男子高校生2人が洗面所で水を出しっぱなしにしながら話している
私が突如2人の前に現れる
私「バカヤロー!!水を出しっぱなしにするんじゃない!!」
高校生A(以下A)「え、すいません。ってか誰?水なんて地球上にありふれた物質だからいいじゃないっすか。」
私「バカヤロー!!水っていうのはありふれた物質じゃないんだ!!いいか、よく聞くんだ。地球は「水の惑星」といわれている。しかしこの豊富な水の惑星「地球」に存在する水のうち約98%が海水で、私たち人間は使えない。使える可能性のある淡水はわずか2%だけ。しかもその2%でさえ大部分は南極や北極などの氷や地下の深層水で、実際に使える淡水は地球上の水のわずか0.8%しかない。地球上の水が仮にバケツ一杯だとすると、私たちが使える水はわずか一滴。わずか一滴だ!もしその一滴がなくなってしまったら、我々人間は絶滅するだろう。水不足は石油や森林問題に比べて軽視されがちだが、水にも限界はあるのだ!!わかったか?」
高校生B(以下B)「まぁなんとなくは。でも今は全然問題ないんだよね?」
私「そんなことはない!!国や地域によってはすでに5億〜10億人の人々が慢性的な水不足に苦しんでいるのだ。世界各国の湖や河では面積が縮小したり干上がってしまったりいる箇所も少なくない。やはりそれらの危機に直面していない国々、とりわけ日本において、人々の意識の中の水に対するありがたみや水の持つ重要性は低いと言わざるを得ないのだ。島国であり火山活動によって隆起した多数の山の恩恵を受けた日本は、有数の河川と湖沼を持ちまたそれらから得られる水の生活用水としての安全性や用途の広さは、世界の他の地域と比べてみても群を抜いて高い。言い換えれば、日本のどの地域においても水道の蛇口をひねれば当たり前のようにきれいな水が得られる。そしてそれらのほとんどが飲料水としても利用できる。だから君たちの水への危機感が薄いのだ!!もっと深刻な世界問題として意識してもらいたい。」
A「は、はぁ。でも急に水を意識しろって言われてもちょっと無理ですよ。なぁ?」
B「確かに。水なんて無味、無臭、無色透明で、物理・化学的にも特徴がないし。もともと興味ないんですよね。」
私「何を言う!!他の物質と比べて水には何十もの特異性があるのだ。」
A「え、そんなにあるんですか?例えば身近なものだとどんな性質が?」
私「そんなに知りたいか?」
A「いや、別にそれほどまでは…」
私「なら教えてやろう!!」
A、B「…」
私「まず代表的な特長は融点と沸点が高いということ。融点が高いため大気を構成する分子のなかで、常温で液体になる唯一の物質なのだ。唯一だぞ!」
A「唯一ってすごいっすね。」
私「だろ?沸点が高いっていうのもおもしろい性質なんだよ。水っていうのは大きな比熱を持っている。1グラムの水の温度を1度だけ上げるのに必要な熱量(比熱)は1カロリーであるが,これはあらゆる物質中で最も大きいんだ。また氷を融かすにも1グラム当たり80カロリーという大きな熱量(融解熱)を必要とし,水を発熱させるには1グラム当たり536カロリーという,これまた例外的に大きな熱量(蒸発熱)を必要とするんだ。蒸発熱が大きいために熱を加えてもなかなか蒸発しない。実際,水は同程度の分子量をもつ液体の中では飛び抜けて高い沸点をもっている!水の状態変化に大きな熱量を必要とするということは,水が大きな蓄熱装置として働くことを意味している。これは地球の気候の温暖化をもたらし,また生命体の機能を維持するに必要な微妙な体温調節を可能にしている。どうだ?」
B「いやどうだって聞かれても。でも水はただの物質ではないってことは伝わってきましたよ。多分。」
私「そうかそうか。じゃあもっと水の素晴らしさを教えてあげよう。」
A「まだあるのか。」
私「ん、何か言ったか?」
A「いえ、続けてください。」
私「よし。もっとおもしろい性質を教えてやる。水っていうのは融ける時に収縮し、凍る時に膨張するのさ。すごくない?」
B「あの、説明をお願いします。」
私「そうだな。普通水以外の液体は固化すれば重くなって沈むのが普通なんだが、氷はというと…?」
A「浮かぶ。」
私「その通り!氷が水に浮かぶのは例外中の例外なんだよ。これは生命を維持するためにはとても大切なことなんだ。想像してみてごらん。もしも氷が普通の物質と同じだったら冬の海は大変なことになってしまう。海の表面が凍ると、それが次第に海の底へ沈んでゆき、表面に残された海も次々と凍ってゆく。そうなると海がすべて凍ってしまい、海中でも生物はすべて凍死しちゃうだろ?」
A「なるほど!これはちょっとおもしろい。」
B「そうだな。氷が浮かぶのは普通のことだと思ってたよ。」
A「他にも教えてくださいよ。」
私「おっと段々興味を持ち始めたな?私のおかげか。はっはっはっは!」
A「…やっばいいです。」
私「さぁ次行こうか。そろそろ休み時間も終わりそうだから最後のひとつを説明しよう!生物が存在するために水は欠かせない物質だということはよく聞くと思う。ただ注目してもらいたいのはそれ以前のことだ。水がなかったらそもそも生命は生まれていなかったかもしれないんだ。水はほとんどすべての物質を溶かすことができる。とくに無機化合物をイオンに分解して溶かす力は抜群である。水はまた結晶水や水酸基の形で他の結晶や鉱物と結合することもできる。まぁこれは本題ではないんだ。何がすごいって原始の海の様々な物質を溶かし込んでいて、それらが太陽の紫外線をうけて化学反応を起こし生命の誕生へと繋がったと考えられているのだ。水ってすごいよな。私達を生んでくれた上、今でも生きていく上で我々を助けてくれている。だが人類、特に日本人はその水の無駄遣いを繰り返し、水不足問題を悪化させているんだよ。人間として恥だと思わないか?少しずつでもいいから水への危機感を強めていけたらいいなと私は願っている。水はありふれた物質ではない!!わかってくれたかな?」
キーンコーンカーンコーン
A「やべっ、完全に昼休みだったこと忘れてた!!おい、お前まだ水出しっ放しじゃねぇか!!早く止めろよ!!」
B「ホントだ。危ない危ない。いやでも水って…意外とすごいんだな。なぁおっさん。あれ、消えた。」
A「どこ行った?謎だ。まぁこれからは少し意識してみるかね。それにしてもあいつ誰だったんだ?ってかどっから来たんだ?」
B「考えても無駄だぜきっと。とりあえず教室戻ろうぜ!…本当にあいつ誰なんだろう…」
参考資料