『水→ポカリ→数字→値段で考えてみよう』x

 

今回、みなさんに水についてお話をしたいと思います。あの、味も臭いも色もない、私達の生活にありふれている、水です。みなさんもおわかりの通り、水は、ないと困ります。なんて当たり前のようなことを言うのか、と怒らないでください。昨今では、人口増加とともに水不足が叫ばれているし、環境汚染とともに水質の悪化も取りざたされています。メディアや、また学校の授業などを通して水の大切さをすでにご存知だと思います。

水が大事なのはもはや当たり前ではあるけれど、今の私達の生活において水は、蛇口をひねれば簡単に出てくるものであり、なかなかその大切さを認識するのは難しいと思います。水は必要で、人類そして生物すべてにとって大事な資源です。しかし、おそらく、今まで水がなくて生きるのもままならないという状況に直面した人はいないのではないでしょうか?ですから、とりあえず、一緒に考えてみましょう。水のある生活がいかに幸せであるか、を。考えることが、すべての第一歩です。

 

はじめに

 

<無味、無臭、無色透明の水がもしも・・・で考えよう>

おそらく今の水に困らない生活を脱して、水分を補給できない生活をすることが、水の重要性を痛感できる手っ取り早い方法でしょう。だからといって、さあ今から水なしで生活しろというのはなかなかできません。みなさんは、アフリカなどの途上国の人々がいかに水に困っているかを聞いたことがおそらく一度はあると思います。そして、その、水がゼロに近い状況に思いをはせたことのある人もいるでしょう。

しかし、ここでは、そういった意味ではなく違った意味で「水のない生活」を考えてみてはどうでしょうか?蛇口をひねればたやすく水が出てくる生活から、アフリカなどの途上国の人々の水の不足している生活に頭を切り替えるのではなく、あえて、生活状況をかえないで考えてみます。まずイントロダクションとして、こんな「水がない生活」を想像してみましょう。

もしも、水が水ではなく、スポーツドリンク、例えばポカリスエットだとしたらどうでしょう?水の成分は、カルシウム、ナトリウム、カリウムといったミネラル成分が含まれています。ポカリスエットも水がなければ作れないのですが、あえてその矛盾は無視しましょう。ポカリスエットの成分には水のミネラル成分がすでに含まれていると考えます。さらに、ポカリスエットには糖質、ビタミンC、灰分なども含まれています。

想像してください。私達の生活にあふれる水は、すべてポカリスエットという状況です。水分の根源は、ポカリスエットという物質だとします。笑わないで、とりあえず考えてみてください。蛇口をひねれば、ポカリスエット。ポカリスエット好きにはたまらない状況です。水よりも得した気になりますか?確かに、飲み物としては困らないし、吸収もいいですよね。ポカリスエットのようなスポーツドリンクには、私達の体液(汗)とよく似た構成の電解質を含有し、さらに疲労の回復に有用であるといわれるビタミンCを中心としたビタミン類や、そのほかに、カロリー源として糖質を加味しています。どんどん得した気になってきますか?蛇口をひとひねりして、ビタミンCを補給できますからね。トイレを流すにも、特に困りません。では、料理はどうですか?ポカリスエットで味噌汁を作り、ご飯を炊く。私には味が想像しがたいです。何かの罰ゲームのようですね。でも、仕方ありません。私達の水分の源は甘いポカリスエットなのですから。でも、ビタミンCもあることですし、まあ我慢しましょう。お風呂はどうですか?ポカリスエットのお風呂につかる。洗っても洗ってもベタベタしそうです。お風呂から出たあと、化粧水をつけましょう。でも、ポカリスエット入りです。やはり、ベタベタしっぱなしです。体だけでなく、食器を洗うにも、洗濯するにも、ポカリスエットを使用します。きれいになった気がしないのは私だけでしょうか?

