水質汚染について

V4F4

 

  地球環境問題には、大気汚染、ゴミ問題、地球温暖化など代表的な問題があるが、水質汚染の問題も大きな環境問題の一つである。人間はこれまで、無限に廃棄物を海、川、湖に捨て、家庭のゴミや工場からでる廃棄物はもちろん、使用済みの核燃料までが川や海に沈められてきた。しかしゴミを処理する時にはカドミウム、PCB、ダイオキシンなどの有害物質が発生し、工場排水には水銀、鉛、銅などが含まれている場合がある。またゴルフ場の美しい芝を維持するためにまかれる農薬には、有害物質がたくさん含まれている。もともと殺虫剤・除草剤のためにつかわれる農薬は当然生物にとって有害である。農薬などで土壌が汚染され、次にその土の中を流れる地下水が汚染され、地下水が川や湖に流れ込み、はては海にまで広がっていくのである。本来、川や海は微生物が汚染物質分解してくれることによって汚れを浄化する力をもっているが、一定量を越す排水が流れ込めば浄化が間に合わない。このため現在世界中の多くの川や海がひどく汚れてしまっているのだ。

 水質汚染は周辺の生物、また自然環境に様々な悪影響を及ぼすが、どのようなことがおきるのか、クロースアップしてみた。まず川や海の汚染は当然、そこに住む生物に大きな害をもたらす。住みかの水が汚れてしまえば魚や貝は生きられない。たとえばヨーロッパを流れるライン川では1890年には15万匹のサケが水揚げされてしまい、1958年には流域の工場から流れる排水のため、ついに一匹もいなくなってしまった。また排水に含まれる栄養分によって藻などが以上に繁殖して酸素を独占し、他の生物が死滅してしまうケースもある。メキシコ湾には、ミシシッピー川からリンを含む大量の化学肥料が流れ込み、リンを栄養分とする藻が異常繁殖した。この藻が酸素を独占したため、結果他の生物が酸素が行き渡らず、湾から魚が姿を消すという状況になってしまった。

 水質汚染は川や地下水に限らず海でも深刻な問題になっている。海の汚染は海上保安庁が確認した結果、汚染のおよそ半分が油によるもので、その約8割が船舶から出ている。最近では1997年、重油1万9千キロリットル積載したタンカー、ナホトカ号は、隠岐島沖で荒天のため船体が破断し、海上に重油が流出した。流出した油は福井県沿岸を中心に島根県から秋田県まで、日本海側1府8県に漂着して海岸を汚染した。このような事故で最大の犠牲を強いられるのは現場の周辺に生きる海の生物たちである。たとえばウミスズメやウトウなどの海鳥は、油で汚れると羽毛の防水、保温機能が低下し衰弱してしまう。この事件で全国で1300羽が回収されたが、被害総数はその20倍とも言われている。

  水質汚染の被害は川・海の生物たちだけにとどまらない。汚染の原因をつくっている我々人間にも影響を及ぼす。例えば、日本でも戦後しばらくまでは殺虫剤として使用していたDDTという有害物質があったが、これが体内に取り込まれると肝臓障害をおこしたり、ガンになったりすることが判明した。そのため先進国の多くでは使用が禁止されているが、途上国ではいまだ農薬にDDTが使われており、このDDTが地下水を通じて周辺の川や海を汚染している。インドの川でも魚の体内から高い濃度のDDTが検出されている。

 

 水質汚染で最近注目されているのがブラジルのアマゾン水系の水銀汚染である。水銀汚染、というと日本でおきた水俣病を彷彿とさせる。アマゾン川の上流にはガリンボという金の採掘場があり、トカンチンス川、シングー川、タバジョス川、ダディラ川の流域には金鉱が集中している。砂金を集めるため、精錬するのに水銀が使われるが、この水銀は採掘現場で使われるだけでなく、大気に拡散したり、地面や川に流れ出て環境に放出されつづける。アマゾン川流域では3ppmをこえる水銀を含む魚が報告されており、金採掘をしている場所より100km以上も下流の漁民に平均10−40ppmという高い毛髪水銀値、しかも有機水銀が検出されているという。

 

 では人間はこれ以上水質汚染が広がるのを食い止めるために何をすればいいのか。これは難しい問題である。水質汚染、と一言いってもその原因は多岐にわたる。今挙げたなかでも、有害物質の排水、重油の流出、水銀など、様々な原因がこの問題に起因している。

 まず排水によって川などが汚れることだが、人口が増加するかぎり、産業などの流人も増加し、人口・産業が増加すると生活廃水や産業排水は確実に増加する。それに伴い周辺の水環境は排水により環境汚染がすすんでいく。これを食い止めるにはどうすればよいのか。人間が生存する以上、産業を停止してしまうことはまずかんがえにくい。そうなると我々人間が己の活動に責任を持つという意味でも、有害物質を無害にして、それから自然に返す義務があると思う。排水に含まれる有害物質を無害物質に変えるためには科学が不可欠になってくる。科学的な研究を重ね、有害物質を分解する技術をこれから探求していくことによって、環境に悪影響を及ぼす排水を避けることが可能になるだろう。

  しかし有害排水問題の解決だけでは当然、水質汚染の原因の全てを絶つことはできない。重油流出をなくすため、船が事故で沈没するといった事態はこれからどう食い止めればよいのか?また水銀汚染をなくすにはどうすればいいのか?アマゾンの水銀汚染に関して言えば法律をつくって水銀の使用を禁止するだけでは、簡単に解決にはいたらない。なぜなら一攫千金をねらう金採掘者は数千万人もいるといわれており、簡単に法律の制限で水銀の使用を禁じるのは難しいからである。

 これから我々人間にとっても最も必要なのは環境問題に対する意識改革であろう。具体的な策を講じる前にまずより多くの人が改善をはかろうという意識を持つ事が最も効果的であると思う。それはどんな身近な努力でも良いから、使用したものは綺麗にして自然に返すという志をより強くもつべきである。たとえば琵琶湖の汚染問題が波紋をよび、琵琶湖付近に住む人々は日々の生活スタイルのちょっとした改善を心がけるようになったという。具体的には生活廃水に気を使うことであり、台所から出る廃水、洗濯廃水などを工夫をする。台所廃水から栄養分を減らすには、残飯などの回収を突堤流さないようにする、天ぷら油を流さない、などにより栄養分を減らすことができる。洗濯廃水では、ユウリン合成洗剤などの栄養分の多い洗剤を使わない、あるいは効率的に洗濯し、洗濯する回数や使用する洗剤の絶対量を減らすことによって、栄養分を少なくできる。滋賀県に住む一人一人が琵琶湖の現状を理解し、未来の琵琶湖のために努力すれば、大きな成果をあげることができるのである。

  一人では小さな効果しか生めないものでも、大勢でやればシナジー効果が生み出せる。個人の意識が団体の意識となり、そして団体の意識が組織の意識となり、より大きな効果、成果を望むことができる。水質汚染問題は主に企業の問題、または自分と無縁の問題と多くに人が解釈していれば、問題解決にまい進できない。我々人間が環境に対して共通の意識をもち、一人一人が水をこれからも綺麗に使っていこうという気持ちを持つ事が何よりも大切なのではないか。

≪参考文献≫

 

戻る