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A.今起こっていること
18年前より、世界中の湖沼における水質の悪化、水量の減少による自然・文化・歴史的価値の喪失に対して警鐘を鳴らすべく、第一回「世界湖沼会議」が開催された。この「世界湖沼会議」は、日本最大の湖、琵琶湖を持つ滋賀県が提唱して始まった。そして2001年11月11日から16日の6日間、第9回世界湖沼会議が滋賀県の大津市で開催された。今回の湖沼会議では、世界各国から湖沼の水資源の枯渇と汚濁の現状が報告された。
海域と河川は環境基準の達成率が80%となっている一方、湖沼は84年の42.7%から99年の45.1%とあまり改善されていない。こうした現状からも、湖沼を取り巻く環境への配慮が立ち遅れていることがうかがえる。
新聞が伝えている情報によると、湖沼における淡水資源を脅かしている現象は以下の3つに大別される。@生活排水による汚染 A工業排水による汚染 B水量の減少である。@生活排水による汚染とは、生活排水に含まれる有機物が大量に湖沼に流入し、湖沼の富栄養化が進行すること。富栄養化の計測にはBOD(生物化学的酸素要求量)やCOD(化学的酸素要求量)といった指標が用いられている。一般的に、人口の急増によって生活排水の量が下水対策の許容範囲を超えてしまったためとされている。しかし、琵琶湖や霞ヶ浦では洗剤などが原因となるリンは環境基準値以下となったものの、新たにフミン質と呼ばれる有機酸や窒素による汚染が増えている。A工業排水による汚染については、工業排水に含まれる有害な重金属が湖沼に流入するという事例が報告されている。中国・雲南省のテン池は、工場からの重金属汚染で水源として利用できなくなった。今後は、水源として利用できなくなる以上に、生物濃縮による生物・人体への直接の被害が出てくるのでは、という懸念がぬぐえない。日本の四大公害が彷彿とされるケースだ。B水量の減少は、主に農業用水の過剰利用によって河川流量が減少することによってもたらされる。中央アジアのアラル海は、流入する河川の水を農業用に取り過ぎてしまったため、琵琶湖の100倍あった水面は三分の一まで減少し、漁業は壊滅した。アメリカではスプリンクラーを大量に使用して地下水を汲み上げるセンターピポット方式農業によって穀倉地帯の地下水が汲み尽くされている。現在では、どの大陸でも河川流量の減少地域が拡大し、飲料のみならず農業、工業用とも水不足が起きているという。
穀物一トンの生産には平均千トンの水資源が必要ともされ、61億人に達した世界の人口に食料や水の供給が追いつくのか。(事実、すでに深刻な供給不足に陥っている。)21世紀は食糧不足の前に水危機が到来するといわれている。われわれはこうした現状に直面し、どのような対策を講じればよいのだろうか。
B.人類は何をすべきか
「水資源の汚染・枯渇に際して人類は何をすべきか」という問に対し、前項で述べた3つの分類別に見てゆく。
@ 生活排水による汚染
下水処理施設が整備されていない地域での汚染を防ぐには一刻も早い処理施設の整備が必要である。しかし、もっとやっかいなのは下水処理施設が整備されているにもかかわらず汚染が確認されているケースだ。琵琶湖のケースでは、BODは減少傾向にある一方でCODが増加している。このことが示すのは生物には分解できない難分解性有機物が増加しているということである。この原因として、本来川に流れても土がこうした有機物を吸収していたが、河川改修によって河床がコンクリート化した結果、土に吸収されずにそのまま湖に流入するようになったことが考えられる。こうしたケースに対しては、河川の環境を再び自然に近い状態にもどすビオトープが有効と思われる。この琵琶湖のケースのように、複雑化している水質汚染の原因と実態を把握し、ここのケースにあった対策を講じることが最も重要である。