*これより後はICU大学・国際関係学科学生・原田明佳のレクチャー内容を記録したものである。また、ここに書かれている「シミュレーション・グラス」というプログラムそのものは、フィクションである。しかしそのプログラムの内容は事実である。(読んでみればわかります。)
「水は無色、無臭、無色無透明で、物理・科学的に特に注目すべき特徴も無い、しかも、この地球上のどこにでもある最もありふれた物質だ。」と考えている諸君。
では君達は、我々日本人が飲む水―地下水の成分のうち、1つでも違う・もしくは何かが欠如しているだけで、我々の健康に大いに支障をきたすということを知っているか?
例えば我々が、最近生水の代わりに頻繁に口にするミネラルウォーターがある。300種類以上の製品が現在市場に出回っているといわれていて、これらは基本的には地下水なのだが、地下水は100年という単位で雨水をろ過し、地上に湧き出してくる。その際、岩の中に存在する、人間にとって必要不可欠なミネラル分、例えばカルシウムやマグネシウムを吸収するのだが、その量が少しでも多い、もしくは少なくても我々の身体に異常をきたす。ここで説明しておくが、水がカルシウムとマグネシウム等の塩類を含む度合いを硬度といい、成分を多く含む水を「硬水」とよんでいる。フランスの水は、総硬度が600mg/L以上あり、これは硬水である。それと比較すると、日本の水は10から100mg/Lの軟水だ。日本人はあまり硬度の高い水を飲むと下痢をしやすくなる。原因は、マグネシウムが硫酸マグネシウムとして多く溶け込んでいる場合で、硫酸マグネシウムは主に下剤として使用されている物質である。つまり日本人の体に合わないということなのだが、このように水中のちょっとした物質の溶解の違いに人間の体は敏感に反応してしまう。それ程、我々の身体は水との繋がりが強いのだ。(*B参考)
ここで水の硬度に関係する、最近原因が突き止められたという昭和初期の事件を紹介しよう。ある山村で奇病が絶えず発生していたのだが、それはほとんどカルシウムを含まない水の存在のせいであった。山村であったために魚を摂ることが少なく、その地域でとれた野菜類には当然カルシウムが含まれていなかったため、慢性のカルシウム不足が原因の病気だったということだ。このように、自然水であっても水が我々に与えてくれるミネラル成分がいかに重要であり、水を選択する際にその基準を自分の健康状態にあわせて正確に設定することが必要なのだということが言える。(*B参考)
また君達は、水以外の物質にはありえない、化学的にも謎に満ちた水の特性を知っているか?
一般的に物質は温度が下がると、それにつれて密度が増していく。そのため固体の状態では、その物質は、その物質の液体の状態に沈んでしまう。しかし水は違っていて、冷却温度が4℃を過ぎると密度を増やすのを止め膨張を始める。そして0℃に下がる頃には容積が11%も増えているのだ。そのため氷は浮き、また静かな水は表面から凍り始める。そしてこの特質により、我々生物は生かされているといっても過言ではない。何故ならもし水が一般的な性質を持っていたしたら、氷―特に海に浮かぶ氷や氷山など―は水底に沈み、世界のあらゆる池や水溜り、海のあらゆる入り江は底から水面へと凍っていくからだ。こうなると地球上の水は不動の氷になってしまい、空気を含めた全ての水源は乾き切り、雨は一滴も降らなくなる。(*@参考)そうなれば我々人類が、水中に混ざるたった1つの物質からも影響を受けてしまう生物が、地球上で生きていられなくなり絶滅の危機に瀕することは目に見えているだろう。
つまり、もしこの水の特性がなければ、地球という、大気で守れた生命のオアシスは誕生しなかったであろうし、結局人類の存在というのは、傍目では「この地球上のどこにでもある最もありふれた物質」であるかのように見える「水」よりもとるに足らない、地球上に存在する価値もない寄生害虫のようなものなのかもしれない。その寄生虫さえも、自然界に自然発生したものであるならば、最終的には土に帰ることができるというのに。人類は、自分達の人工的な力でさえもその物質を地に帰すことができない、有害な物質を発明しすぎ、その影響力は我々の手にあまるものなのだ。
*ここで10分ブレイク。原田さんの特技、カラオケパフォーマンスを披露。そしてレクチャー再開。
「水が汚染される」ということは、結局自分達の生命存続の首を絞めているということになる。何故なら、私達は「飲める水」無しでは生きていけず、その水は地球を循環しているからだ。汚染された水は自分達のもとに返って来て、我々の体を汚染する。ご存知の通り、我々の体の60%は水であり、その12%を失うと人間は死んでしまう。しかも、海水は川を介して流れ込む生活水や、産業排水による有害物質の沈殿化によって汚染され、大腸菌をはじめとする最近を育て生態系に悪影響を及ぼした。清水や湧水の汚染は進み、かつては名水を誇ったものも今では飲料禁止となってしまった。また酸性雨は湖沼に溜まり、動物を絶滅の危機に追いやり地下水を汚染し、加えて人体被害も増加しているという。
君達はこれを聞いても、まだ「水は無色、無臭、無色無透明で・・・」と言っていられるだろうか?水は我々の生命存続の味方であるだけでなく、最大の敵にもなりうるわけだ。水はその1滴の変質によって、我々に死を宣告する力がある。それは一般的によく言われる自然災害である場合もあるし、自分が今飲んでいるコップ中の水の場合でもあるわけだ。できるものなら、水を自分達の味方につけておきたい。そのためにこれ以上の水汚染を死守する必要があるといえる。
