「よりおいしい水を!」 VS 「雨水ヲクダサイ」

                          2000年5月14日

                        041484 徳山詩織

<a> 集めた情報

新聞記事---5月4日 朝日新聞「麦茶持っていきますか」
     5月5日 朝日新聞「雨を・・・」
Internet---http://www.lifence.ac.jp/k_library/miyamura.html
       「体によい水、おいしい水」
     http://www.netlaputa.ne.jp/~p-water/whatis.html
「よい水とは何か」
     http://www.ing-web.co.jp/cleaner.htm
「浄水器と整水器」
     http://www.ing-web.co.jp/bottle.htmhttp://isw.main.eng.hokudai.ac.jp/^roiko/hobby/coffee/water.hml
「ボトルウォーターあれこれ」
     http://www.kokufu-hs.kumamoto.kumamoto.jp/kumamoto/mizu
「日本の水について」
     http://isw.main.eng.hokudai.ac.jp/^roiko/hobby/coffee/water.hml
「コーヒーをおいしくする水」
     http://anakanews.com/990802water.htm
「"水は命"を思い知る中東の水戦争」

 

 

<b>今、地球上に何が起こっているか

「東京のお茶はまずい」という弟の一言で、私の家でも浄水器を購入した。アルカリ水(飲料用)、浄水(薬の服用)、酸性水(化粧水)の3つを自在に使い分けることができる。私自身はあまり実感はないが、「お茶や白米がおいしくなった」という声も大きい。2,3年前までは大工事を要した浄水器も現在では手軽に手に入るようになり、需要も高まっている。一方、インド西南部ラジャスタン地方は長期にわたる干ばつに襲われ、中東地域では水をめぐって国際紛争までおきている。そこで「よりおいしい」、「よりきれいな」水を求める日本人の思考を調べると共に、雨水さえも手に入らない他国の状況と比較した。

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 浄水器が一般家庭で使われるようになったのは、ごく最近のことである。10年前、私は静岡の小学校に通っていたが、水道水を飲むのは当たり前の習慣だった。しかし今、学校にペットボトルの飲料水を持参するか否かが、各地の小学校で問題となっている。

 神奈川県藤沢市の学校薬剤師会の調査によると、6,7年前から飲料を持参する傾向があり、4年前のO-157問題以降、家庭からの要望を受けて学校が認めるようになった。学校の水道水の安全性、カルキ臭さが問われる中、「飲料や容器の衛生に学校の目が届かない。」「空になったペットボトルを散らかす。」等の理由で、持参を認めない学校もある。又、「水道水は夏になるとぬるいから。」という爽快さを求める理由で持参するケースも多い。

 元来、日本の軟水は洗濯には不適だが飲料水としては飲みやすく、日本は水道水がそのまま飲める有数の国として有名だった。しかし現在では、家庭でも水道水を飲む事はなくなってきている。「お茶や料理に使う水も、トリハロメタン(発ガン性物質)などを除ける浄水器を通し、水道水をそのまま使うのは洗い物だけ。」という家庭も多い。水道水の問題点としては、工場排水、家庭排水、農畜産排水などが混じりあった汚染された水を浄化する為に、塩素消毒が有効とされ、多量の塩素が投入されている事、催奇性や発ガン性をもつダイオキシンが含まれている場合があることなどが挙げられる。

 水道水を何らかの形に自宅で加工する方法としては、主に2つある。

 浄水器---水道水のにおいのもととなる成分や、人体に有害な成分を取り除く。具体的には臭いや残留塩素を活性炭で吸収し、中空糸膜(細いストロー状の繊維の束)で濁りや細菌類を除去する。浄水場、配水過程で混入した雑成分を取り除くことはできるが、ミネラルバランスを考慮に入れていない為「おいしい水」とは関係ない。

* 厚生省によると「おいしい水」とは硬度(水に含まれるミネラル成分)が低いほうがよい。日本の水は硬度が低い軟水が多く、外国の水は硬度が高い硬水が多いとされる。

 整水器---電気分解によってアルカリイオン水を生成する。アルカリイオン水には消化不良や胃酸過多、慢性下痢などの治療に効果があるが、こういった効能の為の薬事法の承認、規制を通過している製品は少ない。