しかし、より根本的に生活排水による汚染を解決するには、生活排水に混じって流出する化学物質についてより詳しく研究を重ね、汚染の原因となる化学物質を厳しい基準で特定し、そうした化学物質が製品に使用されないようにする必要がある。そのためには、人工的な化学物質を使ってより安価なコストで製品を大量生産したい、という目先の利益が環境にもたらす結末を企業はもっと深刻に受け止めなければならない。それだけでなく、長期的には「環境への配慮」が企業にとっての利益となるようなシステムを作るため、各国政府は環境規制を徹底し、環境にやさしい企業活動を支援することが重要である。
A 工業排水による汚染
工業排水の流入による重金属汚染は、その工場がきちんと処理をしていないことが直接的な問題である。しかし、こうしたずさんな工業まかり通る背景には、「先進国による途上国への環境リスクの転嫁」が存在する。すでに産業構造の高度化を達成した先進国は、より安い生産コストを求めて途上国に産業を移転しているが、その多くは環境に負荷の多い重厚長大型産業である。こうした産業を受け入れる発展途上国も、環境への悪影響を防ぐことよりも工業化の推進を優先し、公害が進行するケースが多い。また、先進国よりも低い環境基準を売りに先進国の企業を誘致しているケースもある。こうした発展途上国における環境を守るためには、先進国による資金・技術両面での支援が必要である。発展途上国の低い人件費を利用して工業資材・製品を格安で購入しているのは先進諸国である。すなわち、発展途上国の環境を利用して恩恵を享受しているのは主に先進国なのだから、そうした途上国の環境に対して先進国が責任を持つのは当然である。
B 水量の減少
輸出を目的とした農業生産は、より効率的に生産することで価格競争に勝つことが目的とされる。しかし、効率性を求めすぎるあまり、本来の土地が持つ許容範囲を超えた無理な農業生産が行われ、これが土壌の劣化・水資源の枯渇をもたらしている。この問題を根本的に解決するには、もともとの土地が持つ許容範囲に応じた農業に帰ることが必要だ。しかし、農業産品の自由化が進行する現在、この理想を実現するのは大変困難となってしまった。農作物などの一次産品を主な外貨獲得の手段としている途上国は、環境から収奪している農業の現状に直面しながらも、他の選択肢を見つけられていない。いっぽう、日本のように、本来豊かに農業が行える土地でも、より安価な農産物の流入により国内の農産物は厳しい競争にさらされ、国内自給率は減少し、農業は危機的な状況に瀕している。こうした状況を少しでも改善するには、まず生活に余裕のある先進国の国民が、農作物に対する意識を変えることが求められる。すなわち、大量な農薬の使用、無理な地力と水資源の収奪によって作られる「より安い農作物」から、環境に有害な化学物質の使用を極力抑え、自然の収容力に見合った「より環境にやさしい農作物」へ嗜好を転換すること。こうした嗜好の転換が先進国の国民の間で広く実現すれば、途上国で「環境へ配慮した」農業を実現できる可能性も開けてくるし、また、価格競争では勝ち目のない日本の農業も「自然で安心な」国産農作物というブランディング戦略によって自由化を乗り切れるかもしれない。
C.私たちは、今いるところで何ができるか
「淡水資源を守るため、私たちが身近なところでできることは何か」という問に対し、Bで述べた人類全体の課題をミクロなレベルまで引き戻して考えたい。