女性の方は、ポカリスエットの生活では肌にひどく悪そうな気がしませんでしたか?私は肌に悪そうで嫌になってしまうと感じました。そこで、ポカリスエットではなく、すべての水分の根源が化粧水というのも考えてみます。肌にはすごくいいはずです。化粧水のお風呂はつかると、多少肌への刺激が強そうですね。肌にはよさそうですが、それ以外はどうでしょうか。飲むのも料理するのも難しそうです。これも、生活全般への適用は無理だと思います。

やはり、私達の日常生活に必要な水は、単に水分として必要だという以上に、その無味、無臭、無色透明という性質がいかに重要であるかが感じられたと思います。水をもとに、様々な水分を私達は飲用、使用していると思います。しかし、その根本である水は、かえがたい唯一無二の重要な存在なのです。

そして、この仮定では、私達人間の日常生活にのみ話をしぼってしまいましたが、生物全般を考えるとどうでしょうか?例えば、マヨネーズを水に流すと、24万倍に薄めないと魚は生きられません。米のとぎ汁でも600倍に薄めないとだめです。ポカリスエット、化粧水の海や川で魚が生息できるでしょうか?おそらく無理でしょう。私達人間にも、そしてそれ以上にその他の生物にとっても、水という物質は生存する上でかけがえのないものなのです。

 

少々強引ではありましたが、水が水であることの大切さ、重要さが少し感じていただけたでしょうか?

 

水の基礎情報

 

<ありふれた水・・・有限な水資源と現状>

いきなり「水がポカリスエットだったら」と言われても、なかなかわかりづらいという意見が出ました。確かに、現実離れしていて実際の水の大切さを把握するのは難しかったでしょうか。失礼しました。では、地球は水の惑星と言われていますが、実際どの程度水を保有しており、私達はその水をどれだけ、どのように使っているのかについてお話したいと思います。具体的な数値を示せば、水の現状とその有限である資源の大切さをわかっていただけるかもしれません。

 

世界の水とその使用量をご存知ですか?

・ 地球の水の量はおよそ14億kGで、その97%が海水で残りの3%が淡水です。しかし淡水の99%が北極・南極の氷で、利用可能な淡水は全体の0.01%(約9,000kG)です。

・ 1900年から人口は3倍、水の消費は6倍に増加しています。

・ 仮に一人一日1トンの水を使うならば250億人が生きられるが、実際には工業用水を含めて、日本人は3トン、アメリカ人は6トンの水を消費しています。

・ 日本の生活用水の使用量は、一人当たり一日平均323P使用しています。例えば、トイレで一日30P使用しています。

・ 1キロの紙を作るのに700キロ、1トンの穀物を作るのに1000トンの水が必要です。

水の浪費と水不足をご存知ですか?

・ 現在人口の約一割(約5億人)が極度の水不足に、また、人口の1/4が慢性的な水不足に苦しんでいます。

・ 2025年には世界人口の半分(40億人)が水不足になります(2000年世界水フォーラム)。

水質汚染の問題をご存知ですか?

・ 世界人口の50%には下水設備が未整備です。

・ 世界人口の7割以上の人が清浄な水を得られず、毎日約25000人が不十分な水質源管理のために死んでいます。

・ 世界人口の20%が水に関連した病気にかかっており、途上国における病気の80%は汚水が原因です。

・ 200ccの油を流すと20万人が200ccずつ薄めないとコイが棲める水になりません。すなわち、200ccの油を水に流すと、20万世帯の水を200ccずつ無駄にしているわけです。

水とからだの関係をご存知ですか?

・ 人間の体の60%は水でできており、成人で一日約2〜2.5Pの水を摂取します。

・ 人間の水分排泄量は静かに横たわっている成人男性で、一日約2.3Pです。一日に最低500mlの尿が出ないと、不要な物質がたまり、生命にとって危険な状態になります。

・ 成人で2〜4%水が不足すると脱水症状があらわれ始めます。

 

水に関する情報を数値とともに一気にお教えしました。みなさんの知らない情報ばかりだったのではないでしょうか?水は大事だけれども、浪費して水の分配が不平等であると、なんとなくは知っていたかもしれませんが、具体的な数字を前にすると、より現実的に水の諸問題を捉えることができたと思います。

 

<ありふれた水−値段をつけて考えよう>

それでも、地球の水が14億kGだとか、一日あたり323Pの消費などと言われてもいまいちピンときませんか?困りました。水にまつわることを数値に示して具体的に表したつもりなのですが・・・。

では、どうしたら水の大切さ、価値がわかるでしょうか?やはり、「お金」でしょうか?今の私達の生活で、ものの価値をはかる場合にお金が用いられます。ものに値段をつけることによって、その価値を評価しています。私達の社会では、ほとんどのものに値段がつけられていますし、皆さんもその値段によって価値が評価しやすくなるのではないでしょうか。最近では、「あなたの値段鑑定します」なんていう占いもありますしね。

