以下はパソコンの受験勉強ソフトのおまけとしてついていたソフトの内容である。受験勉強に疲れた吉野君が気分転換に開いてみると…
水って聞いたら君はまず何を思い浮かべる?海、お風呂、飲み水、雨。色々あるよね。じゃあ水の特徴は?味がない、透明、どこにでもある。どこにでもある…?本当にそうかな。本当に水って「ありふれた」物質かな。ちょっと考えてみよう。新聞を広げると、「水不足」とか「飲み水さえも確保できない難民」という記事がたくさんあるよね。本当に水がありふれたどこにでもある物質のはずならこんな記事はないはずだよね。逆にいえば、こういう記事があるってことはやっぱり水がありふれてない、どこにでもあるものじゃないってことだよ。でも、君は小学校で地球上の陸と海の割合は3:7だって習って、海が多いって事はそれだけ水も多いってことじゃんって思ったかもしれないね。でも、残念ながら新聞記事で扱ってる水っていうのは海の水のことじゃなかったんだよ。新聞記事で言う水っていうのは水資源のことなんだ。じゃあいったい水資源って何なんだろう?
水資源っていうのは基本的には淡水のことなんだ。地球上には1384×106_もの膨大な量の水があるんだけれども、そのうち、水資源になる淡水はたったの2.5%。そして、その淡水の内の70%は北極や南極にある氷なんだって。つまり地球上の水資源は100兆トン。ところがこの数字もまだ実際に人間が使うことのできる量じゃないんだ。もっともっと少ないんだよ。なぜかというと、水っていうのは循環しているものだから、淡水は川を流れていずれは海水になっちゃうんだ。だから急流が多かったりすると、すぐに海に流れ込んでしまって使えるはずの水が海水になって使えなくなってしまうんだ。もちろん、さっきも言ったけど水は循環しているから、海から蒸発した水が雨という淡水になって戻ってくるんだけどね。つまり何が言いたいかと言うと、陸地から海に移動している水のみが水資源と呼ばれて人間が使うことができるんだ。そして、この最大利用率はたったの20%。つまり、量であらわすと、20兆トン。こんな大きな数想像がつかないかもしれないね?お風呂一杯の水を地球上の水に例えると、人間が使うことのできる水資源は両手一杯の水にも満たないぐらいなんだ。ところが、この水資源が増々減ってきちゃってるんだ。なぜだと思う?
ただでさえ、両手一杯にも満たないぐらいの水資源がさらに減ってきている最大の理由は人口が増えたから。もちろん、人口が増えればそれだけ水を使う人が増えるんだから水資源が減るのは当たり前だよね。でも、それだけじゃないんだ。人口が増えるって事はそれだけ食糧需要が増えるって事だよね。そうすると、今までの農地だけでは生産できる食糧の量が足りなくなってしまうんだ。そこで、森林を開拓して田んぼや畑を作ってその需要を満たそうとする。木を切る理由はこれだけではなくて、牧畜地のために切り開いたり、紙を作る為のパルプのために切ったり。理由はいろいろあるけど、人口が増えたから必要なものが増え、そのために森林をどんどん伐採してるんだ。でも、何で森林伐採と水資源の減少が関係あるんだって思うでしょ?森林には保水能力があって、降った雨が大地に染み込むことによって地下水となりゆっくりと川に流れ出し、海水になるまでの時間が長くなる、つまり水資源が増えるってことなんだ。だから、木が少ないと一気に海まで流れ込んでしまって水資源が減るばかりか、洪水も起こりかねないんだよ。日本でもよく台風の季節になると「鉄砲水」に注意って新聞に載るよね。あれも、そうなんだよ。
水資源が人口の増加に伴って減ってきてる理由の主なものとしてもう一つあるんだけど、それは水の汚染。人間が水を使うってことは、消しゴムみたいに使ってなくなってしまうって事ではないんだ。最初にも言ったけど水は循環しているから、水を使うってことは水を汚して循環の流れの中に戻すってことなんだよ。もしも地球上に人間が1人しかいなかったら、汚れた水を少しぐらい川に流してもそこまで大きな影響は出ないかもしれない(例え本当に1人しかいなくても流すなんて実際はいけないことだけどね)でも、今の地球上には63億もの人が住んでるんだ。こんなに大勢の人が毎日水を使ってたら、つまり水を汚してたら、水が汚染されて使える水資源が減ってしまうのも納得がいくよね。しかも、人口はまだまだ増えつづけているんだ。でも、普通に生活しててどれぐらい実際に水が汚れてしまうのかってちょっと想像つきにくいよね。じゃあちょっとここでクイズだよ。例えば、牛乳を飲みきれなくて流すとするね?それを魚が住めるほどの綺麗さの水に戻すとしたら何倍に薄めればよいと思う?A. 100倍 B. 1000倍 C. 10000倍 D. 15000倍 どれだと思う?正解はD. 1万5千倍にも薄めないと魚が住めるほどの綺麗さにはならないんだ。もっとひどいのは油。油は魚が住む為には20万倍に薄めないといけないんだ。どれだけ、水が汚れるか分かるよね?