私たちがまずできることは、「生活スタイルのみなおし」である。自分が何気なく送っている大量消費型の生活がどのように環境に負荷を与えているか、また環境への悪影響を防ぐためにどれだけ多大なコスト(金額よりもどれだけ環境を利用しているのかというコスト)がかかっているのかを認識することがまず基本である。その次に、生活上無駄な資源の消費を抑えること。「処理施設が完備しているからいくらでも流していい・捨てていい」という発想はやめることだ。そうした処理施設を稼動させるのにも多大なコストが消費されているのだから。その上で、製品を購入する際には「環境への配慮」をメインの基準とすること。こうした消費者の購買行動がダイレクトに企業の環境配慮型の製品開発につながる。さらに、企業株を購入する際にも、環境改善のため努力しているかという基準を加える。これによって、環境への配慮の如何によって企業イメージ・企業収益が直接影響を受けるシステムができれば、環境対策は具体的かつ飛躍的に進むことが期待される。このためにも、私たちはどういった化学物質が環境に悪影響をもたらすのか、ということを知る必要がある。このように、まず自分たちの生活から見直したうえで、さらに余力があれば、環境保護活動をしているNPOに募金したり、その活動に参加してみるといいと思う。河川や湖沼周辺のごみを拾ったりするのも大切だが、まず重要なのは、自分自身が環境に与える影響を自覚することではないだろうか。
(参考資料)
2001.11.16社説]世界湖沼会議 生命つなぐ水資源を守ろう東京朝刊三面
湖や沼、川の淡水資源は人類の生存に欠かせない。その保全と再生を探る、大津市での世界湖沼会議が最終日の十六日、再生への宣言を採択する。滋賀県が提唱して九回目の今年は、七十八か国・地域から二千人が参加している。二十一世紀は食糧不足の前に、水危機が到来するといわれ、水資源の枯渇と汚濁の防止へ、湖沼の管理が一段と大切になってくる。
十七年前の第一回会議は、「世界の湖沼は水質の悪化と水量の減少に悩み、自然・文化・歴史的価値を失いつつある」との警告を発した。その後も状況は一進一退の繰り返しであり、世界の八百か所から、以前よりむしろ悪化した現況が報告されている。
日本でいえば、飲用を含め千四百万人が湖水に依存している琵琶湖で、洗剤などが原因となるリンは、環境基準以下となったものの、新たな汚染物質である窒素が増えている。百万人が依存する霞ヶ浦も、同じ傾向にある。七四年の水質調査以来、ワースト1が続く千葉県・手賀沼は、下水道普及率を70%にして、汚濁の原因物質を漸減させたが、目標値には到達できない。
人口の急増で、生活排水の量が対策を上回っているためとされ、富栄養化の原因は複雑かつ多様化している。
海域と河川は環境基準の達成率が80%となったのに、湖沼は八四年の42・7%から、九九年の45・1%と、あまり改善の兆しが見えない。海外では、中国・雲南省のテン池が工場からの重金属汚染で水源として利用できなくなった。中央アジアのアラル海は、流入する河川の水を農業用に取り過ぎ、世界で四番目、琵琶湖の百倍あった水面は三分の一となり、漁業は壊滅した。
米国では穀倉地帯の地下水がくみ尽くされ、どの大陸も、河川流量の減少地域拡大が指摘される。飲用のみならず、農業、工業用とも水不足が起きている。
穀物一トンの生産には、平均千トンの水資源が必要ともされ、六十一億人に達した世界の人口に、食糧や水の供給が追いつくか、が重要な課題になってきた。二年後には、湖沼から、さらに視野を広げた「世界水フォーラム」の第三回会議が、琵琶湖・淀川水系の滋賀、京都、大阪の三府県で広域開催される。迫りつつある二十一世紀の水危機に、どう立ち向かうかは、そのまま人類の将来にかかわるテーマである。
穀物を大量輸入するわが国は、水の大量消費国でありながら、その認識が欠けていないか。水危機を身近に感じつつ、淡水資源である湖沼を守りたい。
栄養分が湖水に大量に流入し、アオコや淡水赤潮などを引き起こす「富栄養化」。水需要の急増で飲料水の貯蔵庫としての役割を果たす湖の環境保全が叫ばれ、一九八〇年代から国内では下水道整備で歯止めがかかったかに見えていた。しかし近年、新たな問題が富栄養化を進めている。十一月十一日から大津市で始まる「第九回世界湖沼会議」