まず、蛇口をひねれば際限なく出てくる水も、お金を払っているから出るわけです。学校の水道も公園の水道も、それぞれの管理者が水道代を払っているのです。例えば、23区内で呼び径13@、一ヶ月1G(1000P)使用して、消費税込みで水道料金966円、下水道料金588円で合計1554円です。1Pあたりはおよそ1.55円。日本人の一日一人あたりの生活用水は323Pの使用ですから、一日の水道代はおよそ、1.55円×323P=500.65円です。ミネラルウォーターは、500mlおよそ130円。単純計算で、水道代のおよそ168倍です。おそらく、計算のしかたによってはもっとするでしょう。

みなさん、小学校や中学校でプールの授業に参加したと思います。高校でもあるかもしれませんが、プールの水道代についてはどうでしょうか?仮に、プールのサイズを25m×7m×1.3mとしてそれを満たす水の量を考えると、227.5Gです。呼び径によって多少異なりますが、水道代はおよそ10万円前後します。一回の授業につき、10万円もの水道代がかかっているのです。もったいないと思ってきましたか?

昨今のミネラルウォーターの市場は1000億円とも言われており、おそらく、ミネラルウォーターの種類によって値段もピンからキリまであるでしょう。付加価値などを考えると、水は価値をつければきりがないかもしれません。

しかし、水はお金を生み出すのみでしょうか?水による洪水の被害などで、お金は失われてしまうこともあります。1998年、中国・長江で大洪水により経済損失は約2兆8千億円と推定されています。また、記憶に新しい2002年夏の東ヨーロッパの大洪水では、復興費用がドイツは約1兆1500億円、チェコは約2400億円とされています。水によって大きな経済的打撃をうけることもあります。

 

ありふれた水にまつわる値段を見てきました。どうですか?これで具体的に水について考えることができましたか?今までの自分の水の使用を振り返って、もったいないと感じましたか?

もったいない、とはどういう意味でしょうか?有限な水資源を浪費してもったいないのか、それともお金がもったいないのか。

皆さんは気づいたでしょうか。水に値段をつけるということは、あくまでも目安のひとつにすぎないのです。人類が誕生する何十億年も前から存在していました。その値段は、あくまでも後付されたものでしかないのです。お金で水が買えるのは、そこに使用できる水があるからです。お金で水は生み出せません。もし地球上に水がなくなってしまったら、世界中の紙幣を集めたところで水という物質は生み出せないのです。洪水の被害にしても、洪水によって亡くなられた人たちはいくら払っても戻ってこないのです。私達はものの価値をお金ではかることに慣れてしまっていますが、お金で価値をあらわしたところで、そのもの自体にはならないのです。水道代も○円と言っていますが、水のある地球、この生活はまさにモpricelessモだと思います。

私達は日本という豊かな国に暮らしています。水に関しても生きていく以上に豊富な水を利用できます。その分の水道代も払えます。しかし、払えるから使っていい、のではありません。お金という価値と、水という物質の価値は別物だと考え始めなくてはいけないと思います。現に地球では水が不足しているのです。お金と混同してそうした根本的な問題を忘れないようにしなくてはいけません。

 

終わりに

水の話をポカリスエット、具体的な数字、そして値段で考えてみました。どの考え方であれ、みなさんが水の大切さに気づいてもらえればいいと思います。考えることが、すべての第一歩です。

 

 

参考文献

 

カラダと水の関係 http://www.ddn.ne.jp/~y-tsuda/m-tokusyuu.html

国土交通省河川局 「ヨーロッパ・アジアにおける洪水について」

http://www.tonejo.go.jp/NEW/new021003/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E6%B4%AA%E6%B0%B4%E6%A6%82%E8%A6%81.pdf

世界の水問題 http://www.idi.or.jp/vision/wwv-02.htm

東京都水道局 http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/

水に感謝!!水回りの万国博覧会 http://homepage1.nifty.com/shincoo/index.html

「水とからだ」佐藤 威・監修 飛田 美穂・著 東海大学出版会 1997年  

水web http://www.secom.co.jp/mizuweb/

 

 

 


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