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「水の惑星地球」。地球はその表面の3分の2が水に覆われている。水は融点や沸点が非常に高い。地球の気温(平均15℃)において、ちょうど氷・水・水蒸気の三態変化(状態変化)をする。平均温度3°Kという宇宙において地球が極めて特殊な環境にあることを考えると(大変暖かいといえる)、この地球の気温において水が三態変化をするということは大変重要であり、奇跡とも言えるのではないだろうか。地球のような海を持つ天体は大変珍しく、今のところ他には知られていないという。
我々の生活において最もなじみの深い物質とも言える水。しかしそれゆえ、我々はついこの水の存在を当然のごとく考えてしまいがちである。地球の生命の誕生と進化は水の存在に依拠している。人間の体は60%以上が水であり、水なしでは生きてゆけない。地球上のあらゆる生き物は、水なしでは生きられないのである。ところが、地球表面にある水の97%までが海水である。海水は飲料水にも生活水にも全く適していない。残りの3%が淡水であるが、この3%の水も水蒸気や、地下深くに潜む伏流水や地下水、南極や北極の水や雪など、ほとんどは現実に使用不可能な状態で存在している。これらを差し引くと、人が直接使用できる水は全体のたったの0,0001%に過ぎないという。さらに、この0,0001%の水を地球上の全ての生物と共有するということになると、人間が使える水はもっと少ないことになる。 つまり地球上の56億人の人間皆が、このわずかとも言うべき使用可能な水に頼っているのである。
しかし現在ではこの水を巡って様々な問題が浮上している。中でも最も重大なのが、「水資源の不足」であろう。ここで「不足」という場合、現時点での供給が間に合わないという意味での「不足」と、将来的な意味での「水資源の枯渇」という意味を含んでいる。
当然地球上における水の総量は一定であるから、「水が足りない」というのは、「我々人間が使うことの出きる水が足りない」ということを指すと考えられる。ここでこの「水が足りない」ことに関して、その主な原因として1.我々人間の水使用量の急激な増大 2.我々の無責任な水使用による水質汚濁の二つが挙げられよう。ここで“我々”という言葉を用いたが、実際に水の大量消費が行われているのは先進国においてであり、開発途上国においては現在でも深刻な水不足に直面している地域が多くある。例えば、日本人は一人当たり1日3トン、アメリカ人は6トンの水を使っていると言われる。お風呂や水洗トイレ、工業用水などを含めると、これほど多くなるのである。これに対して、アフリカ人は一人1日10〜100リットルの水で生活していると言われる。先進国の人々は実にアフリカ人の100倍もの水を使っていることになる。前述の1,2を考えてみると、地球上の生命にとっての重大な危機ともなる水資源枯渇の原因は、実は先進諸国の後先顧みない経済拡大志向と市場主義、もしくは工業化によってもたらされた弊害であるとも言えるのではないか。
1に関して言えば、1950年以来、世界の年間水使用量は3倍以上に(一人当たりの水使用量は1,5倍)増えている。農業、産業、都市での際限ない水需要の増加によって、地下水位が低下し、湖沼が縮小し、湿地が姿を消しつつある。今後地球上の人口はますます増加すると思われ、さらに生活水準の向上に伴って世界の水需要が人口増加率を上回るペースで増加している。実際に、1970年以来世界人口が18億人増加したため、世界の一人当たりの水供給量が3割以上減少している。現在、26カ国(合計人口2億3200万人)が極端な水不足に悩んでおり、水逼迫国と呼ばれている。また80カ国で水の供給が不十分で、世界の人口の約40パーセントが日々の水の確保に苦しんでいる。多くの水逼迫国があるアフリカでは、深刻な水不足に見舞われる人口が2010年までに4億人に達すると予想されており、これは予想されているアフリカ大陸の総人口の37パーセントに相当する(地球は今参照)。国連人間居住委員会のワリ・ヌダウ人間居住センター事務局長は、「今世紀の戦争は主に石油が原因だったが、21世紀の政治的、社会的戦いは水をめぐるものになるだろう」と述べている。また、ここでは詳しくは触れないが、水の問題においても先進国と途上国とでこのような大きな格差が存在することも解決すべき重要課題であると考える。あるデータによると、“途上国における病気の80%の原因は汚水・世界人口の50%には下水施設が未整備”ということである(世界の水問題参照)。
2に関して言えば、限りある水資源は我々の無責任なその使用によって急速に汚染されつつある。生活廃水による河川の水の汚染、工業活動による地下水の汚染。本来、河川の水や地下水は飲用に適した水質を備えているはずであった。現在途上国において多くのこうした水源の水は、とてもではないがそのままでは飲めるような状態ではないだろう。河川の水の汚染は、飲用できなくなるという直接的な被害をもたらすだけでなく、その河川の生態系を破壊するという被害をももたらすことになる。これは単なる水の問題にとどまらない環境破壊であるという点で重大である。“淡水魚の20%の種は水質汚染により絶滅の危機・地下水の過剰汲み上げにより、砒素汚染が増加”ということである(世界の水問題参照)。また、生活廃水による河川の汚染ということに関して言えば、例えば、米のとぎ汁を1リットル流した時、600リットル(600倍)の水で薄めないと魚が棲める水質にはならないという。牛乳は1万5000倍、てんぷら油は20万倍である。マヨネーズにいたっては、何と24万倍の水が必要だそうである。ただし、これらは比較的汚染に強いといわれるコイやフナに対する数値であって、アユやヤマメなど清流に棲む魚が生きていけるには上表の何倍もの水量が必要なのである(地球は今参照)。
このような中、これまでに1992年に地球環境サミットなど、世界の水問題に関連するいくつかの会議が開催されてきた。1996年には国際機関・学会等が中心になって世界水会議(WWC)が設立されている。また、1998年には、フランスのシラク大統領の提唱により、「水と持続可能な開発に関する国際会議」もパリで開催されている(世界水ビジョン参照)。しかし未だその成果は不充分であり、今も地球の水資源は大量消費され、汚染にさらされている。限りある地球の水資源を守るため、1.大量消費を避ける 2.できる限り水を汚染しない、という両面から考えることが必要である。そのためには、水に関する知識を広めること、地球の水資源の危機を知ることが大切である。なぜなら、水を汚染し、無駄使いしているのは我々自身だからである。
「水の惑星地球」がその名にふさわしい美しい姿を保ちつづけることが出きるかどうかは、地球上に生活する我々一人一人の行動にかかっているのである。
参考資料
a.「水web/水と地球」 http://www.secom.co.jp/mizuweb/tikyu2.html 2002.1.28アクセス
b.「世界の水問題」 http://www.idi.or.jp/vision/wwv-02.htm 2002.1.28 アクセス
c.「世界水ビジョン」 http://www.idi.or.jp/vision/wwv-01.htm 2002.1.28アクセス
d.「地球は今」−水資源の危機 http://www.ecology.or.jp/earthnow/9808.html 2002.1.28アクセス
e.「地学教室」−地学副読本http://isweb34.infoseek.co.jp/school/georoom/21mizutaiki.htm 2002.1.28アクセス
参考資料内容概略(アルファベットは上記参考資料に対応)
- a:地球上の水の状態について
- b:世界での水をめぐる問題・紛争・弊害
- c:水問題をめぐる世界の動き
- d:水に関する様々な問題・データ等
- e:水の特性