水関連分野での環境問題への取り組み

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  地球規模の問題である環境問題がしばしば話題に上るようになってしばらく時間がたった。環境問題は人類を含む地球上で生息する生物が今後も生存を続けていくために、避けて通ることのできない問題である。自然は本来的には自らバランスをとって、活動を続けている。それは基本的に動物と呼ばれるものも同様であろう。しかし、自然を完全にはコントロールできないにしろ、自然全体のシステムに影響を与え得るだけの知恵・力を持った人類が誕生し、自らの利便のために環境を歪めて、今や環境システムの破壊、さらには地球の崩壊までも予見できる段階にまでもってきてしまった。その原因は軍事的・政治的・経済的なものなど様々であり、またそれは当然のことであるが、環境の破壊・地球の破壊を目的としたものではない。しかし、現実に環境の破壊はおきており、それを引き起こしたのは人間である。そして、その影響を受けるのもまた人間であり、地球上に生息する生物である。「人間のエゴで環境を壊してきた。その責任をとるべきだ。」「他の生き物が可愛そうだ。」そういった議論は事実であるし、正しいともいえる。ただ、そういった個人個人へと届きづらい、不特定多数に対した(少なくともそう受け取られてしまうことが多い)罪悪感などのマイナス要因を叩く議論は、ある程度のモチベーションはあげることができるが、根本的な個人個人の変化、そして行動には繋がりづらい。それよりは現実に起こっている事実としてその情報を提示した上で、今環境を守ることが人類(さらにいうなら現在生息する自分達)の利益となることを明確にすることがより効果的なのではないか。それは昔から続いた人間のエゴの延長なのであろうが、事実人間の最大のモチベーションは周りの人間などすべてのことを考えた上での自分の利益なのだから、それを割り切って前提とした上での議論が必要である。それは国際協力のフィールドで国益を考えない二国間援助など本来的に成立し得ないのと同じ様に、善に見える論で本当の動機を覆ったりせずに、本質にしっかり目を向けて、その問題への取り組みが結果を出し続けるには、個人個人の利益が形成する社会の利益にかなう必要があるということを念頭に置き行動することである。そこで、本レポートでは実際に環境問題に取り組む団体の集まりである「世界湖沼会議」と、企業の販売利益の側面からの環境問題への関わりとして「三洋電機開発の、洗剤がいらない洗濯機」の二つを一消費者、一市民としての学生・主婦の声を取り入れた上で見ていく。

   2002年11月11日、大津市にて第9回世界湖沼会議が75カ国・地域の約3600人の参加を得て開催され、そこでは市民の意見を取り入れる姿勢が強く見られた。今回の会議では市民参加とその役割の重要性が改めて焦点となり、市民が研究者らと同じ土俵で議論を交わした。正式な宣言は27日に発表され、そこでは市民の意見を最大限に反映する形で、湖沼環境を「健全な状態に再生していくことが必要」から「持続可能な状態に緊急に再生していかなければならない」と現状を厳しく認識する形に変わっていた。今回の第9回世界湖沼会議を見ると、上のレベルの環境問題への対応として、序々に市民に向けて開かれてきたといえる。だが、国際湖沼環境委専務理事の小谷博哉さんは、市民は湖沼保全や文化など数多くの発表をしたが、人数を含めた幅広い住民の参加は不十分であった、とコメントしている。また同氏は、行政は住民に対してまだ開かれていない。それを変えるには職員一人ひとりの意識改革が必要と述べている。確かに、熱心な市民が環境問題に対して参加する人数も増えてきたし、上のレベルへの影響力も強くなりつつある。しかし、一番重要なのは、その他を形成する大多数の比較的無関心な市民をどれだけ環境問題に対して関わらせていくかである。

主たる消費者である比較的無関心の市民を環境問題に対して関わらせていく方法はいくつか考えられる。ひとつは関心が強い人が、自らの言葉で、じかに話をすることである。例えば、守山市の環境団体「豊穣の郷赤野井湾流域協議会」で、湖沼会議の関連行事で国内外のNGOらを招く会議を開催し、そこでイベントを手伝ってくれた語学ボランティア52人のうち20人が正会員になった。メディアも効果的ではあるが、実際に身近で活動をしている人の声をじかに聞くことが一個人の関心・関わりを強めることに繋がるのだろう。