     *pH値から見ると、「おいしい水」とはph6.7〜7の微酸性〜中性の水で、体によい水は反対にアルカリイオン水とされる。

 市販のボトルウォーターとしては、主に次の3種がある。

  ナチュラルウォーター---特定の水源から採取された地下水を原水とし、沈殿、ろ過、過熱殺菌以外の物理的、科学的処理を行わないもの。

  ナチュラルミネラルウォーター---ナチュラルウォーターのうち、地表から浸透し、地下を移動中又は地下に滞留中に地層中の無機塩類が溶解した地下水。

  ミネラルウォーター---ナチュラルミネラルウォーターを原水とし、品質を安定させる為にミネラル調整や複数の水源から採取したミネラルウォーターの混合等が行われているもの。

これらボトルウォーターは日本の水道水からは出てこない、ミネラルを含んだ硬水である。

ミネラルとは水中に溶けているマグネシウムやカルシウムの総称である。硬水はそのまま飲むならばおいしいが、お茶やコーヒーには不向きである。ミネラルが茶の中のタンニンやコーヒーの中のカフェインといった、うまみ成分の溶出を妨げるからだ。又、うまみ成分をくまなく抽出するには水の中に酸素が多い程よいのだが、ペットボトルで売られているミネラルウォーターよりも出したばかりの水道水のほうがこの点でも優れている。以上のことから、浄水器や整水器が「おいしい水」の生成にかならずしも貢献しているわけではなく、また市販のボトルウォーターがすべての飲料水に適しているわけでもないという事がいえる。

 

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 次に、身近なところから地球規模の問題へと視点を広げると、インドでは西部のラジャスタン、グジャラート州、南部のアンドラプラデシュ州を中心に、干ばつが進んでいる。昨年7月から全く雨が降らず、毎日5,6頭の乳牛が死んでいく村もあり、被害者は5千万人と、事態は深刻である。2つあった溜め池が干上がったのは、一説には核実験の影響だとも言われている。昨年は6月から9月までのモンスーン期に一日しか雨が降らなかった為、ほとんど収穫できなかった。専門家は「森林の減少と地球温暖化による気候変動が干ばつの原因である。」と分析する。

 

 水不足は国際紛争までも引き起こす。レバノン、シリア、イスラエル、ヨルダン、といった中東の地中海側の地域は、ベカー平原やゴラン高原を除き、雨が非常に少ない。1948年に始まった中東戦争のうち、1980年のイスラエル軍によるレバノン南部の攻撃は、この地を拠点にイスラエルを攻撃していたパレスチナ人ゲリラ組織をつぶす為だった。だがその他の理由として、イスラエル政府はベカー平原の水がほしかったということが挙げられる。中東の国々では、「水の確保」が死活問題の安全保障なのである。

 中東の地中海側では今年、60年ぶりの水不足に襲われている。中東戦争の勝者であるイスラエル人は渇水期でも何とか平常通りの生活をおくれるが、負けたパレスチナ人やヨルダン人は悲惨だ。イスラエル占領下のヘブロンやベツレヘムでは水道からは2週間に1度、数時間しか水が出ない。一方ユダヤ人入植地では、プールに水があふれ、芝生も青々としており、勿論蛇口からはいつでも水が出る。

 西岸地域の貯水池や水源のほとんどはイスラエルの占領下にあり、パレスチナ人は水の管理権をもっていない。加えて、イスラエル当局はすぐ近くのパレスチナ人を後回しにし、国内の他地域に先に水を回している。パレスチナ自治政府によると、パレスチナ人はイスラエル人の3分の1しか水をもらっていない。こうした不正に怒るパレスチナ人の中には、イスラエルのパイプラインに穴をあけて水を盗む人もいる。

 ヨルダンもまた、水戦争の敗者だ。1994年にヨルダンはイスラエルと和解したのだが、毎年イスラエルから5200トンの水を受け取ることが条件だった。しかし昨年、今年の水不足で、イスラエルはヨルダンへの水供給を半分に減らした。

