自然の化学的基礎

  生命の源・水 _その恵みの豊かさを探る_

                             s021186 北村和香子  

 現在の私達の生活において、確かに水は特別なものではありません。蛇口をひねれば毎日顔を洗って、お風呂に入れます。冷蔵庫には必ず飲み物があります。コンビニやスーパーへ行けば清涼飲料水が所狭しと並んでいて、選ぶのに一苦労です。しかし考えて見てください。身近にあるという事は、逆にいえば必要不可欠な物質だということです。母親の体内に誕生したその瞬間から、私達が水を利用しない日はありません。全ての動植物は、からだの70_80%が水分でできています。そしてこの体内の水分は、酸素や栄養を吸収しからだの隅々まで運び、蒸発熱によって体温を調節し、一定の温度に保ちます。寒さから私達の手足を守ります。風邪を引いたときに熱を発生させてからだにシグナルを送ることができるのも水のおかげです。私達は1日に2000グラムの水を失い、同量を摂取しなければいきていけません。水は生命活動を支える源なのです。

 

1.地球と水の特殊性

 地球表面の3分の2は海水、その平均深度は3800メートル。地球人である私達にとっては「生命の水」もありふれたものです。しかし宇宙に目を向けてみると、地球以外に「水の惑星」はちょっと見つけられません。まず地球型惑星である水星、金星、火星を比較しながら、地球の特殊性を明らかにしていきましょう。

他の惑星はどうして水惑星になれなかったのでしょうか。その違いは「太陽からの距離」と「惑星の大きさ」です。

* 水星…太陽直下の水星の地表温度は摂氏400度を超え、一方その裏側ではマイナス170度もの低温となる。こうした環境下では、水蒸気大気は凝縮されず、しかもその重力は原始大気を保持できるほど大きくはない。よって水星は大気を持たない。

* 金星…大きさも質量も地球によく似ているが、太陽に近いため現実には灼熱の星。表面温度は500℃。金星が受ける太陽光密度は地球の2倍程度。よって例え地球同様に海が形成されたとしても、地上温度がとめどなく上昇するために、金星の海は蒸発してしまう。

* 火星…大きさは地球の半分で太陽からの距離も遠い。表面温度はマイナス60℃。微惑星の衝突によって生まれた水蒸気はすぐにれいきゃくされ、雨や雪となって地表に落ち、氷河となる。地表が解けるほどの保温効果が得られない。金星と火星の大気の化学組成はいずれも炭酸ガス95_98%、窒素ガス2_3%でよく似ている。

 

では水惑星である地球の条件は…

* 地球…太陽からちょうどよい距離にあり、平均気温は15℃。またこの適度な距離が太陽からの放射エネルギーで水分子が水素と酸素に解離することから免れた。質量もまた水の存在に好適で、分子量18の水分子をひきつけ、蒸発して水蒸気となっても惑星空間に逃げず、降水として再びもどる循環を生み出した。水自身の特異性としては、その分子構造が特殊なために、分子間力が大きく、分子量が18という軽い分子でありながら分子量100ほどの重い分子の行動をとっているあげられる。水が分子量18の普通の分子であったなら、軽すぎて地球上では水蒸気としてのみ存在し、1気圧以下では、マイナス90℃くらいで沸騰し、氷点はマイナス110℃くらいであっただろう。

   このように地球に液体の水も、水蒸気も雲も雪も氷も存在するのは、地球環境と水の特殊なバランスによるものなのです。

 

2.生命の源

 38億年ほど前、私達の祖先である原始生命の素になったのは、隕石にも含まれている炭素、窒素、水素など太陽系のどんな惑星にもある平凡な元素でした。そんなありきたりの物質から生命が生まれたのは、地球に海という包容力に満ちた存在があったからなので。大きな波により、海の水にとけた物質が攪拌され、そのエネルギーによって海水に含まれた物質が化学反応を起こし、生命を誕生させたのです。

 普段水が私達に見せているのは、その特殊性の一面にしか過ぎないのです。

この写真はオーストラリア西部ののハメリンプール。ストラマライトという岩石が一面に広がっています。ストラマライトの岩石は、その表面に付着しているバクテリアによって作られ、成長しています。数十億年前にこのバクテリアが出現して光合成を行い、酸素を大気中に放出し始めたとされています。

 

次はアメリカのワイオミング州にあるイエローストーン国立公園で、高さ50メートルにも吹き上げる噴水や高音の池がたくさんあります。地球が誕生して間もない頃の環境と同じで、この水の中には硫化水素や二酸化炭素が含まれ、酸素のない世界ですが、この環境の中にも地球上最も古いバクテリアの仲間が生きているのです。

グレートバリアリーフ。水が長い年月をかけていかに豊かな生命を育んできたのかわかります。

3.破壊

 しかし我々は産業革命からわずか200年足らずで、生命の源を汚染し、もとにはもどせない状態にしてしまいした。汚染物質は50メートルプールにわずか1滴たらしただけでも、生物の生殖器や脳神経に影響を及ぼすとされています。

  水という素晴らしい恵みの重要性に無関心なまま、人間は海を汚し、海と同じ成分でできている自分の体内をも汚染しつづけています。  

    以上に短く途切れたコイの精巣(上)         オイルにまみれるあざらしと正常なオスの精巣

    

オイル汚染のひどい海岸

 

参考文献

「NHK地球大紀行2」1987 日本放送出版協会
「NHK生命 40億年はるかな旅1」 1994 日本放送出版協会
藤井陽一郎「変動する地球と生命の起源」1995 新日本出版社
HP
米スミソニアン博物館
米イエローストーン国立公園
オーストラリア観光局
NASA関連
その他  たくさんありすぎてわからなくなってしまいました。

 


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