隠れた水の実態

061164 梶田絵美 

 

 わたしたちの生活において水は欠かせません。ということはあたりまえのことのように、誰もが認識していると思います。朝起きて、歯を磨いたり、顔を洗ったり、お湯を沸かしてインスタントコーヒーを飲んだり。朝シャワーを浴びる人もいるかもしれません。わたしたちは水を摂取するだけでなく、生活においてさまざまなことに利用しています。水が存在しない生活などありえません。蛇口をひねればいつでも水はでてきますし、日本では雨が全く降らないということもそう多くありません。そう考えると水は身近にありふれています。実際わたしたちの体は7割が水で構成されていますから、人間と水とは密接な関係なのでしょう。

 

 「水は無味、無臭、無色透明で、物理・化学的に特に注目すべき特徴もない。しかも、この地球上のどこにでもある最もありふれた物質だ」

 このように考える人は多いことでしょう。私も以前はきっとその一人でした。このような認識は実は正しいようで正しくないのです。わたしたちはあまりにも水が身近に存在するあまりに、水の実態を知らずにいるのです。実際水は他の物質と比べてみると、特徴のある性質を多く持っています。極端に言えば、むしろ異常な物質です。さらに水は現在多くの地域で不足していることで、大きな国際問題として浮上しています。今回はわたしたちの生活と密接に関係している水について再考してみましょう。

 

 1.水の異常性

水にはいくつかの特徴があります。まずひとつに溶解能があげられます。水は他の物質を溶かそうとする性質があり、溶けにくい銀までも溶かしてしまいます。特に塩類は水によく溶けます。そのため自然の中では水は純粋ではありません。地球上の水の循環で雨となって地上に降った水は地面にしみこみ、地中のミネラル分などを多量に含んでいるのです。完璧に純粋な水は人口的に作ることができますが、指を浸しただけですぐに水は不純と化していまいます。

 海が生命にとって栄養素の宝庫であるというのも、水のこのような特徴があってこそなのです。また水はわたしたちの体内で多くの物質を溶かし、生体化学反応のための溶媒となって栄養を取り込んだり、排泄を行ったりしているのです。

また、水には熱しにくく冷めにくいという特徴があります。これはわたしたちの体にどのような影響を与えているのでしょうか。まず、熱しにくいという点では、体温を一定に保つ働きがあります。そして冷めにくいという点では凍傷やしもやけ、あかぎれなどを防ぐ働きがあります。さらに水は蒸発熱が全物質の中で最も高く、発汗による体温調節を促す作用もあります。植物においては、気孔から水を蒸散させる働きを促し、葉の過熱を防いでいます。そのほかにも水には表面張力という特徴があることはよく知られています。水には大きくなろうとする性質があり、水の分子はたがいにくっつき合おうとするために、細い試験管などにみずを入れた場合、重力にさからって水は上へはい上がろうとします。これを毛細管現象といい、この現象は大木が木のてっぺんまで水を吸い上げることが可能にさせ、またわたしたちの体内では身体の末端まで血液を行き渡らせることを可能にさせます。

このように水の隠れた特徴をみてみると、それらはわたしたち人間を初めとする生体と密接に関係していることがわかります。地球上の生物は生きる上で、水の特性に依存しているのです。水の特別な性質によって地球上で生命が生存できる環境が作られているといっても過言ではないでしょう。

 

2.わたしたちが必要とする水

 わたしたちは生きる上で毎日約2〜2.5リットルの水を必要とします。そして必要な水分の50%は飲み物から、35%は食べ物から摂取します。人間は2%の水を失うとのどが渇き、5%を失うと幻覚をおこします。さらに12%を失うと死亡する可能性が高いのです。

日本では雨が多く、年間降水量は世界平均の約2倍です。しかし、河川の流量の差が大きく、また人口が多いために1人当りの降水量は世界平均の約1/4と決して水資源に恵まれているとはいえません。実際、94年には「列島渇水」のような全国的な水不足が起こり、九州、四国、近畿地方では夏場の水不足が問題となりました。そのため、ダム建設や保水能力の高い森林の涵養、節水蛇口の採用、配水管の水圧調節、水の高度処理水の再利用、海水の淡水化などといった多様な方法で水資源の確保を試みています。降水量も多く、水道システムも整っている日本では、上にあげた水資源確保の努力もあって、水不足の危機からは幸いまぬがれているといえるでしょう。そのため日本では生きる上では水は充分に確保できているのです。しかし海外に視野を向けてみると、世界の人口と水需要には大きな差が生じています。特に中近東やアフリカでは、深刻な水不足に苛まれているのが現状です。

 

3.水不足問題

地球では表面積の60%を水面が占めていますが、なんとその約97.5%は海水です。淡水はほんの2.5%に過ぎません。さらにその70%は南極の棚氷であり、わたしたちが利用できる水は地下水及び地表を循環するわずかな量の水だけなのです。特に水が不足している中東やアフリカ地域では水をめぐって紛争が起きているため、21世紀は水の紛争の世紀だとも言われています。人口増加によって水の需要が高まる一方で、淡水の確保が追いつかず、2025年には世界人口の約半数の人々が水不足に直面すると予想されています。この問題にあたって、現在日本では、海水淡水化の技術を国外に提供して水不足問題解決に向けて貢献しています。

 

4.海水淡水化

淡水化の方法には、主に「蒸発法」「電気透析法」「逆浸透法」の3つがあります。その中でも処理プロセスが簡単で、しかも経済的な「逆浸透法」は、小さな細菌やウィルスも通さない薄い膜「半透膜」を使用して海水を淡水化する方法です。まず海底に海水を取るための取水官を埋設します。取水した海水はUF膜ろ過装置という装置へ送られ、水の濁りや大腸菌などの細菌類を取り除きます。

 そして「半透膜」で仕切られた容器に真水と取水した海水を入れます。このとき淡水は塩分濃度が同じになるように半透膜を通って海水側に流れます。そしてある一定の水面差が生じると淡水の移動が止まります。これを浸透現象といい、この水面差に相当する圧力を浸透圧といいます。逆浸透膜方式では、海水に浸透圧以上の圧力をかけることで、海水中の淡水だけが透過し、淡水を取出すことができるのです。日本ではこのような海水の淡水化の技術が比較的進んでいて、人口問題を抱える中国ではこの淡水化の方法を導入する動きがでてきています。しかし、実際問題として、ほとんどの発展途上国ではこの海水淡水化の装置を動かすための電力が供給できないためにこの技術を導入することが難しく、それらの国での電力供給が今後の課題にもなっています。

 

ここまでの水の話において、あなたはどのぐらい水を正しく認識していたでしょうか?意外な水の実態をあなたはいくつ発見できましたか?わたしたちになじみのある、また生活の中でありふれた物質だからこそ、水の知られざる実態にきっと驚いたことでしょう。今回の話で地球上の生物にとって必要不可欠な水の価値についても再認識できたと思います。さて、限りある貴重な水と共存していく上で、あなたの生活は今後どう変わっていくでしょうか?

<参考資料>

深刻化する水資源問題http://www.izumi-sec.co.jp/invest/sa_ken/0211.html

福岡地区水道企業団http://www.f-suiki.or.jp/kaitan/03.html

水と社会http://www.waternetwork.org/society/

水web http://www.secom.co.jp/mizuweb/oisii1.html

講義資料

 


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