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日本各地の河川や海から、内分泌かくらん物質 (環境ホルモン) が、高濃度で検出されている。環境ホルモンは、生物の体内に入ると、ホルモンと似た働きをし、生殖機能などに異常を起こす疑いがある物質だ。専門家の調査では、海にすむ魚の「メス化」現象も、日本各地で複数の魚に見られ、この原因が工業排水や、生活廃水の中に含まれる環境ホルモンの影響ではないかと考えられていた。そして、「ノニルフェノール」について、
2001年8月に国が、魚類のメス化に影響を与えていることを世界ではじめて確認し、 生物に影響がないとされる「予測無影響濃度」(1リットルあたり0.608マイクログラム)を定めている。しかし、まだその他の環境ホルモンに関する国の基準値はまだないのが現状である。
下水処理場で処理され川に流す処理水には、貴金属など40項目があるが、環境ホルモンなど新手の化学物質に対する規制がない。国の調査では、処理場に入った環境ホルモンの1割が川に戻されるという。長崎県での、2000年度の調査で18地点から、環境ホルモンとして疑いのある物質が17物質検出された。調査は、国が98年度と99年度に行った全国調査の検出範囲を超えるものはなかったが、諌早市の西大川では、「ノニルフェノール」が国の「予測無影響濃度」を超え、1リットルあり2.9マイクログラム検出された。引き続き、2002年度まで県内約120ヶ所で調査を予定しているという。そして2000年度の愛知県の調査では、大気中に1物質、水環境では、3物質が98年度の全国調査の最高濃度を上回った。水環境の調査は、河川7地点、海3地点で、33物質を対象に行われ、水質調査で13物質が、底質調査では11物質が、水生生物調査では8物質が検出された。日光川では、98年度の全国調査の際、「ノニルフェノール」が高濃度で検出されていた。今回の調査では、そのときの濃度に比べて大幅に減少したが、国の「予測無影響予測値」は上回った。2001年11月には、福井県敦賀市で民間産業廃棄物処分場の周辺の水から、「ビスフェノールA」という環境ホルモンと疑われる物質が、水1リットルあたり、1万1千マイクログラムの高濃度で検出された。国内の処分場などからこれまで検出されたのは、最大で約3000マイクログラムだという。
一方で、茨城県つくば市の物質・材料絵研究機構では、環境ホルモンと疑われる物質を、酸化鉄の微粒市に吸着させて水を浄化する技術を開発した。これまでの、活性炭などでろ過する方法よりも短時間に大量の水を扱うことができるのだという。この酸化鉄の微粒子は、再利用が可能であり、敦賀市で検出されたのと、同じ物質である「ビスフェノールA」の溶液で実験したところ成功した。
日本が、世界ではじめて魚類のメス化と、環境ホルモンとの因果関係を確認したということに、とても驚いた。一見すると、日本がいち早く環境ホルモンの研究に取り組み、環境問題に対して最先端で取り組んでいるように思えたからである。私の中で、日本は、環境問題の対しての取り組みが遅れていて、日に日に大きな問題になっているように感じていたのだ。だが、考えてみると、環境ホルモンと魚類のメス化との因果関係を世界で初めて明らかにしたことは、日本で環境ホルモンが大きな問題になっているからなのだともいえる。しかし、その研究結果は、世界的にも注目を集めているのだという。だとしたら、それが世界中での研究を、もっと進めてくれることになるかもしれない。
このような研究によって、環境ホルモンの影響をもっと明らかにしていくことが、第一に人間のするべきことであると思う。日本では、今のところ67物質が環境ホルモンと疑われる物質としてあげられている。今のところ、環境ホルモンは、人体への影響など、はっきりしていないことが多いといえる。今現在も、世界中で、研究が行われて入るが、もっと研究が進むことで、それぞれの環境ホルモンが、生物や環響に与える影響が明らかになってくるであろうし、魚類だけではなく、他の生物への影響がわかってくるであろう。短期的な影響だけでなく、長期的な影響も含めて、はっきりさせるべきである。そのような研究で、環境ホルモンと、生態への影響の因果関係が見えてくれば、将来的に環境ホルモンを規制する世界的な基準を定める根拠ができる。そのような明確な根拠を元にした基準ができることで、国やそのような物質を扱う企業が、規制を守ることになり、河川の汚染や大気の汚染を防ぐことができるだろうし、水道などの安全基準ももっとてきかくなものになるであろう。また、そうした基準ができると、検査なども厳しくなり、私たちの元へも、明確な数字として、情報が入ってくることになり、安全への信頼も高まるといえる。
