意識改革(「気候大異変@」を見て)
菊地 亮

 

 私は、このプログラムを見ていて、ドキッとしたところがあった。それは、将来の地球を二酸化炭素の排出量などを考慮して、シミュレーションした場合、「日本は将来、冬らしい冬がなくなる」という見解が出たときだ。「それは、もはや今年のことではないか。」そう思った。寒さに弱い私にとっては、今年の冬は快適であった。しかし、そうは言っていられない。この冬は、異常な暖かさである。エアコンをあまり使わなかった、真冬用のコートに1度も袖を通さなかった、などから身をもって感じる。このプログラムが主張していることを注意深く見入った。

 産業革命以降、大気中の二酸化炭素は、急激に増加した。気温も地球全体で平均0.6℃上昇している。Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC)では、世界が化石燃料に依存して、今のままの成長を続ければ、100年後、空気中の二酸化炭素は、現在の2.6倍の960ppmになると考えられている。仮に京都議定書に定められた5%の削減を先進国すべての国がこのまま取り組み続けたとしたら、860ppmに留まる。さらにもっと効率的にエネルギーを使えば、今の経済成長を続けても、700ppmにとどめることができる。この700ppmという濃度が地球シミュレータの基準になっている。そこで、100年後の平均気温を計算したところ、最悪の場合、地球の平均気温は、4.2度上昇することが分かった。これは、われわれに多くの変化をもたらすだろう。例えば、そのときの東京を例にとってみると、1月に紅葉の見ごろを迎える。4月には、初夏を思わせる日差しが照りつけ、5月の端午の節句には海開きが行われるだろうと予測されている。また、100年後には、夏の期間が2ヶ月増え、半年近くが夏になり、冬らしい冬はなくなってしまうだろう。私は、これらが100年も経たないうちに現実になりそうな気がする。上で述べたように、今年の冬は比較的暖かい。実際に、日本各地のスキー場では閉鎖したところも多い。また、お正月に東京でひまわりが咲いたなどのニュースも暖冬の異常さを感じさせる。さらに、2002年の高校の入学式の時には、桜が既に散り始めていた。着々と地球シミュレータの予想に近づいてきている。これを食い止めなければならない。

 

 また、地球温暖化に起因する異常気象の例は、ほかにも報告されている。2003年8月、パリをフランス観測史上最悪の熱波が襲った。普段の8月は、パリの日中の最高気温は、平均24℃程度だという。しかし、この年には、35℃を超える日が10日以上続いた。これは、普段アフリカにある、高温の高気圧がフランスに覆いかぶさったことによってはじまり、乾燥している上に高温の日が続いたために熱波が引き起こされた。これによって、高齢者を中心に多くの人々が脱水症状になり、15000人もの人が亡くなった。皮肉なことに、パリの人々は暑さ対策を知らなかったのだ。普段、北海道の夏くらい快適なので、冷房設備が無い家も多かったという。準備不足のために、被害がより大きくなってしまったことは否めない。2050年以降、世界各地で熱波が頻繁に起こると予測されている。地球シミュレータによると、熱波による死亡の危険性は、世界中で高まるそうだ。それは、とりわけ今まで涼しいとされた地域にまで危険が達するそうだ。例えば、東京では、熱波による死亡者数は、100年後には今の11倍にまではね上がるだろうと予測されている。世界主要都市の熱波による死亡者数の予測推移のグラフを見ると、緯度が高く、比較的涼しい地域で顕著であることが分かる。これも、パリの例と同じことが言えるだろう。これらの地域の人は、異常な暑さにまだ慣れていないのだ。赤道付近の国にもこの熱波の波は行くが、こういった所に住んでいる人々は、暑さには慣れているし、住居や衣料、食料などにおいて、暑さを解消するための工夫が昔からなされている。そのため、目立った被害の増加は少ないのだろう。しかし、比較的高緯度に住む、われわれは、急な異常な暑さに対して、からだは対応できないだろう。

 

 地球規模の気象異常は、熱波だけではない。このまま温暖化が進めば、熱帯低気圧が世界各地で加速するそうだ。2004年夏の終わり、ブラジルのサンタカタリナを今まで観測されたことがない、ハリケーン級の熱帯低気圧が襲った。これによって、建物45万棟が全壊または半壊し、500人以上の負傷者が出た。これは、気象予報官すら予測できなかった異常気象であった。元々、南米沖においては、低気圧は観測されたことがなく、呼び名すらなかったそうだ。起きてはおかしいことだったのだ。しかし驚くべきことに、地球シミュレータは、これを予測していたのだ。この事実からわかるように、地球シミュレータの予測は当たってしまうのである。その予測によると、世界各地で今後、豪雨の頻度が増えるそうだ。それは、量だけでなく、振り方が変わるそうだ。集中的な豪雨が町を襲うと予測されている。これらの異常気象を防ぐためには、地球温暖化を食い止めなければいけない。そのために、地球規模に考える必要は、必ずしもない。まずは、自分の身の回りのことから考えてもいいと思う。地球シミュレータの予測は当たる。そうすると、集中豪雨は来る。想像してみてほしい。今までに見たことがないような豪雨だ。多分、買出しに行けなくなるだろう。せっかく買った車も雨に吹き曝しだろう。不便でしょ。せっかく買った家も床上浸水なんてことになったら、家の中、びちょぬれ。気温37℃なんて、もう体験したくないよね。ウィンタースポーツといえば、やっぱりスキーでしょ。

 

 では、われわれに何ができるだろうか。たくさんあるだろう。まず、今使っている電化製品を省エネルギー型の電化製品と交換してみたらどうだろう。家庭から排出される温室効果ガスの内訳を見ると、電力が最大で、ガソリン、灯油、ガスと続く。このうち電力は、家電製品に使われていることがほとんどである。つまり、エアコンやテレビ、冷蔵庫などの電化製品を省エネルギー型のものと交換すると、電気代が節約できる上に、二酸化炭素の削減効果が得られるのである。それは、お金がかかってしまう・・という人、そんな人は、買い物をする際に、レジ袋を受け取らずに、マイバッグを持ち歩くのは、どうだろうか。日本のレジ袋の使用量は、年間25万トンと言われている。これは、日本全国で約313億枚、国民1人あたりでは、年間260枚も使っていることになる。このように数字に表すと、われわれが普段、いかに無意識にレジ袋にものを詰めているのかが分かる。実際に、最近では自宅から買い物袋を持参する、「マイバッグ運動」も盛んになっている。それに並行して、レジ袋を有料にする店も出てきている。温暖化を食い止めるには、こういった方法もある。それも面倒くさいという人、そういう人は、考えてみてほしい。われわれは、いままで快適な生活を求めて、環境を犠牲にしてきた。自然がいきなり裏切ったのではない。われわれが自然をコントロールしすぎたのである。そこで、快適さの優先順位を少し遅らせて、地球環境のことを第一に考えるときに来ているのではないだろうか。ポイントオブノーリターン、何をしてももはや戻れない年に徐々に近づいてきている。ポイントオブノーリターンを超えると、もう温暖化を食い止めることはできない。進行するのを見ているだけだ。自分たちや将来の子どもたちの生活のことを考えて、世界では、今、何が起こっているのかに敏感になる必要がある。


レポートに戻 る

講義資料に戻 る

「水のひろば」に戻る