松橋美佳
水は一番身近な存在にあり、常に日常生活の中で無意識的に使っているものである。そして近年、水の問題は多く取り上げられている。特に体感しにくい地下水汚染は典型七公害の一つである。私達にとって有害性の実感が薄いので結果として公害の防止対策が低く扱われてしまっているのが現状である。現在、多くの地域で環境基準を上回っている地下水汚染が多く検出されている。我々の健康への害の影響にも密接にかかわっている地下水汚染の問題を個人的レベルからも重視していく必要が今とわれているのである。
<地下水汚染の現状>
地下水汚染の現状は深刻さをきわだたせている。環境省は、「地下水をきれいにするために」のパンフレットの中で、平成14年までに地下水汚染が判明したところは3719件あり、そのうちの2509件が環境基準以上である井戸が存在していたことが判明した。平成元年から増加する一方だ。汚染原因は工場における廃棄化学物質の貯蔵容器の破損や、ゴルフ場の建設の時にまきちらした除草剤、田畑にまきちらした農薬、有害な廃棄物の不法投棄、旧日本軍が製造した毒薬等が地下水に浸透している。廃棄物・工場・事業場は主に重金属(砒素・フッ素)や揮発性有機化合物をだす。生活排水・家畜排泄物・施肥などは、硝酸窒素、亜硝酸窒素をだしている。これらは人々の体に多大な影響を及ぼす有害化学物質(発がん性物質)であるものもある。トリクロロエチレンなどを誤って摂取すると肝臓や腎臓、中枢神経の障害が起こることで知られている。近年、日本のさまざまな地域で地下水汚染が発見され、身体への影響が危ぶまれている。2006年8月に環境基準の450倍も上回る地下水汚染が岩手県で検出された。北上市内にある後藤製作所で起こった問題である。2003年には環境基準の486.6倍のトリクロロエチレンが検出されたが、まったく対策はされず地下水汚染が続いている実態が判明した。また後藤製作所は県や市にも報告しないで公表もしなかった。また三重県では三重中西金属の工場敷地地下水から環境基準の2800倍ものトリクロロエチレンが見つかり、県は工場周辺の住宅地19ヵ所の井戸水の飲用をやめるように警告した。
<地下水汚染への対応策>
環境省は、地下水汚染の防止をするため、水質汚染の防止法にもとづいて水質測定を行い汚染原因の特定や汚染原因者に対して、汚染の浄化や未然の防止の指導を行っている。近年、独自に条例を定め事業者に汚染の調査や対策を求める地方自治体が増加している。事業者の取り組みとしては、自主的な調査や自主的な対策の結果を環境報告書という環境問題を提示する「サスティナビリティーレポート」(持続可能性報告書)の中で公表している。
<今私たちがいるところでできること>
私たちにできることで一番重要なのは水に対する意識の再確認ではないだろうか。シャワーを5分ぐらい浴びるだけで100リットル近くの水を地下水に流し汚染していることをどれくらいの人が認識しているだろうか。歯磨きをしているとき蛇口をそのままにしておくと3分間で18リットルもの水を流している。あたりまえの日常生活での水の消費は一人だけでも大量なことがこのことからも分かる。しかし逆に言い換えれば一人ひとりの少しの気遣いで価値ある水への再生にとって大きな一歩を踏み出せる。そこで水の上手な使い方として、食事の用意や片付けのときに蛇口を出しっぱなしにせずにこまめに使うことが好まれる。そして、お風呂の残り湯の半分くらいは掃除、洗濯、はき水などに利用すれば生活排水の削減につながる。水の存在意義のありかたを人々に理解させることが可能なのはまず水の汚染を体感させ、考える機会を増やすことだ。次世代の子供には学校などで積極的に水の問題を授業にとりこむべきだと思う。意識が行動へ変わったとき、地下水が価値ある水として復活し人々に恵みを与えるというサイクルが完成されると思う。地下水が人々に及ぼす影響をよい方向にするのも悪い方向にするのもこれからの個人、個人の自覚が大きくかかわっていくだろう。私たちは小さい取り組みを大きい成果に変えられる力があることを忘れてはいけないのである。地下水で汚染されていないところはもう限定されているかもしれないがわれわれの努力は無限の可能性をひめているのだ。
参考文献