不思議な物質・水

S 031124 今井泰弘

 

高校生(以下、K);「水は、無臭、無色透明で、物理・化学的に特に注目すべき特徴もない。しかも、この地球上にどこにでもあるもっともありふれた物質だ。」

私(以下、I);いや、そんな事はない。確かに、水は無臭、無色透明だけど、水は物理化学的に非常に特徴ある物質で、地球上にどこにでもあるわけではないのです。

 

K; でも、生命が生きているところにはどこにでも水があるでしょう。

I; それは、水は最もありふれたと物質ということは、それだけ生命は水に対して深い関わりを持っているということです。生命維持のために絶対不可欠な水は、長い間共に生きてきたために、身近にあるのが普通です。生命の身体の60~80%は水なのです。でも、逆に考えてみると、生命はそれだけ水から離れない様に、水を追い求め、水と常に接してきたのです。

 

K;それでは、人間の身体は一日にどれくらいの水が必要なのですか?

I 成人男性(体重70kg)の人の場合、2500ml 必要です。以下のグラフを参考にしてください。排出も、2500ml行われます。

 

K; なるほど。それでは、水不足と近年よく言われているけど、水はそんなに不足しているのですか?

I; いや、水の量は約46億年前に水が誕生した時から、その量は変らず、地球の水の総量は、1,384 x 106 km3で、海水が97.5%、淡水はたったの2.5%で、その70%は局地の氷、29%は地下水です。水は誕生以来、循環を繰り返しています。海の水が蒸発し、雲となり、雨となって地上へ降りてきて、また海へと流れていくこの循環の繰り返しです。そのために、限られた水量の中から分配しないと行けません。この分配が日本のように水資源に恵まれた国や、中東、アフリカなどの水資源に恵まれなかった国との違いとなっています。

なぜ、水不足が言われているかというと、前述の通り水の量は限られています。しかし、その一方で人間が使う水の量が、人口の急激な増加や工業化により増加してきていることが原因です。計算によると、2006年には、地球上の水ではすべての人口を賄うことができなくなり、水資源をめぐって、紛争が起こるとも言われています。現に、イスラエルは国際社会からの非難にもかかわらず、ゴラン高原、ヨルダン川西岸地域を支配下においている一つの理由は、ヨルダン川の水資源を確保することです。

 

K;水が不足していることに関係して、海水を淡水に変えられるって聞いたけれど、本当にできるのですか?

I 水資源が少ない地域が石油などの資源に恵まれている中東地域や、水使用量の多い先進諸国では、海水の淡水化という作業も行われています。これは、海水から塩分を取り除き、淡水として利用する作業ですが、いくつかの方法があります。まず、海水を蒸発させ、その蒸気を冷やす蒸発法です。これには、蒸発させるために、多大な石油が必要なので、主に産油国である中東諸国で行われています。半透膜を使い、浸透圧を利用し、海水を淡水化する、逆浸透法。これは少ないエネルギーでできるために注目され、近年開発が進んでいます。イオン反応を使った電気透析法、海水を凍らせ、氷だけを溶かす凍結法などがあり、実際使われているものもあり、海水の淡水化は、年々増えていく水の需要を賄うために、注目されています。しかし、コスト面で問題が残り、いかにコストを下げていくかが今後の課題です。

 

K;水不足の原因が先進諸国の水の消費量が増えたからと述べられていますが、一体どれくらいの水を一日に使っているのですか?

I;一日の水の資料量が最も多いのはアメリカで、一日に約1,440,000(単位100l)、一人にすると、6,320lもの水を消費しています。日本は、一日290,000(単位100l)、一人にすると、2,530l の水を消費しています。先進諸国における水の消費量の増加が目立っており、 水不足といわれる原因になっています。

 

K;加えて、海外に行くとよく聞く硬水と、日本の水のなどの軟水の違いは何ですか?

I 硬水と軟水の違いは、水の中に含まれるマグネシウムの量で決まります。水1リットル中にカルシウムとマグネシウムの量を炭酸カルシウムの量 に換算した合計値(mg/F)をWとして、W200mg/l以上の水は硬水、100mg/l の水は、軟水と分けられます。硬水は、石鹸の泡立ちが悪かったり、肉が硬くなったり、野菜がごわごわしたり、慣れない人が飲むと下痢の原因になったりします。軟水は、逆の性質で、飲みやすい水です。また、水に含まれるマグネシウムが多くなるにつれて、水は苦くなります。

 

K それでは、最初に言っていた水の特徴って?

