水 〜魔法の物質〜

           ID#021516 山本 佳世子 

 

 水は私たちの日常の生活にとても密着しており、誰もが知っているごくあたりまえのものとして存在している。日本では、蛇口をひねれば飲める水がどんどんでてくるし、海にも、川にも、プールにも水は有り余っているように見える。このような感覚で世界中の多くの人間は水が自分にとっていったいどういう存在なのか、考えようともせず浪費しつづけてきた。しかし今、私たちは水について真剣に考え、具体的に行動を起こさなければならない時代がやってききた。それは、このままいけば近い将来、確実に水は足りなくなるためである。

 では、まず水はいったいどういうものなのかという問題から考えてみる。水は極めて異常な性質を多くもっており、その独特な性質の数々が地球の環境及びさまざまな種類の生物を生み出すこととなった。では、どのような異常な性質があるのだろうか? まず、第一に水は大変比熱と熱容量が大きい。このことで水はとても熱しにくく、冷めにくい物質であるといえる。さらに水の蒸発熱が大きいため、水は蒸発しにくい。これらの性質は海という穏やかで生物のとても住みやすい環境を生み出した。水の性質がゆえに、海は気温の変化が小さいのである。ほかにも、水は通常の物質と異なり、液体より固体のほうが密度が小さい。水の密度は4℃で最大となる。このため、水は表面から凍り、その凍りは水に浮いているのである。もしこの水の異常な性質が無ければ、氷は海底や湖の底に沈み、魚は全滅し、さらになかなか太陽の熱も届かずずっと溶けずに海水や湖水を冷やしつづけることになる。実際は一番重い4℃くらいが海底では保たれるため、魚は生きていけるし、ほかの生物も生まれることができた。ほかにも、水にはいろいろな異常性がある。たとえば、氷はかなり溶けにくく80cal/gの融解熱を必要とする。このことで氷は非常に優れた冷却剤としての役目をもつ。また、通常の物質とは逆に氷は圧力を下げると融点が下がる。

 さらに、水は大きな溶解力を持つ。水は何でも溶かしてしまうのである。それゆえに身近な液体はほとんどが水溶液であり、また調理、飲料、水彩画、洗浄など、実に多くの用途が生まれた。水は非常に大きな表面張力を持っている。このことにより、巨木のなかを地上何十メートルの距離まで引力に逆らい、垂直に上っていくことができる。これらの諸条件を水が満たしたことから、はじめてこの地球という星に生命が誕生することができた。さて、それでは果たして水はありあまっているのだろうか。実は、水と一口に言っても人間が直接利用できる水と出来ない水がある。人間が利用できる水は淡水であり、海水である塩水は利用できない。地球上の水のうち97.5%は塩水であり、淡水はわずか2.5%しかない。しかも、そのうちの70%は南極などの極地の氷で、これらは循環しない。また、淡水の29%は地下水としてその大部分が眠っている。つまり、地球上の水のうち、0.025%だけが人間の利用できる淡水ということになる。では、その淡水はどのようにしてできるのか。1年間の水の大循環の量を見てみると、海から蒸発する水は361兆トン、陸から蒸発する水は62兆トンで合わせて423兆トンである。そして、蒸発した水はやがて雨や雪などとなり地上に戻るが、このうち324兆トンが海へ、100兆トンが陸へ降水する。つまり、海から陸へ37兆トンの水が移動し、また100兆トンが陸から海へ河川などにより移動することを意味する。そして、雨水は淡水であるため、この淡水が海に戻り再び海水となるまでに、いかにうまく利用するかがポイントであるが、急流などによりすぐに海に戻ってしまう水も多いため、最大限に利用したとしてその限界利用率は100兆トンのうち20%だといわれている。日本の場合、急流が多いため15%が限界利用率だといわれている。

 つまり、大部分の人間が思っているよりはるかに資源としての水が少ないのである。にもかかわらず深刻な世界人口の増加とともに、生活の近代化がすすむにつれ人一人あたりの水資源の利用量は増える一方である。これらの事実を踏まえると、21世紀最大の課題は、地球上の全生物の生命の根源である水をどのように確保し、守っていくかということである。水をめぐる戦争が起きる前に、まずは世界中の人民のそれぞれが、この危機的状況をきちんと認識、実感しなくてはならない。そのためには、まずは政府レベルで世界的に水を浪費しない条約を結びつつ、それぞれの国において具体的な政策を展開する必要がある。たとえば、法的に水資源の保護を取り決め、工業的、産業的に使う水の量を大幅に削ったり、リサイクルを徹底させる、国民の意識を高めるべく、さまざまなメディアを通して訴えかけながら、生活排水の縮小や浄化設備の徹底などを実行し、下水の完全再利用を可能にするなど限られた淡水をできるだけ有効に使うための努力をみんなでしていかなければならない。

 人類および全生物の未来をにぎる物質、水。それは、独特の異常な性質を持ちながら地球を奇跡の星へと導いた。この魔法とも言うべき物質を私たちはどう使うのか。この魅力的な魔法を間違ってつかい、乱用することは私たちの命取りになるであろう。はたまた、その魔法を最大限に正しく利用するなら、地球はさらに栄え、そのときこそ本当に人間と自然がお互いを受け入れ尊重しつつ共存できる惑星になることであろう。


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