何で水は特別なんだろう?

〜ICUTV特集:あるクラスの授業風景〜

041088 樋口和子

 

ここは私立NS女子学院高校2年A組。ICUTVは、NS女子高が特別授業として設定した「水」の授業について今回特集を組んでみました。いったいどんな授業になるのでしょうか?

 

先生:    はいみんなー、それじゃあ授業始めましょうか。

 

さぁ、さっそく授業開始です。

 

先生:    でね、いきなりなんだけど。みんなミネラルウォーター知ってるよね?知

らない人いないでしょ?

大石さん:  ミネラルウォーターって、あれでしょ?コンビニとかで売ってるペットボ

トルのやつ。

木村さん:  「六甲のおいしい水」とか「エビアン」、「クリスタルゲイザー」とか色々

出てますよね。

先生:    うん。そうです。木村さんが言ってたみたいに、今色々なミネラルウォー

ターが出てるよね。この中でミネラルウォーターよく飲むって人どれくら

いいるかな?(数人が手を挙げる)じゃあ、手を挙げてる萩澤さん。なん

でミネラルウォーターを飲むのかな?

萩澤さん:  えー…おいしいから?

大石さん:  うっそ、そんな変わんなくない?

萩澤さん:  ちょっと違うんだよー。水道水よりくせがないって言うのかなぁ…。

大石さん:  えー水なんてどれも同じなんじゃないのー?

木村さん:  でも同じだとしたらなんでわざわざ水を買うわけ?

先生:    そうだよね、安達さん。なんで水を買うんだろう?そんなにおいしいのか

な?疑問だよね。じゃあこれをみんなちょっと食べてみてください。

 

先生が配ったのは水道水で炊いたご飯とミネラルウォーターで炊いたご飯の二種類でした。

 

先生:    さぁじゃあここでみんなのグルメ度チェックね。(えーという声、がやがや

する)はいはいはい、聞いてー。いい?このうちのどちらかはミネラルウ

ォーターで炊いたご飯です。Aがそれだと思う人?

萩澤さん:  Aの方がおいしい気がするからA。

木村さん:  うん、Aの方がミネラルウォーター。

 

皆が手を挙げました。これ、Aが正解なんです。単純においしいから、というだけではなく、他にもきちんとした理由があるようです。

 

先生:    炊き上がったご飯の70%は水なんです。よくここのお米じゃないと!ってこ

だわる人いるじゃない?でも、炊く時の水に工夫をしないで、ササニシキ・

コシヒカリ・アキタコマチ米に固執してもおいしいご飯は望めません。逆

にたとえ人気の低い標準価格米であってもミネラルウォーターで炊けば味

は確実に向上するの。他にも飲み物なんかもおいしくなるのよ。

大石さん:  先生、今日って水の授業でしょ?私ね、聞きたい事があったんです。おい

しい水とか言うけど、去年先生化学で「水は無色透明、無味無臭」ってい

ってたじゃないですか。良くわかんないんですけど。それに、水って地球

上どこに行ってもあるんでしょ?特にこれといって重要な事なんかないと

思うんですけど。

 

うーん、確かに、ほぼ全ての人が今までに水は無味、無臭、無色透明地球上のどこにでもある物質だと習いますよね。

 

先生:    あー、よく覚えてるね大石さん。みんなもそう思ってるよねきっと。水の

性質について勉強したとき確かに私は言いました。でもね、みんなさっき

Aのご飯の方がおいしいって思ったじゃない?萩澤さんはミネラルウォー

ターをおいしいから飲むって言ったよね。じゃあここでちょっと考えてみ

よう。水って無味無臭かな?

木村さん:  ミネラルウォーターは種類が色々あるって聞いたことある。ほら、エビア

ンはおいしいけど大清水はあんまりとか評価するじゃないですか。

萩澤さん:  私がミネラルウォーターを買う理由なんですけど、水道水は消毒されてい

るのでカルキ臭いとよく言われてますよね。それに、無味無臭って言うけ

ど海水は水道水とは違って潮の香りがするし塩辛いでしょ。その時点で無

味無臭クリアしてないと思う。

先生:    さぁ、ここで大きな疑問が出てきたね。みんなで考えてみようよ。水って

無色透明、無味無臭、他に特徴がないって言う人実際多いんだけど、ほん

とにそうなのかな?