(滋賀県、国際湖沼環境委員会主催)を前に、「富栄養化」問題を巡る各地の動きを追った。
◆なぜCODだけ
琵琶湖で〈異変〉が始まったのは十七年前。BOD(生物化学的酸素要求量)とCOD(化学的酸素要求量)という、湖の富栄養化の指標となる二つの値が、一九八四年を境に一方は減少、一方は増加の傾向をたどり始めたのだ。
どちらも湖を汚す原因となる有機物の量を表す。BODは微生物を利用、一方、CODは過マンガン酸カリウムという化学物質を使い、それぞれが水中の有機物を分解・酸化する際に必要とする酸素の量を測定する。本来、両者の増減は同じ傾向を示すはずだ。
「一体、どうなってるんだ」。驚いた滋賀県は九三年、原因調査を開始。その一方で二〇〇〇年、北湖のBODは七九年以後、最良の一リットル当たり〇・五ミリ・グラムを記録しているのに、CODは最悪の二・七ミリ・グラムを示した。
「新しいタイプの水質汚濁が進んでいる」
今年九月、県環境審議会の部会で、CODの増加にため息をつく委員たちに、松居弘吉・環境政策課参事は五年間の調査結果を説明した。
県では琵琶湖に流れ込む汚濁物質の削減を進めてきた。しかし、BODが減っているのにCODが上昇するということは、生物には分解できない有機物が増えていることを表す。調査の結果、それが、植物が分解される過程で最後まで残る物質とされる有機酸「フミン質」であることが分かった。
松居参事は「下水道整備などだけでは解決できない問題が現れてきた。ある程度、湖がきれいになった後に見えてきた新世代の問題だ」と驚きを隠せない。
◆発がん物質生成
琵琶湖の東約四百キロにある霞ヶ浦。茨城県内三十二市町村に上水道として利用されているこの湖で、国立環境研究所(同県つくば市)の今井章雄・湖沼環境研究室長も、同じ現象をつかんでいた。
九七年に研究チームを組んで調査し、今年夏、湖に含まれる難分解性有機物は主に「フミン質」と、「親水性酸」と呼ばれる物質と特定した。さらに、この二つは、浄水処理の際に塩素と反応して発がん性のあるトリハロメタンを作る恐れがあるという“おまけ”まで見つけた。
今井室長は「水道水をそのまま飲むと危険性がある。浄水処理の方法を考え直さなければならない」と警鐘を鳴らす。 同研究所によると、八〇年代後半以後、難分解性有機物の増加は、水のきれいな十和田湖(秋田、青森両県)などでさえも進んでいるという。
◆河川と別の基準
なぜ、湖で難分解性有機物が増加するのか。フミン質も親水性酸も、土壌や排せつ物などに存在し、本来、川に流れても土に吸収されていた。それが河川改修で多くの川床がコンクリート化した結果、そのまま湖に流入し始めたのではないかと推測される。
京都大工学部の松井三郎教授(環境地球工学)は、「環境基準値を設定する際に、河川と湖とで異なる指標が使われているという一貫性の欠如が、その増加を放置してきた」と指摘する。
河川では、基準値をクリアするため水処理施設でバクテリア処理を用い、ひたすらBOD削減のみに努めてきた。その結果、分解されていない難分解性有機物は、その存在に気付かれないまま湖に流れ込む。一方、湖の基準値はCODの数値で設定されており、この計測の結果、はじめて難分解物質の増加が分かるという仕組みだ。
松井教授は、さらにフミン質が増加した原因として、田んぼからの排水に注目する。「ほ場整備で排水は排水路を通って一気に湖に流れ込む。その排水には、稲ワラが分解されたフミン質が混じっている。雨が降った際の排水をきちんと調べて早急な対策を取るべきだ」と主張する。
滋賀県は昨年、難分解性有機物の含まれた水を土壌へ流し、除去された割合を調べる実験を初めて行った。しかし、 改善への取り組みは、まだ緒に就いたばかりだ。
◆富栄養化へ新たな対抗策―白樺湖