水資源が減ってきている理由はこの2つだけではなくて、まだ他にもあるんだ。でもどれも、人間の身勝手な行為によってなんだ。そして、その身勝手な行動をする人間は増えつづけている。えっ、人間が身勝手なんて思ったことはない?じゃあここでもう一問クイズだよ。地球が誕生したのが45億年前。その時を1月1日の午前0時で今現在までを一年だとするよね?すると、人類が誕生したのって何月何日の何時になると思う?A. 8月23日10時7分 B. 11月29日13時20分 C. 12月31日22時03分12秒 D. 12月31日23時59分58.5984秒 どうかな?正解はC. 今からたったの2時間前。ちなみにBは植物や恐竜が現れた時、Dは近代科学が発明された時だよ。地球やその他の植物、自然は45億年もの年月をかけて進化してきたのに、人間はたったの2時間しかこの世に存在していないのに、自分達の生活を少しでも便利に豊かにする為に自然を壊したり汚したりしている。充分身勝手だと思わない?もちろん、人間だって生きなくちゃいけないからある程度は仕方のないこともあるんだ。だけど、もう少し先輩である自然や環境に気を使って謙虚に生きるべきなんじゃないかな。良く考えてみて。
じゃあ何か具体的にできることはあるのかな?実はたくさんあるんだよ。そんなにたくさんあってもきっと大変なことばっかりだからできない?ううん、そんなことないよ。どれも、本当に小さくて単純なことばっかりなんだ。例えば、牛乳や油を流したら水がすごく汚れちゃう。だから、飲める分だけコップに入れる、とか、油は固めて捨てる、とかね。簡単でしょ?後は、顔を洗う時や食器を洗う時、シャワーを浴びる時に水を流しっぱなしにしない、とかも良いよね。トイレも節約の重大な鍵を握ってるんだよ。トイレのタンクに何か重たいものを沈めれば一回に流す水の量が減らせるよね。お風呂の残り湯を洗濯に使ったりするのも賢いやり方だね。こんな風に本当にちょっとしたことで良いんだよ。本当に小さなことで何か変わるのかって?もちろんだよ。じゃあちょっと計算してみようか。歯を磨く時に水を出しっぱなしにしないで、コップを使って口をすすいだとするよね。そうすると、流しっぱなしにしてた時と比べて、一回に約5リットルの節約になるんだ。仮に君は4人家族で、みんな一日に3回歯を磨くとするよね?そうすると、それだけでもう5×4×3=60リットルにもなる!それを一年間続けたとすると…何と21900リットルという途方もない数になるんだ。びっくりでしょ?一家族でこれだけなんだから、みんながちょっと気を使って実行すれば本当にたくさんの水資源を守ることができるんだよ。
今日は水資源のことしか話さなかったけど、地球上には今様々な環境問題が起こってるんだ。地球の温暖化とかオゾン増の破壊とか砂漠化とかね。でも、その原因を作ったのは人間自身だって事をよく覚えておいて。そして、その人間は今この瞬間にもどんどん増えているんだ。だからこそ、人間が積極的になって少しでも環境に優しいことをやっていかなきゃいけないんだよ。そのためには、まずこういう問題に関心を持たなきゃ。今日これが終わったら新聞をちょっと広げて見て。テレビ欄でも良いし、他の記事もね。水に関するテレビや新聞記事が意外にたくさんあることが分かるから。ちょっと水のことを頭に入れながら毎日生活するといかに無駄に水を使っているかっていうことに気付くんじゃないかな。
参考文献
山口嘉之『水を訪れる−水利用と水資源開発の文化−』中央公論社 1990
朝日新聞『ののちゃんの自由研究』2003年2月20日朝刊
シンコー株式会社『水の給水館2 水資源の危機』ホームページ<http://homepage1.nifty.com/shincoo/m052kyuusui-sigen.html>
2002年度冬学期 自然の科学的基礎 講義資料