 

皆さんも一緒にお考え下さい。本当のところはどうなのでしょうか。

 

先生:    まずね、さっきのミネラルウォーターの話に戻るよ。ミネラルってつくこ

の種類の水はミネラルを適度に含んだ飲料水です。もともとはヨーロッパ

の中でも特に生水が飲めない地域で普及していたものなの。

大石さん:  先生、おいしい水ってじゃあどんなものなの?

先生:    おいしい水の3大要素は硬度、つまりミネラルの含有量ね、それからPH、

覚えてるかな?水素イオンの濃度のことね。

木村さん:  あー7だと中性で、数値が小さくなるほど酸性が強くて逆に数値が大きくな

るほどアルカリ性が強いってあれでしょ?

先生:    そうそう。木村さんちゃんと勉強してるねー。えらいえらい。あとは温度

ね。一般的には10℃〜15℃がおいしく感じられるって言われています。水

にはね、こんな感じで色々な物質が溶け込んでいるの。逆に言うと、何で

も溶かしちゃう力があるってことなの。よく考えてみて?皆の身の回りで

水に溶けてるもの、水溶液にはどんな種類がありますか?

萩澤さん:  海水。うーん、あとは…血?

大石さん:  なんか植物の細胞って水溶液含んでなかったっけ?

木村さん:  動物細胞もだよね。

先生:    そうだね。私たちの身の回りにある大半のものは水溶液なんです。私たち

の体の70%は水でできてるとか聞いた事あるでしょ?これってこういう

ことなのよね。水溶液でできてるってこと。

 

TVの前の皆さんはご存知でしたか?人間にとって水はなくてはならないものだったのです。人間の体に関するものとして、水には他にもこんなデータがあります。1gの物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量を比熱と言いますが、水はこの比熱が大変大きいのです。つまり、水は温まりにくく、冷めにくい液体というわけです。また、蒸発もしにくい物質なので、人間の体に含まれている水も沸騰してしまう事も蒸発してしまう事もないのです。さて、クラスではなにやら簡単な実験が始まったみたいですよ。

 

先生:    みんなこれ見てください。今水に氷を浮かべてありますね。これって同じ物質の固体が液体に浮いてるんだよね。これ他の固体ではどうなんだろう?ちょっとやってみましょうか。

 

実験してみています。塩酸、アンモニア、色々ありますね。結晶化した固体を液体に浮か

べているようです。浮くのでしょうか?

 

大石さん:  あれー、これ浮かない。

萩澤さん:  これも浮かないや。

木村さん:  全部浮かない。氷だけ?(その他の生徒も口々に浮かないと言っている)

先生:    実は水だけなのよ、同じ物質の固体が液体に浮くのは。みんなが普段当たり前に見ているこの現象は水の特別な特徴なんです。

 

そうだったんですね。大きな表面張力なんかは水の良く知られている特徴ですがこちらは

意外と知られていないのではないでしょうか?これは液体から固体になるときに密度が小

さくなるために起こるのだそうです。密度は4℃で最大となり、その前後で減少するのだと

か。4℃を超えると通常の液体のように温度が上がるにつれて減少します。

 

先生:    この他にも水は面白い特徴をいくつかもっています。例えば氷は圧力をかけると融点である氷点が下がるの。これ、普通の物質ではどうなるか分かる?

木村さん:  …逆、ですか?

先生:    そうね。大正解。ね、変わってるでしょ?この氷点はね、簡単な分子で構成されている物質にしては高いのよ。

萩澤さん:  へー、0℃ですよね。

先生:    そう。常温で液体として存在してるでしょう。100℃っていう沸点も、周期表の中で見ると本当に高いのよ。(生徒たち納得)

大石さん:  水って結構特徴あったんだ。ちょっと見方変わったかも。

先生:    じゃあ変わりついでに、もう一個話すね。授業のはじめにミネラルウォーターの話をしたよね。今人間は水を普通に買って飲む時代になったけど、変わらずに消費してるものもあるよね。

木村さん:  お風呂とか、洗濯とか、料理とか?

