自然の化学的基礎 2000年6月21日
水〜その豊かさの重要性
031391 佐藤 亜紀
この高校生たちは「(水)はこの地球上にどこにでもある最もありふれた物質だ」と主張しているが、そのありふれていること、水がこの地球上に豊かに存在することに意味があることを述べたい。水がこれほど大量に存在することによって地球に存在するすべてのものが誕生し、生命を維持することができるのである。
実際に地球上にどれだけの水が存在するのかというと、地球の表面積の約70%は水(海)であり、体積にすると13.5億Iにもなる。これらの水のほとんどは、海、つまり海水として存在しているが、そのほかにも川や湖、池、ダムをはじめ陸上にもさまざまなところに存在している。また、水を構成している水分子は液体としてだけでなく固体や気体とかたちをかえて存在している。例えば、固体としてなら北極の氷山や、アルプス山脈の山々に残り続ける万年雪、洞窟の天井からつながった氷柱などがあげられる。気体なら雲はもちろん、日本に住む私たちならよく実感するように、私たちのまわりにある空気にも湿気として水分が含まれている。最近、乾燥機のテレビCMで部屋に5Lの洗濯ものを干すと3Pもの水をまいているのと同じ量の湿気があるとうたい文句にしているが、なかなか驚きである。このようにそまざまに変化し、いろいろな場所に存在している水であるが、ここで高校生に質問をしてみる。我々の身の回りでうえにあげた以外でどこにどのように存在しているだろうか。
考えられる主な解答
地球に存在する水のかたちとしてわすれてはならないのは「雨」である。太陽からの熱であたためられ蒸発したり、植物の葉から発散して、雲などになった水分子はふたたび雨となって地上にもどってくる。この「雨」となって地上にもどってくることがひじょうに大切で、雨が降ることによって太陽光によってあたためられた地上の温度を下げ、乾いた大地をうるおし、生命にふたたび生きるちからをあたえる。しかし、雨は気まぐれもので世界どの各地にも豊かに均一に降るわけではない。アフリカや中国大陸の中央などどは雨のふらない日が何日も何ヶ月もつづき、生命を死においやることも稀ではない。したがって、このような地域では水をめぐって戦争につながることもある。水はときにはお金や宝石よりも価値のあるものとなる。また、水の豊かな地域でも1年中都合のいいときに雨が降ってくれるわけではない。水の豊かな国として知られる日本でも、この水の豊かさを利用して農業、稲作が盛んであるが、梅雨に必要以上に大量に雨が降ったために、稲に病気がでて、国民の主食であるお米が大変不足することもある。歴史的に何十年かに1度このような米不足がおきて、そのたびに米騒動などの事件がおきている。逆に、雨が大量に降ることによって、命が奪われることもある。たとえば、国土の多くが熱帯雨林地帯である国々では、森林伐採がすすむにつれ、大雨のたびに洪水となり、家を失い、さらには家族を失ったりすることもある。最近では、このような雨水をうまく利用しながら「雨水との共存」をはかろうとする動きもでてきている。身近な例としては、墨田区の試みがあげられる。墨田区では大雨のたびに洪水が起き、浸水などの被害がでていた。そこで、区と市民が協力し一般の民家に雨水を利用したタンクを設置したり、相撲で有名な両国国技館の移転の際には、あの大屋根を利用して雨水を国技館の水道や冷房に利用できるようにしたのである。このように、地球上のさまざまな問題を解決したり、災害を防いだりするためには雨水の存在がおおきくかかわっているのである。ここで、高校生に質問。いま、起きている問題のなかで水に関するものにはどのようなものがあるだろうか。
考えられる主な解答
さきほどの身近な水の例としてあげられたように、人間をはじめとする動植物の体内にはおおくの水分が含まれている。その割合は人間の大人で70%、幼児では80%にもなりこれは魚とほぼ同じ割合である。また、この水分が失われるとどうなるだろうか。2%失われるとのどがかわいてくる。たった5%失われただけで、幻覚をみるようにり、砂漠でのオアシスなどがその例である。20%失われれば死にいたってしまうのである。これだけ身近に存在しながら生命にとって重要な物質がほかに存在するだろうか。大昔、人間の文明のはじまりは4つのおおきな川のちかくであった。古代ギリシャの哲学者タレースは「万物の根源は水だ」と唱えている。また、現代の科学技術を発展させるためには水はなくてはならない。きれいな水がなくてはできない技術もあるのである。どんなに人間の生活が原始的でも、どんなに人間が科学技術を発展させても水との関わりはきりはなすことはできないのである。
このように、例をあげたり、実際に高校生に例をあげてもらいながら水と人間の関わりや、その重要性について考えてもらうよに話をすすめていきたい。