日本の国家プロジェクトとしてつくられた地球シミュレータは仮想地球に基づいて、雲の細かい動きなどから今後百年間の地球の気候を予想することができる。このコンピューターは地球を取り巻く大気や海を一億一千個の格子に分けて気温、風、海流を計算し、予想される二酸化炭素の濃度を入力して気候を予想する仕組みになっている。また、IPCC(気候変動における政府間パネル)によると現在の大気中における二酸化炭素の濃度は370ppmで、以前よりも平均気温が0.6℃上昇している。そして燃料を効率的に利用することに成功すれば百年後の二酸化炭素濃度は700ppmになるだろうと予想されており、この数値を基準値として地球シミュレータは計算している。地球シミュレータによると地球温暖化が原因で以下の事柄が発生する。
まず、熱帯低気圧の発生の増加があげられる。2004年の夏に南米のブラジル沖に温帯で発生した熱帯低気圧がはじめて現れ、大きな被害をもたらした。日本には2004年に過去最高の数の台風が上陸、2005年には北大西洋で十五個のハリケーンが発生、同年8月にはアメリカにハリケーン「カトリーナ」が上陸している。これらの原因は海面温度の上昇によって海水の蒸発が活発になり、大量になった水蒸気によって熱帯低気圧の勢力が増していることにある。
次に、気圧配置の固定があり、日本では将来、気圧配置が固定されて梅雨前線の北上が妨げられ、8月に入っても梅雨が明けないという状況が発生すると予想されている。また、雨量は極端になり、西日本では雨量が増加し、東北では減少する。豪雨の頻度も増して川の氾濫やがけ崩れもたくさん発生するとされており、中国ではこれに近い現象がすでに発生している。
砂漠化も温暖化によって活発になると予想されており、イギリスの生態系水文学センターはアマゾンの熱帯雨林の三分の二が百年後には砂漠になってしまうと予測している。だが、この地域は2005年にもうすでに大渇水を経験している。通常、大西洋上からの湿った空気がアンデス山脈にぶつかってアマゾンに雨を降らせるのだが、このときは気温の上昇によって大西洋上に上昇気流ができてしまい、海に雨が降ってしまって、乾燥した空気が下降気流としてアマゾンにまで運ばれた。また、アマゾンの熱帯雨林は二酸化炭素を樹木や腐葉土に貯蔵しているため、砂漠になってしまうと世界中で排出される8年分の二酸化炭素が放出されてしまい、さらに温暖化が進んで、悪循環を生むと考えられている。さらに、このような降水量の減少は食糧不足をもたらすとされている。
2003年にフランスを襲ったような熱波も多く発生するようになる。熱波によってその年フランスでは一万五千人死亡し、その多くが高齢者だった。彼らは脱水症状によって汗がかけなくなり、体温が急激に上昇して脳や心臓の細胞が破壊されてしまった。IPCCは将来、熱波による死亡の危険性が高まると予想しており、一年を通して同じ気候である赤道付近に住んでいる人よりも、赤道から離れている地域に住んでいる人のほうが気温の激しい変化に耐え切れずに死亡する危険性が高まると予想している。
高潮も地球温暖化によって発生する。高潮は暴風津波とも呼ばれており、将来多くの大都市を襲う可能性がある。アメリカはニューヨークに最悪カテゴリー4のハリケーンが来ると予想しており、CGを使ってそのとき発生する被害を予想している。また、バングラデシュは海抜が低いため、高潮が発生したときの避難方法などを一般の市民に広める活動が行われている。
さらに、地球温暖化によって感染症が深刻化する恐れがある。その一つにネッタイシマカが媒介するデング熱があり、温暖化によってネッタイシマカの生息地が北上することが予想されている。
それに加えて、将来住処を失う人たちが大勢いると考えられている。アラスカのシシュマレフ島では土壌の侵食の影響によって2009年までに全島民が脱出することが決定されている。しかし、移住先の土地が見つかってもインフラから整備をする必要があり、そのための資金は十分にない。しかし、インフラがすでに整っている地域に移住すると移住先の住民との間でいざこざが起きてしまうのではないかという心配もある。このように住処を追われてしまう環境難民は百年後には二億六千万人にまでのぼるとされており、移住先の住民たちとの間で起こる紛争などが懸念されている。
わたしはこの番組を見て、地球で起こる気候の異変にあまりにもたくさんの事柄が関係していることを知り、大変驚いた。わたしが想像していた以上に異常気象はとても複雑な現象で、自然は環境の変化にとても敏感なのだということを改めて知った。例えば、温暖化によって海面が0.2℃や0.5℃上昇しても、わたしにはそれがいかに大きな変化かはすぐに想像できないが、このような変化に自然が敏感に反応して今まで発生しなかった熱帯低気圧や熱波が実際に発生している。もともと自然に環境の変化が起こってもそれに順応する力がないのか、環境破壊によってその順応性がなくなったのか知らないが、現在、地球は緊急事態に直面している。今まで発生しなかったことを発生させてしまう自然は本当に驚異的な力を持っている。
また、異常気象が悪循環を招くことを再認識した。特に、アマゾンの熱帯雨林の砂漠化によって起こる被害は想像を絶するものである。住民たちは生活する家や食糧を無くし、本来森林が貯蔵している二酸化炭素が大気中に広まって地球温暖化はますます悪化してしまう。わたしは今まで温暖化によって砂漠化が起こる過程をよく知らずに、もともと存在していた砂漠がだんだんと広くなることを砂漠化と呼んでいるのだと思っていた。しかし、森林は大量の二酸化炭素を吸収するため、現在熱帯雨林である地域が砂漠になることは例えば草原が砂漠になってしまうことよりも重大な被害を地球に及ぼす。砂漠化を遅らせるため、熱帯雨林に生息する生命体をまもるためにも少しでも多く植林することが何よりも大切なのではないかとわたしは考えている。
また、化石燃料以外の燃料源をすみやかにたくさん開発すべきである。だが、それらの開発過程において環境破壊が進んでしまっては元も子もないため、自然の“驚異”の一部を逆に人間が利用している風力発電や太陽光発電などの効率をさらに上げることが一番であるとわたしは考えている。
さらに、人間が自ら環境難民という紛争の原因をつくってしまっているのは非常に残念である。科学技術は十分に発展した。これからは科学技術者たちに環境保全を優先して、それに役立つ技術の開発を進めていってほしい。そして、地球上の生命体を守ることを常に念頭に置いていてほしい。さらに、大都市に多大は被害を及ぼす高潮や洪水は驚異的な威力を持っているため、CGで最悪の事態を想定した映像をつくったり、国家的な規模の対策を立てたりして、地球が今置かれている状況をできるだけたくさんの人々に伝えることは必要不可欠であると思う。
自然は驚異的な力を持っているが、一方で環境の変化にもとても敏感である。人類を含む地球上の生命体を守るために、われわれ人間は自然に関するたくさんの情報を互いに共有したり、知らない人に情報を伝えたり、何かしらの行動をとる必要性に迫られているのだと強く感じた。