萩澤さん:  他の動植物が生きていくためにも必要だし、あとプールとかスケート場とか水族館とか、娯楽施設で結構使ってるよね。

先生:    そうね。最近「節電にご協力お願いします」ってCMよく見るよね。それだけ水や電気って生活していく上で切り離せないものでしょう?(生徒たち頷く)じゃここでみんなに問題を出します。生活していく上で切り離せないものだったら自分がどれくらい水を使ってるのか、無駄にしてるのかわかるよね?(えーという声)

 

皆さんはご存知ですか?ちょっと一緒に考えてみてください。

先生:    コップ225杯分の水。これは何の値でしょう?

大石さん:  えー、飲む量?…そんなに飲まないか。

萩澤さん:  絶対無駄にしてる量なんだよー!

木村さん:  え、なんだろ、何を無駄にしてる量?

先生:    他の人はー?ギブアップ?(みんな頷く)はい、じゃあ正解。これはね、蛇口を開けっ放しのまま歯磨きしたときに流れ出てる水の量です。(えーという声)見に覚えがある人ですね今えーって言ったのは。(教室中笑いが起こる)歯を磨くときまず歯ブラシをぬらすよね?そこから3分間歯を磨いたとするよ。その間水を流しっぱなしにしてるとこれだけの量の水を無駄に流してる事になるわけです。コップ225杯ってどれくらいか分かる?

木村さん:  えー…大体コップって200mlでしょ?…45リットル?

先生:    正解。水道の水の勢いってね、思ってるより強いの。だから気付かないうちにどんどん流れ出ていってるのよ。口をすすぐのにそんなに水いるのかな?

萩澤さん:  いらないと思う。一杯あれば十分。

先生:    でしょう?さっきえーって言った人、ちゃんと反省してくださいよ?(再び笑いが起きる)じゃあね、次。バスタブ560杯分。

大石さん:  なんだろう…生活用水が一日に川に流れる量とか?

先生:    おしいなぁ。これはね、天ぷら油500mlを流した後魚が住めるような水に戻すために必要な水の量なんです。(教室のみんな驚く)

 

そうなんです。たった500mlの油のためにバスタブ560杯分もの水が必要になるのです。

台所から出る排水は川に流れ込みます。このせいで汚れてしまった水をきれいな水に戻す

ためにはこの場合、224,000倍の112,000リットル、バスタブ一杯を200リットルと換算し

た時、560杯分の大量の水が必要になってしまうのです。お椀一杯でもバスタブ約4杯分

の水を使わなくてはきれいにはならないのです。

 

先生:    みんな東京ドーム1,177,000個分って言われてピンと来る?こないよね。これはね、今地球上にある水の量なの。約13億8,600,000H3と言われています。この水は地球ができたときから存在していて、新化と共に雲、雨、海、氷山といろんな形で循環を続けているんです。この循環してる水のうち、東京の家庭で一日に一人の人が使う水の量はペットボトル166本分。つまり246リットルの水が一日に一人によって消費され、その水はまた長い時間をかけて浄化、循環をくりかえすの。

萩澤さん:  地球が生まれた時からあって時間をかけて循環されて来た水私たちが使ってるって改めて考えると大切にしなきゃって思うなぁ。

木村さん:  よく水はただだからって言う人いるじゃないですか。あれってやっぱりいけないよね。値段がついてないからこそ、気をつけて使わないと気付かないうちにこんなに無駄にしちゃってるんだもん。

先生:    そうだよね。みんなちょっとは水に対する考え方が変わったかな?ありふれたつまんないものだって思う人いるかな?(生徒首を横に振る)よかった!いい機会になったみたいね。水を大切にして、私たちは今後その先のことも考えていい水との付き合い方をしていかなくちゃいけないよね。

さ、それじゃ終わりましょうか。

 

皆さんにもいいきっかけになったでしょうか?限りある太古の昔からの贈りものである水。

どんな風に使うかを考えると共に、そもそもどんな物質なのか、そのものを良く知り、ど

んな使い方をしているのか見直して水を守れる付き合いをしていきたいものですね。

<参考文献>

日本の子供たちが地球を救う50の方法(ブロンズ新社)

水のおもしろ不思議雑学(オーエス出版社)

頭にやさしい雑学読本(同文書院)


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