  もう一つの方法としては、先に挙げた様に個人の利益を前提に据えた上での企業の戦略である。一般的に、環境を大切にすることは“良いこと”とされ、イメージも良い。その点から付加価値が生まれる。それを企業が利用するのである。消費者的には少しなりとも環境保護に貢献でき、企業側としても環境保護と共に利益となり、双方の利益となることができる。また、環境に良いという事は自然に近いものであることが多く、使用の際の経済的コストも抑えられる場合が多い。また、当然環境に良いという事は人体への悪影響も少ない。この方法での難点は開発、制作に高い費用がかかってしまうため、使用コストは安くとも、モノそのものが高くなり、一般的な消費者には手が届かないものになってしまうことが多い、という点である。対策としては、政府がその様な製品・企業に対して補助金を出し、販売、並びに環境にやさしい製品開発競争を促す事である。この例としては、豊田自動車のプリウスが挙げられる。この車は政府からの補助金が出ており、使用コストも安く済むが、まだ購入時の金額そのものが高く、一市民の一ドライバーとして私も手が出せるものではない。これには更なる開発によるコスト削減を期待するばかりである。

  しかし、環境にやさしい製品は必ずしもすべても人間の利益となるものでないことも事実である。2001年8月に三洋電機が発売した洗濯機「超音波と電解水で洗おう」は、それぞれの立場による利益の食い違いから、環境にやさしい製品ではあるが激しい論争、証明合戦が行われている。この洗濯機は水道水を電気分解して発生させた活性酸素と次亜塩酸で洗浄、除菌する「洗剤ゼロコース」機能がついており、一日着た程度の汚れなら約一時間かければ汚れが落とせるとアピールしている。(資料参照) また、このコースで対応しきれない汚れに対しての標準コースも設けている。この洗濯機の売上は好調で、全商品の中で売上一位を記録する量販店も出たほど。これを受けて洗剤業界は大変な危機感を覚え、独自に実験を行い、「長時間の洗濯で繊維がいたみやすく、色あせしやすい」「汚れが再付着する」などと欠点を数え上げる。(資料参照)ここには、それぞれの利害による合戦があるが、この洗濯機が環境に対し、今までのものと比べて優れていることは確かで、消費者は9割が満足という調査結果が出ている。この洗濯機が好評な理由としては環境にやさしい点も当然含まれるが、他に面倒な洗剤を使わずに済む、健康に良い、等の単純な消費者の利益が大きく存在する。これらのいくつかの点で、この洗濯機は企業側としても、消費者側としても利益があり、この普及は環境に対して大きな利益となる。この様に、企業側と消費者側との利益を追求したところにある環境問題への対策方法も考えられるのではないか。しかし同時にこの場合の洗剤業界の様に利害が対立するケースも少なくない。企業の環境への考慮・対策の際には必ず、世界規模で成り立っている経済のバランスが問題となってくる。だが、環境への考慮を怠った製品、もしくは根本的に環境に悪い製品は廃れていく傾向ができており、時代に合わせた製品が求められるということだろう。補足までに、このような状況の中でも、洗剤需要自体は大きく減る傾向にはない。この背景には、消費者の洗濯習慣の変化があり、日本石鹸洗剤工業会の調査では、91年から00年にかけて一週間の洗濯物の量は3割増え、99年のライオンの調査では「下着以外でも一度着た物は洗濯する」が64%を占めた。この結果に対する評価は別として、このような消費者側としては無意識な生活習慣がまた、大きく環境に影響をもたらしていることも意識されるべきことである。

  人間は実際にことが起こり、その状況におかれてみないと、事を実感をもって理解することのできない生き物である。ただ、基から環境を破壊したいと願う人間はいないし、それは誰の利益にもなるものではない。行政レベル、そして民間レベル、一個人のレベル、様々な面から環境を意識的に捉えられるように考え、一人一人に無理がかからないように、一人一人の利益となるように環境問題と関わっていけるような環境作りが大切である。20年後の地球も、100年後の地球も想像し、実感を持って自分に受けとめるのは難しい。しかし、20年後、100年後に自分であったり、自分の愛する人であったりする人々が苦しむことは誰の望むところでもないし、誰の利にかなうものでもない。それを防ぐためには今からの対応が求められていると分かっているのであったら、そう行動するのが務めであると同時に利益である。後で後悔してももう遅いのだから。

 

 

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