人間をとりまく水とは

001193 小林 広美

 

 生活していくうえで、水に接しない人はおらず、当たり前のように水に囲まれている。水は確かに我々人間をとりまくありふれた物質である。しかし、それなくしては人は生きられない。その理由を水の特性、その力、そして人と水という観点から見ていくことにする。

 水という物質は水素と酸素から成り立つ分子化合物である。水の性質についてだが、水はあらゆる物質の中でもとりわけすぐれた特性を持つ。ひとつはその大きな溶解性にある。水は他のどの液体よりも物質を溶かすことができる。植物は土壌の養分を水分と共に吸収し、動物は血液・体液として栄養分を体内に運ぶことができる。これは人間ももちろん恩恵を与っている。次に表面張力も水の優れた特性として挙げられる。表面張力が大きいということは、人間がその体内に血液・体液を送り出すのに役立っている。毛管において、水は必要な養分を蓄えながら隅々にまで行き渡ることができる。これを毛細管現象という。また、熱容量もあらゆる物質のなかでアンモニアに次いで大きい。熱容量とは温度を一定に保つことである。例えば、人間はその70%が水で構成されているが、体温はほとんど変化しない恒温動物である。これは人間を構成する水の力にすぎない。そして、水の特性は熱伝導率にも見てとることができる。これは全液体の中で最高であり、生体における液状細胞のような小範囲での発熱反応をすばやく周囲に伝えることができる。また、融解熱の大きさは氷結しにくいことを示し、蒸発熱の大きさは動物では発汗による体温調節、植物では葉の過熱防止に効果がある。

 これらの特性の示す数値は他の物質や液体と比べて大変に優れた点である。しかし、それらはこれまでに挙げたような、生体に関してばかりでなく、我々の日常生活でも見られることである。エチルアルコールは水に自由に溶けるので、酒が人々に飲まれているわけであるし、分子間引力が強いために水はつるつるのガラスの上でも流れることができる。こうして述べたように水は突出した注目すべき性質を備えているのである。

 性質に加えて、水のもたらす力も驚くべき点がある。生体に深く関わっているのはもちろんだが、その環境にも大きく関係している。例えば、地表は水によって削られている。また、気象の変化も水のもたらすものである。気象に影響しているのは雲であったり、風によるわけだが、それらは海流が引き起こす現象である。水は、規則性のない物質で、そのために水の流れは不規則である。カオスやカルマン渦、ベナール対流などはその例であるが、これらが気象に大きく関与している。

 水は固体・液体・気体と形を変えて地球上に存在しているのである。そしてその総量は古代の時代から変わらず、ただ形を変えて絶えず地球を循環しているのである。

 最後に、水と人との関係について述べることにする。水の重要性は先に述べたとおりである。ここで人類の起源について言及するが、人間はそもそも水のなかから誕生したといわれる。原始の海は栄養分が豊富であった。そこから化合物が発生し、現在我々のからだを司るDNAの元ともいうべきものが生まれた。そして、その進化の途中で人類の祖先は海から離れるようになったのである。いわば、水は人間を原始の海で生み、我々をその囲む環境によって育ててくれる親である。ところが、今日ではますます人間の水離れが深刻になってきている。技術の進歩に伴い、水を汚染し、環境を壊してきている。私たち人間は水なくして存在し得ない。であるから、水はありふれた物質では決してなく、私たちが生きていくのに大切な資源である。今、我々がすべきなのはそうした事実を一人一人が認識し、身近な小さな事から努力すべきことである。それは例えば、トイレでは水を2度流さないだとか、油を家庭廃水として流さないという個人レベルの行動である。そこから我々人間と水との共存が始まるのである。

 


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