第二に、「氷のほうが4℃の液体の水より密度が低い」という知識が挙げられる。つまり固体のほうが軽く、水に浮くのだ。これは分子構造の違いに起因し、このため液体から固体になるときに体積が増すという性質も持つ。固体の密度が液体よりも小さい物質は水だけであり、まさに水独自の性質である。氷が水に沈まないおかげで、冬になっても湖底・海底・川底が凍ってしまう事はない。仮に氷が沈んでいたら、その融解熱の大きさゆえに溶けにくく、ずっと底に氷が残ってしまい、水中での生命活動は期待できなかったであろう。

 

 第三に、「水は分子内に正に帯電した部分と負に帯電した部分とをもつ(=水は極性分子である)」という記述が挙げられる。水の極性モーメントは異常に大きい。そのため、水素結合や双極子-双極子間引力というとても強い分子間力が働く。この分子間力が起因して、水は通常の液体の中では最高の表面張力を持つのだ。大きな表面張力は、水に毛細管現象を促す。この現象のおかげで、様々な生命は栄養分を体の隅々まで行き渡らせる事が出来るのだ。毛管による水の移動パワーは凄まじく、高い木々の上のほうまで上っていくという。このように、水でなければ生体活動は持続できないものとなっている。

 

 第四に、「水は最もよく知られる溶媒である」という知識がある。これは、水は他のどんな液体よりも多種・多量の物質を溶かす事が出来るといった、溶解能が非常に高いことに起因する。実際、身近に存在する液体の多くは水溶液である。この性質は水特有であり、とても重要な性質であると言える。その理由として、まず「水は地の侵食者だ」という事がある。何でも溶かす水は、日々その流れの中で土地を削り取り、大地を形成している。この能力によって、地球の水の大循環システムを支える多様な機能を創造したのだ。このようなサイクルを経て、自然の水は様々な成分を含むようになる。水によって運ばれる様々な成分は、例えばプランクトンという最も重要な食物連鎖最下位に位置する生物から始まる、多くの生命を支えている。また、原始の地球では海に様々な物質が溶け込んでいたおかげで、原生生物が誕生した。そして、水から誕生した生命は、今も水によってその生体活動を維持している。これは、人間の血液や植物の樹液が多量の水を含んでいる事や、水が生体化学反応の触媒として利用されている事からも覗える。このように、生命維持に必要な多くの物質を溶かした水は、上記したように、水特有の毛細管現象によって体中に運搬されている。まさに水でなくては成り立たない、ユニークかつ価値のある性質だといえるだろう。

 

 最後に、「水は沸点(100℃,1atm)まで熱せられると、湯気に気化する」といものがある。水の沸点は、他の水素化合物や水の類縁化合物と比べると異常に高い。この水独特な性質のおかげで、地球上の水のほとんどが液体として存在している。今まで論じてきたように、水の液体としての役割は大きく、液体で存在してくれている事は生物にとって生命を維持するためにも、住みよい地球環境のためにもとても都合がよいことである。

 このように、水という一つの特有の物質が、生命、ひいては地球にとってどれだけ必要で不可欠な存在であるのかが読み取れる。同時に、生物がいかに水に依存しながら生きているのかも分った。これらの事は全て、水ならでは、水であるからこその働きであり、その結果であると言えるだろう。実際人間で言えば、人間が一番最初に不足して困るものは水であり、他のどんな食べ物よりも水を必要としていて、それがなくなるとほんのわずかな時間で命を落とす事になる。このような事からも、水への依存度の高さが覗えるだろう。「夢において、水は誕生を意味する」という記述があった。これは、その体内を占める水分量の多さや様々な特徴から元は水中動物だったのではと言われている人間が、潜在的に自分達が水から生まれたものであるという事を知っているからではないかと思う。実際に、今現在でも人間は羊水という水の中から生まれてくる。生命が誕生する瞬間からその一生を終えるまで、生物は水に依存しているのだな、と強く実感した。

 

 

 次に、歴史的・文化的知識を扱う。これらの項目を一読した感想として、かなりの国や宗教内で「水」と「誕生」は結びついて考えられているという事を学んだ。その中でも、特に言葉が心に残った、普遍的真理であると思われるものを3つ取り上げたいと思う。

 

 “In the Vedas, water is referred to as the ‘most maternal’”

「母なる水」。これは全くの真理であると思える。地球上に「水」が生まれたおかげで今の地球があるからだ。水は生命の生みの親であり、今現在も生命を支える育ての親である。多くの歴史的・文化的知識から読み取れたように、「水」とは地球上に多くの「誕生」を与える、母なる存在であると言える。

 

 “In the Koran are the words ‘We have created every living thing from water’”

これも時間、国境を越える普遍的真理であると言えよう。どんな時代のどんな国の人であっても、作物などの植物を作るとき、家畜など動物を作るとき、子供を育てるとき、ひいては自分自身を育て、創り上げるとき、これら全てにおいて水は必要不可欠である。全ての命あるものは水に飢えていて、その存在を必要としているのだ。また、どんな物の構成要素にも水は含まれている。どんな食べ物にも、どんな生物にも、だ。特に人間などは、陸上動物の中では異常にその体内に占める水分量が多く、それこそ「水によって作られている」と言っても過言ではないだろう。

 このように、「母なる水」は自身自らを費やして生命を作り上げてくれた。しかしながら、近年における人間の行動は、この水のありがたさを全く認識していないかのように見受けられる。そこで、この項目を挙げたいと思う。

 

 “In the Canticle of the Sun, St. Francis of Assisi praises God for water: ‘Praised be Thou, O Lord, for sister water, who is very useful, humble, precious, and chaste’”

これは普遍的真理であろう。私達にとって、いついかなるときも水は便利で、謙虚で、尊く、つつましい存在だ。(もちろん水も氾濫するが、今まで人間が経験した程度の氾濫など、水にしてみれば些細なものだろう。ゆえに、水は謙虚でつつましいと言える。)このことは普遍的真理であるべきはずなのに、最近は忘れ去られているのではないだろうか。現代では失われているのではないだろうか。何度も言うように、水という物質のおかげで今の我々はあり、これからもその存在を必要としている。ゆえに、我々は「水の恩恵を受けている」という意識を改めて強く持つべきであると私は考える。その意識を失っていたから、21世紀の水による戦争などが危惧されているのではないだろうか。水の恵みを真剣に受け止めず、自分勝手に水を必要とし、果ては水を奪い合おうとしているなんて、なんて醜い失態なんだろうと思う。自業自得であろう。きっと母なる水はそんな事望んでいない。私達が水を敬う気持ちを取り戻すためにも、我々人間はこの普遍的心理を再認識しなくてはならない。水戦争などと言う恥ずべき事態を避けるためにも、出来るだけ早急に、国境を越えてこの意識が広がってくれる事を願う。