そして、第二に、現在使われている、環境ホルモンと疑われている物質に変わる安全なものを代替品として、開発することである。例えば、少し前に、塩化ビニ−ルが、子供のおもちゃに使われていることが問題になったことは、覚えている人が多いと思う。塩化ビニール製のおもちゃには、プラスチックを軟らかくするための可塑剤が添加されている。これが、環境ホルモンとして疑われていて、乳幼児が口に含んだ際に危険とされたのだった。塩化ビニールに代わり。軟質塩化ビニールや硬質塩化ビニールのような新しい素材を使うことが提言されてきた。また、現在も、工業用洗剤に含まれる、界面活性剤などが、環境ホルモンを含んでいることが疑われている。このように危険とされる物質に規制をかけるとともに、その代わりとなる新たな安全な素材を開発していくことを推奨していく必要があるであろうし、危険な物質が使われているものについて女王をもっと公開していかなければならないと思う。
第三に、茨城県で開発された環境ホルモンを除去する水の浄化システムのように、すでに汚染されてしまった水を、浄化するシステムを実用化できるようにすることも必要であると同時に、下水道の施設をより整備することも大切だろう。そうすることで、今現在、汚染されている水、特に人々の生活に使われる水の水源となる河川などを、効果的に浄化していくことができ、汚れている水をそのまま自然へ返さないですむようになる。そのような、開発や研究には多額の研究費がかかるであろうし、それを実用化していくためにも、多額の費用がかかるであろう。しかし、費用を理由に私たちの生活が危険に脅かされる事があっては、ならないと思う。
さて、環境ホルモンを少しでも減らし、安全に暮らしていくために、私たちが、今いるところでできることは何であろうか?
まずは、私たちが、環境ホルモンについて、知ることであろう。私たちは、新聞などのメディアで報じられているのを目にしても、どこか、遠くの出来事のように感じてしまっているように思う。しかし、実際、環境ホルモンの影響は、私たちの身近でおきていることだと知らなければならない。それには、まず、どのような物質が環境ホルモンであるのか、どのようなところに使えわれているのか、といったことを知るべきだと思う。しかし、環境物質と疑われる物質は、日本では67物質にも上る。一般人、まして化学の知識のない人には、あまりなじみのない物質ばかりであるため、それらすべてを知ることは難しいかもしれない。やはり、それには、企業や国が、もっとわかりやすい形で、人々に情報公開していくべきだと思う。
次に私たちにできることは、一人一人が、生活レベルで、なるだけ環境にやさしい生活を心がけることだ。例えば、洗剤を必要以上に使わないことや、環境に負担の少ない洗剤を使うこと、今では、洗剤を使わないですむ洗濯機なども販売されている。食器を洗う際に、ひどい汚れは広告や、新聞紙などで一度ふき取ってから洗う。また、ごみの分別方法を守る。このように、自分が使うものを、なるべく汚さずに返すことを心がけることで、少しずつ、河川の汚れなどが、改善される。
そして、次に、教育である。これは、学校教育も含めて、環境教育をもっと広めるべきであろう。例えば、自分たちの使う水は、どこから来て、どこへ行くか、ということを知っている人は、どれくらいいるのだろうか?あるいは、自分たちの出したごみは、どうなるのか、ということも知っている人は意外に少ないだろう。そのように、身近なことを学習することで、自分自身の問題としての環境への意識が高まると思う。そして、水を大切に使わなくてはならないこと、水をなるべく汚さないで返すこと、ごみの分別方法、ごみを減らす方法などについて、教育していくことが、将来的に自分たちの安全を手に入れることにつながっていくのだと思う。以上のことを実現するためには、自治体や国へ働きかけていかなくてはならないと思う。しかし、実際に環境団体に入って、直接働きかけをすることは、多くの人にとって難しい。そこで、私は、せめて選挙に行くべきだと考える。環境問題への取り組みを掲げる候補者に一票を投じることが、まず私たちにできることだと思う。それには、普段から、環境問題について関心を持ち、情報を手に入れていく必要があるだろう。
河川に住む魚たちが、メス化しているが、人体への影響は、まだ明らかではない、という専門家がいる。果たして、本当にそうなのだろうか?いつも、何か、私たち人間に、良くない影響が出る時、その前触れとして、海にすむ生物や、小さな生き物たちに影響が出てきた。今は、その前触れのような気がするのは、私だけであろうか?私たちは、本当に安全に暮らしているといえるのだろうか?では、その安全を脅かしているのはいったい誰なのか?私たちは、私たち自身で自分たちの安全を脅かしているのではないだろうか?
私たち一人一人が、自分たちの安全にもっと関心を持たなくてはならない。そして、将来において、安全な暮らしをしていけるようにするには、今から、そのために、一人一人が暮らしを見つめなおし、環境への取り組みをはじめることが大切なのだ。
<参考>
−インターネット−