選択課題III 「水につい てどれだけ知っているか?」
匿名希望
1.Water is odorless, tasteless, transparent liquid at room temperature.
→これは一見なにも変哲の ない性質を述べたように見えるが、注視すると色々なことが見えてくる。「無味無臭」ということに関して言うと、味や臭いはそれぞれの元となる分子を人間の 感覚器が受容して得られる感覚であるが、そう考えると水だって分子なのだから「水の味」という感覚があってもおかしくはない。それが無いのは、水が人間に とって根源的な物質であるからこそであるような気がする。「透明な液体である」ということについては3.で言及する。
2. Water is necessary for life.
→当たり前とも言えるが、 水の豊富な日本にいると中々実感しにくい現実である。人間やその他様々な動物の大部分を水が占めると言う事実(他のいくつかの知見にも述べられている) は、それらが海起源であったことの証拠であるにとどまらない。水は代謝や体温調節など、生命活動に必須なのである。マクロな目で見ても、生態系は水の循環 系として捉えることも出来、地球が「水の惑星」であることと「生命の惑星」であることは切っても切れない関係であるといえると思う。
3. Water is essential to the manufacture of starch by plants.
→これは光合成を指してい る。水と二酸化炭素という地球上に大量に存在する物質を、光エネルギー(これも太陽からたっぷり注がれる。1.の知見にあるように、水が透明で光を多く通 す物質であることがここで重要になる)を使ってでんぷんと酸素に変えるという、葉緑体を持った生物に共通の化学反応である。光合成生物の誕生は、地球の大 気構成を大きく変化させ、紫外線を吸収するオゾン層を作り出し、陸上を生物が住める環境にした。そして、でんぷん(糖)を水と二酸化炭素に分解することに より生物はエネルギーを得ている。水は一度水ではなくなりつつも、また循環しているのである。
4. Water is an agent in erosion of the land.
→出来たてホヤホヤの火山 以外の陸地はすべて水の造形であるといって良いと思う。長い間雨が降らず、水の浸食を殆ど受けてこなかった土地でも過去の侵食の影響があって今のその地形 がある。液体の水だけでなく、氷河による侵食もある。また侵食だけでなく陸地の生成にも水は大きく関係している。地層は川が削り取った陸地の土砂が堆積し て形成されたものであるし、南極の分厚い氷は水そのものである。
5. By convention, one cubic centimeter of water at 4 C. (its temperature at maximum density) weighs one gram.
→水がグラムの基準になっ ているというのは人にとっての水の普遍性を物語っているだろうが、ここでは「4℃の時に密度が最大である」ということに注目したい。この事実によって、一 番重い4℃の水は湖底に沈み、冬季に氷結する湖でも魚が生き残れるのである。
6. Unlike other liquids, water expands in freezing.
→5.とかぶってしまうが これも密度の問題である。同じ質量の水は凍ると容積が増大する。すなわち固体の水である氷は液体の水より密度が軽くなるので水に浮くのである。4℃の水が 一番重いのも、4℃未満の水がまだ少し氷のクラスターを含んでいるからだそうだ。もしも水が普通の物質のように固体の方が密度が高かったとしたら、氷山は 全て沈んでタイタニックの悲劇は生まれなかっただろうが同時に冬の湖では普通の生物は生き残れず(生き延びることが出来るように進化する可能性も有るが) に死に絶えてしまうだろう。流氷の妖精クリオネなどはどうなるのだろうか。
7. Water is one of the best known solvents.
→水は溶解力の大変強い物 質である。海は様々な物質を溶かしこんだ為に生命誕生の場になり得たし、また命を育くむ場ともなった。生物の体内にある水には栄養素や老廃物を溶かしこん でその運搬をするという役目がある。動物では溶けたイオンが神経伝達を担う。自然のミネラルウォーターに含まれる様々なイオンは、川を下って海に流れ込 み、海の生物の栄養源ともなる。水はメッセンジャーなのであると言えよう。
→ ほかにもいくつか 「海からの誕生」に関する知見があったがこれが一番平明に思われたので選んだ。現在の科学(生物学)によっても、陸上の生物はすべて海から生まれたとされ る。世界各地の神話で神や生物が海(水)から生まれたとされているのは、人間がそれを本能的に理解していたからなのだろうか。人間をはじめ陸上生活をする 生物のほとんどは今では水中では生活できないどころか溺れ死んでしまうことを考えると、これは大変興味深い謎である。
また、他の「海から の誕生」系知見の中に、“Aphrodite, the ancient Greek goddess of love, was born of the sea.” というものもあるが、ギリシャ神話の記述によると、アフロディテ(ローマ神話ではヴィーナス)は海の泡から生まれたことになっている。授業で観たVTR で、生命分子の発生は泡であったという説が紹介されていた。偶然かもしれないが面白い一致である。
→ 最初の部分は上の 1.と同様「海からの誕生」知見であるが、後半の「女性と結び付けられてきた」という記述に目を向けたい。これも類似するものが幾つかあるが、 WebPageにあるもの以外にもケルトの泉信仰の対象は女神であったりなど様々な神話・宗教で水は女性性を示してきた。また、近代に入ってユング心理学 では女性と水は深層心理において深い結びつきがあるとしている。
現在、いわゆる純 粋な科学ではこのような精神内表象についての説は出てこないが、これはより自然に近い存在としての女性と流動的で治めるのが難しい水、そして子を産む女性 と生命を生み出す海というような、人類にとって普遍性を持った比喩を由来としていると思う。
→ 日本の禊や、キリスト教を 始めさまざまな宗教で行われる洗礼、沐浴などはすべて「清める」という面があると思う。これに普遍性があるのは、やはり太古の昔から日常生活の中で「物を 洗う」のに水が使われてきたからであろう。物質を溶かす能力が強い水だからこその知見であると言える。
<Reference>
自然の化学的基礎 2004 冬学期講義・講義資料
地質学I・II 2002 春・秋学期講義・講義資料
カルヴィン・S.ホ―ル,
ヴァ―ノン・J.ノ―ドバイ『ユング心理学入門』清水弘文堂,1974.
ヴィーナス誕生<http:
//www.abacuss.com/cat-net/frame/venus.html>