 ヨルダンやパレスチナ、イスラエルでは、出生率の高さや旧ソ連諸国からイスラエルへの移民で人口が増え、水の使用量も増える傾向にある。そのため、ヨルダンとイスラエルの国境にある死海にそそぐ唯一の大河であるヨルダン川の水量が減り、40年前に80キロの長さがあった死海は現在では30キロにまで短くなってしまった。

 中東ではこの他、チグリス、ユーフラティス川の水をめぐる紛争もある。トルコ、シリア、イラクの3カ国が関わっているが、クルド人の独立問題とからみ、相互にあまり仲がよくない。

 水をめぐる勝ち組み、負け組みという区分は、世界的な水問題にも当てはまる。国連によると、2025年には世界の人口の3分の1が水不足に悩む状態になる。そのほぼ全員が、発展途上の国々(中東、アフリカ、インド、中国北部)になりそうだ。その反面、地球上できれいな飲料水を確保しているのは日本や欧米などの先進国である。先進国には世界人口の20%である事を考えると、水に関しても、世界的に大きな貧富の差があることがわかる。

 

<c>人間はなにをすべきか

 日本のような先進国は、水道水をそのまま飲める環境にあるにもかかわらず、より「おいしい」水を求めて水の大量消費を繰り返す。その一方でインドや中東など発展途上の国では深刻な水不足に悩まされている。人道的立場から見ても、又将来の地球規模での水不足予測の立場にたっても、この水の「南北問題」は重大である。日本はその豊富な水資源に甘んじるのではなく、迫りくる水不足問題を自国の問題として捉える必要がある。毎日の節水を心がけるのは勿論、蛇口をひねれば自然に水が出てくるのが当たり前のわたしたちにとって、水の大切さを次の世代に教育するのも、またひとつの使命である。ダイオキシンやトリハロメタンなどの発癌物質が発見される等、日本の水道水も完全に安全というわけではないが、水そのものが不足している発展途上国と比べると、やはり日本は豊富な水資源を保持している。だが、今現在の日本の生活水準を引き下げることは不可能であるし、またその必要もない。「よりおいしい水」を求める試み自体、人間の命の源としての水の性質をよく見極めたものであるからだ。日本人の為だけ、人間の為だけでなく、地球上の生物全てを念頭においたものならば、現在の日本の開発もいずれ世界の水不足の解消に貢献するだろう。なぜなら、例え国際交渉が成功して、人々に平等に水が分配されるとうになっても、有毒物質を含む水では飲料水にならず、究極的な水不足は解消されないからだ。では、いま現在進行中の水不足にはどのように対応するべきか。一つの手段としては、世界共通の認識として水は命の源である事を確立し、その上で水を国際紛争の原因、又その解決の手段から外す事を考えるべきだ。めまぐるしく変化し続ける国際情勢に、生死に直接関わる水問題を持ち込むべきではないからだ。いずれにしても、水なしでは生きられない同じ生物としての人道的配慮が不可欠である。

 

<d>私たちは何ができるのか

水不足問題は世界規模の大問題だが、私たちはやはり日常生活で節水を心がけるのが第一だ。以下にいくつかの節水方法をしめした。

・ 歯磨き中、石鹸をつける時など、こまめに水を止める。
・ トイレの洗浄は一度にする。
・ 洗濯はお風呂の水を使う。
・ お風呂は何度も入れなおさない。
・ 蛇口がしっかり閉まっているか、確認する。
・ お皿洗いの時は、まとめてゆすぐ。
・ 学校や公園など、公共の施設でも節水を心がける。

これらのほかにも、日々水を利用する中で、有効な利用法を考える事が大切である。

 私は毎晩、鉢植えのバラに水をやる度に、命の源である水の存在を実感する。サン・デクジュペリが「星の王子様」の中で描いたように、一杯の水のおいしさを実感できる心こそが、いずれ起こるであろう地球規模の水不足の、解決の出発点になるのではないだろうか。

 

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