「ワカサギが湖を汚しているなんて。大事な収入源なのに……」長野県中部、茅野市の山あいにある白樺湖を管理する茅野市池の平土地改良区の両角磯司理事長は四年前、アオ コが発生して水の汚濁が深刻化した意外な原因に、耳を疑った。観光の目玉「ワカサギ穴釣り」が生態系を壊していると は――。
白樺湖は一九四六年にかんがい用に造られた、三十六ヘクタールの小さな人造湖。夏は避暑、秋は紅葉狩り、冬は 凍結した湖面でのワカサギ穴釣り目当ての観光客でにぎわう。
しかし観光地のご多分にもれず、周辺に立ち並んだホテルなどで水質が悪化。市などでは二十年前に下水道を整備、 処理水も下流に放流し、富栄養化対策は万全のように見えたが、九〇年に植物プランクトンが異常繁殖。九二年からは五年連続でアオコが発生、水の汚濁も進んだ。
そんな水質悪化を「ワカサギ原因論」としたのが、白樺湖の水質改善対策を依頼された、信州大山地水環境教育研究センター長の花里孝幸教授(陸水生態学)だ。
◆消えたミジンコ
花里教授は湖のえん堤付近、中心部、上流の三地点を回り水質やプランクトンの種類や数を調査し続けた結果、不思議な現象を発見した。白樺湖には、どこの湖にも一般的に見られる大型のミジンコ「ダフニア」が全くいなかったのだ。ダフニアは大量に植物プランクトンを食べ、これがいないと、小型の動物プランクトンの“食欲”だけでは、植物プランクトンの増殖に歯止めがかからない。
◆ワカサギが捕食
なぜダフニアは姿を消したのか。
白樺湖では毎年、観光のため、七千万粒ものワカサギの卵が放流される。ワカサギにとって、体が大きいダフニアは格好のえさ。過密状態のワカサギに食べ尽くされたと考えられる。
「植物プランクトン―ダフニア―魚という食物連鎖のバランスが完全に崩れてしまっている。この〈生態系の破壊〉が、水質悪化につながった」。花里教授はそう結論付けた。
それでも地元の重要な収入源であるワカサギの放流は中止できない。結果、花里教授が昨年から取り組んでいるのが、人工的に生態系を操作して水質を改善する「バイオマニピュレーション」という手法だ。
◆“天敵魚”を放流
ダフニアを放流した上で、ワカサギの天敵である魚も放流して、適正な生態系を回復する。その魚はワカサギが減っても同様に観光漁業が維持できる必要がある。この事情から選ばれたのが、寒冷な気候に合うニジマス。昨年と今年の五月、体長十数センチの稚魚計約一万匹が放流された。「“ニジマス効果”が出るのは稚魚が成長する二、三年後だが、成功すれば透明度は倍以上になるはず」と関係者らは期待を込める。
とはいえ、この方法でどれだけの生態系管理ができるのかは、未知な部分が多い。まして自然の湖ともなると、生態系の構造は千差万別。同じ操作でも、湖によって表れる結果が異なってくる。
米国で八〇年に行われた実験では、プランクトン食魚より、魚の“天敵”となる別の魚の数を増やすと、湖の透明度が数倍に上がったという。その後、欧米で研究が続き、中国湖北省の東湖ではハクレンという直接、植物プランクトンを食べる魚を放流したところ、アオコが消えたという報告もある。
中国・東湖での事例を調査した国立環境研究所の高村典子・総合研究官は「こうした方法は漁業者の生活に大打撃を与えるので、導入へのハードルは高い」と打ち明ける。それでも「水利用だけを考え、あまりにも人間が環境を変え過ぎた。ある程度、生態系を管理することも必要で、湖に適したバイオマニピュレーションの手法を考えなくては」と必要性を訴える一人だ。
「バイオマニピュレーションは富栄養化の問題への新しい対抗策。発展途上の技術だが、これから実例を増やせば、徐々に有効性を高めることができる」と花里教授は胸を張る。一度人間の手で破壊された大きな自然を人間の力で再生する――壮大な挑戦が始まっている。
(この連載は大津支局・高瀬智玄、松本航介が担当しました)