I まず、水はその姿を三つに変えることが出来ます。0℃以下では固体、0℃以上100℃未満では液体、100℃以上だと気体と、良く知られているだけでも三つの形態があります。

 

K では、その気体、液体、固体とはどういう状況なのですか?

I まず、そもそもすべての物質は微粒子(原子、分子)からできていて、この微粒子間に働く力を分子間力といいます。分子間力が強いほど、物質は硬くなります。この分子間力と微粒子(原子)の運動エネルギーは、温度に比例します。それで、この分子間力と運動エネルギーの釣り合いから、微粒子の集まり方に違いができて、それが物質の三態の原因となります。つまり、気体、固体、液体は、温度の差による、原子の運動エネルギーの変化によって生じるものなのです。気体は、運動エネルギーが分子間力より大きい状態、液体は分子間力、運動エネルギーの両方が強く、原子が自由に移動できる状態で、そのために、液体は流動性があるのです。固体は、分子間力が運動エネルギーよりも強い状態のことです。

 

K よく、グラスいっぱいに水を入れても、あふれそうであふれないのも、水の特性?

I;はい。それは、水の表面張力というものです。水は強い表面張力を持っています。そのために、水の水滴は丸く見えるのです。表面張力がより強い水銀は、常に丸くなった状態です。表面張力とは、液体分子の凝集力、集まる力のことで、液体分子は沢山の分子で固まっている状態で、中から引っ張られ、この力を凝集力、つまり表面張力といいます。表面張力は毛細管現象にも影響します。毛細管現象とは、毛細管現象液体中に細い管を立てたとき、その管内を液体が上昇する現象。管が細ければ細いほど、上昇する力が強くなります。

 

K;よく、富士山などの高い山に登ると、お茶を入れてもぬるい温度でしか入れることができないと言うのは、水の性質と何か関係があるの?

I;それは、水の沸点と関係があります。まず、気圧というものは、高度が高くなるにつれて低下します。気圧が下がると、水の表面の圧力が低下するために、水は気体となって蒸発しやすくなります。沸騰とは水が気体となって蒸発する状態のことをいい、通常の気圧の元では、100℃で水は表面の圧力以上の力で気体として大気へと出ることができますが、気圧の低いところでは、その水の表面を抑える力が弱くなるために、水は低温でも沸騰してしまうのです。逆に、圧力鍋の中など気圧の高いところでは、水の表面を押え込む力が強くなるために、水は気体として大気中にでにくくなるために、100℃以上の温度にならないと、沸騰しないのです。

気圧の低いところにおいて100℃以上で沸騰させるには、圧力鍋等を使って、気圧を調整する必要があります。

 

K;これまで、話をしていてい実は水はありふれた物質ではなく、非常に様々な性質を持って、しかも決して無限にある物質ではないと実感しました。

I;そうですね、日本は水に恵まれた国で、日本の歴史は緑と水の歴史という言葉があるように、日本において水は日本人の生活において非常に重要な役割を果たしてきました。例えば、日本酒。日本酒はきれいな水がないと作れないものです。和紙もそうです。そのように、日本には色々な水に支えられてきた文化があります。日本人をはじめ、先進諸国の人々はそのような、水と共存してきたということを忘れているような感じがします。水を汚し、水を使い過ぎ、水の流れを支配しようとしています。水は、一見すると、皆、無色透明で無臭の物質でありふれていると思いがちかもしれません。しかし、実際には水という物質は変化に富んだ性質を持ち、様々な要素によって状態が変化します。しかし、その水の性質を改めてみて少し詳しく見てみると、実は不思議な物質です。その不思議さが水の魅力であり、その不思議な物質が、人々が必要としている水という物質なのです。

 

<参考資料>

硬水と軟水 http://www.kix.or.jp/users/ktr/page13.htm

水の不思議 http://www.jwcc.co.jp/strange.html

環境庁ホームページ http://www.eic.or.jp/eanet/

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