水質汚染をさかのぼる-貯水槽、水道管、水源地

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  授業中のVTRで見た貯水槽の汚れの映像があまりにも衝撃的であったため、今回はその実態について調べてみることにした。調べていくうちに、貯水槽の衛生面について新たな取り組みがあったこと、貯水槽に替わる給水の方式があることなどがわかった。また、貯水槽の汚染以前に水道管にも危険性があること、さらには水源地にも汚染問題が存在していることがわかった。

 

1.貯水槽汚染をめぐる最近の動き

  昨年6月26日に水道法が改正され、貯水槽の衛生面が改善された。今まで、10立方メートル以下の小型貯水槽は清掃の義務がなかった。こういった貯水槽のずさんな衛生管理は水道水の匂いや味に対する苦情の一因であると言われている。この小型貯水槽は貯水槽全体の8割を占め、国民の2000万人から3000万人がこの貯水槽を利用していることになる(朝日新聞2001/7/4)。しかし改正水道法によって、自治体や自治体に委託された民間業者が貯水槽の管理責任を持つことになった。この改正法は今年2002年4月から施行される。

 

2.貯水槽を使わない給水法式

  一方、貯水槽をなくし、代わりとなる給水方式を採っている建物もある。東京都水道局のホームページによると、給水方法には以下の3種類がある。1)配水管からの水圧で給水する直圧直結給水方式 (2)増圧ポンプにより給水する増圧直結給水方式 (3)受水タンクに貯めて給水する受水タンク方式 貯水槽は3番目の入水タンク方式にあたる。これらの給水法には以下のような利点や欠点がある(京都市水道局ホームページより引用)。

 

表1 直結式給水及び直結増圧式給水

メリット

(1)受水槽の定期的な清掃や保守管理が不要

(2)受水槽等の設置費及びスペース削減

(3)受水槽等の維持管理費用が不要

(4)安全でおいしい水を直接供給

デメリット

(1)配水管の断水時には直ちに給水停止

(2)配水管の水圧変動の影響

(3)配水管能力により,一時に多量の水使用が困難

(4)給水装置の口径が大きく,加入金や負担金が増大

 

表2 受水槽式給水

メリット

(1)配水管の断減水時においても,ある程度給水を確保可能

(2)一時に多量の水使用が可能

(3)常時一定の水圧,水量を確保可能

デメリット

(1)受水槽の定期的な清掃や保守管理が必要

(2)管理が悪いと水質低下

(3)受水槽等の設置費及びスペースが必要

(4)受水槽等の維持管理費用が必要

 

 最近は貯水槽の要らない直結式給水方式をとる建物も増えてきている。これは、表1のメリットに挙げられた水に対しての安全性を求める声が強まってきた結果と考えられる。しかし直結式給水方式にも欠点はある。断水や停電時には給水がストップしてしまう。このため、病院やホテル、水が大量に必要な研究施設などは、直結式をとらないでいるほどである。

 

3.水道管の危険性

  一方、貯水槽の汚染以外にも水道水に関する問題点はある。そのうちの一つが鉛製の水道管である。鉛は血中の濃度が一定値以上を超えると、様々な神経障害を引き起こす有毒性のある物質である。子どもに対しては発達障害や暴力傾向、大人に対しては胃腸障害や生殖機能の不全などを引き起こす。厚生労働省の外郭団体が99年に全国の給水人口8割の水道管を調べたところ、全世帯の5分の一が鉛製の水道管を使用していることがわかった(朝日新聞 2001/5/8)。厚労省は、鉛を取り除く浄水器の研究やph調整などの方法を検討している。また、東京都の調査によると、朝一番の水10リットルを飲料水や炊事用に使用しないことが効果的であるという。これは都が鉛製水道管を使う311戸を調べたところ、朝に10リットル以上水を流した後の水は現行の水質基準(1リットルあたり鉛0.05ミリグラム)を超えた家庭が出なかったことによる。この鉛濃度の基準も、2003年度までには世界保健機構の指針にならい、1リットルあたり0.01ミリグラム以下に強化される予定である。

 

4.水源の危険性

  受水槽、水道管と調べていくうちに、水の供給源も汚染の危険にさらされていることがわかった。家庭からの生活排水や工場や家畜による産業排水によって川や湖などの水源地が汚染されているのである。家畜による汚染については、近年、塩素消毒でも死なない微生物による水源の汚染が問題になった。

  96年には埼玉県越生町で水道水を飲んだ町民の半数以上が下痢を訴えた。これは塩素でも死なない病原性原虫が家畜の糞尿を介して水源に混入したことが原因であった。こういった病原性微生物による水の汚染は集団感染をもたらす深刻な問題である。これに対して厚生労働省は、汚染の可能性ある自治体に対して浄水処理の際の原虫を取り除ける「膜ろ過」施設の導入などを進めている。

  また、住民側でも水源を保護する動きが活発化している。朝日新聞5月1日付けの記事によると、住民の飲み水を守る条例や要綱を全国181の市町村が設けていることが分った。名称は水道水源保護条例など水源保護、保全をうたったものが最も多く、約110市町村ある。くみ上げ規制を中心とする地下水保全条例など、ほかに環境条例に水源保護条項を設けた市町村もある。

 

5.私たちがすべきこと

  以前は“水道水の安全性”というと、自分が濁った水道水を見たことがないこともあり、なぜそんなに神経質になるのか?と疑問に思っていた。また、世界には十分な水を確保することができない多くの人がいることを考えると、生命に関わらない程度のことで何故騒ぐのかとも思っていた。しかし今回のリサーチを通じ、実際に水質汚染による被害が出ていることがわかった。これは“塩素消毒は万能”と思い込んでいた私にとっては衝撃だった。これに関しては、膜ろ過浄水の導入を早急に進めて欲しいと思う。鉛製の水道管については、厚生労働省によると、現在のところその被害は報告されていないという。しかし鉛が体内に蓄積されていくことを考えると、今後深刻な被害が発生する恐れもある。このため、一人一人が、朝一番や長期間留守した後の水は飲まないことを心がけるべきである。そういった水は、洗顔やトイレに利用するといいという。貯水槽の汚染については、苦情を申し立てる人が増加しており、水道法の改正にもつながった。直結式給水法式については、便利・快適を求める現代の人々が水道工事や停電の度の断水に耐えられるのか疑問である。

  今回、まずは身近なことに興味を持つことで、水の安全性というテーマについて興味をもつことにつながると思うようになった。水源地の汚染、というと漠然としているが、自分の家の上にある貯水槽、というと親しみがあるものである。こうして一人一人が水の安全性について考えていけば、水源地の汚染問題といった漠然とした問題も改善されていくように思う。

 

参考文献

改正水道法、小型貯水槽も規制 事業体にも管理責任 朝日新聞 2001年7月4日
シリーズ水・川で 生活の汚れ放流 朝日新聞 2001年4月16日
鉛の水道管、交換進まず 850万世帯使う 朝日新聞 2001年5月8日
飲み水守れ、条例化続々 181町村が制定 朝日新聞 2001年5月1日
汚れの原因?貯水槽 増えるマンション、無関心な住民 朝日新聞 2001年5月14日

 

参考情報

京都市水道局ホームページ http://www.city.kyoto.jp/suido
東京都水道局ホームページ http://www.waterworks.metro.tokyo.jp

 

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