さて。どうやら諸君の研ぎ澄まされた集中力も、そろそろ切れてきたようだ。私のカラオケパフォーマンスの時にしか起きてなかった生徒も、どうやらいるようなのでね。それでは今回のレクチャーのメインイベント「シミュレーション・グラスによる水の旅」を諸君に実際に体験してもらおう。それでは先ほど配った、シミュレーション・グラスを目に装着して欲しい。注意事項だが、このプログラムを再生している時、君達はあたかも現実に空を飛んでいたり、また異臭を感じるような「感覚」に陥るかもしれないが、それはあくまで感覚に過ぎず、実際には全く無害・安全なので、心行くまで「水の旅」を満喫して欲しい。
*プログラム再生
シミュレーション・グラスによる「水の旅」へようこそ!早速ですが、皆さんには今回、ある1滴の「水」になってもらい、水の循環を体験してもらいましょう。・・・あなたは今、雲として空気中を彷徨っています。そして雨となり、ある山の河川へと降り落ちました。美しいけれども急な川です。あなたはものすごい勢いで岩を削り、滝を滑り落ちながら平地へと下りていきます。ダムコースを選択したあなたは、そのまま大地へと浸透せず、ダムへ向かって頂きましょう。だんだん川が都市へ近づいていくにつれて、あなたは様々な川の生物を観察することができる・・・はずなのですが、最近ではそれも稀になってしまいました。工業排水やゴミ投棄、洗剤などの家庭排水による川魚の大量死、これは酸素不足によるものなのですが、はしばしば見られる光景です。では、これらの魚の死骸をうまく通り抜けて、ダムの先の浄水場に入っていきましょう。
・・・ダムを経て浄水場に入りました。そこであなた達水は、人間が使用する水道水となるために殺菌されるのです。苦しいですか?これは塩素の匂いです。そう。人間が一応「安全だ」と考えている水道水は、最近では危ないと言われています。塩素殺菌によって供給される水道水は、フミン(腐敗物質)の混入により、発ガン物質であるクロロホルムなどのトリハロメタンを大量発生しつつあるのです。またカルキ臭というのも、この塩素が原因なのです。
入念に(つまり大量の)塩素で消毒されたあなたは、給水管を通って、人間のビル・マンションの貯水槽へ向かいます。え?水道管が汚すぎて通りたくない?いやいや、通って下さい。そうしないと、このプログラムは永遠に終了しませんよ。この水道管の鉄管には、錆の付着、あるいは水垢(スケール)の発生が避けられないのです。これらが水に混入すると、雑菌や大腸菌、バクテリアなどを人間は飲むことになります。さあ、これらを取り込んで下さい。その後、あなたは貯水槽へ移動します。ここは藻や赤錆、更には小動物によって汚染されています。しばし耐えてください。そうしてあなた達水は、人間に供給されました。・・・供給されたと言っても、ここの家の家族は、どうやら水を流しっぱなしにする傾向があるようで、残念でした。あなたは、この家族の体内を探検することなく(つまり飲まれることなく)下水道探検です。
探検といっても、いいことも、面白いこともないですね。すごい悪臭でしょう?しかし、ここに浮いているのは、人間が体内から排出した汚物だけでなく、ゴミやプラスチック類、更には流失した石油などなのです。こうしてあなた達水は、工場排水などと共に海へ流されます。そこでは、フェノール・硫化物・シアン化物などが残留したまま放置され、有害物質の沈殿化が進んでいるのです。さあ、シミュレーション・グラスを通して、今の自分を見直して見てください。なんて汚い、臭い、汚れた水でしょう!しばらく海を浮遊したあなたは、また太陽の熱で蒸発し、再び雲となりました・・・。
*プログラム終了
おかえり、諸君。水の旅はどうだっただろうか?個々で違ったはずだが、人間の腎臓を通ってきた感触はどうだったかね?ほお、水道管を通ってきた?あそこは、本当に汚かっただろう?私は誤ってドブコースを選んでしまい、流れてきた犬の汚物に大変苦労した思い出があるよ。
君達も既に感じたことだろうが、我々が利用している、例えば水道水というのは、本当に危険なものなのだ。一歩薬品の量や菌が混ざっていれば、中毒になってしまったりする。またそれによって、川の生態系も破壊されてしまう。そして、その危険を招いているのは、結局我々人類なのだ。つまり君達を含めた人類が、水に対して無関心であるということはありえないし、許されないことなのだ。何故水は現在に至るまでに汚染され続けてきたのか。その歴史と、近い未来に必ず訪れるであろう人類存続の危機のために、いやむしろ地球の存在そのもののために、我々は何をすべきか、私は君達に思い悩み続けて欲しい。これは簡単に答えがでる事ではない。しかし、まず人間が問題に直接的に向き合うことから全ては始まる。その姿勢を持つということが、私が今回のレクチャーで「水」を通して一番君達に伝えたかったことだ。最後に、皆様の長時間のお付き合い、ありがとうございました! (*拍手?)
参考資料:
- @「水の惑星」ライアル・ワトソン著 内田美恵訳
- A特集!!水にまつわる常識・非常識 http://www.ddn.ne.jp/~y-tsuda/m-tokusyuu.html
- Bちょいと雑学 水の溶解力 http://www.kit.hi-ho.ne.jp/tanigenk/water3.html
- C地下水の水質 http://www.soil-brain.co.jp/t-8.tikasuinosuisitu.html
- Dセントアトラス石黒整体院 office@ishiguroseitai.co.jp