今起きている水問題

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■a. 記事の要約・概略

@『河川工事前、魚を救いたい・北九州市祝町小学校(授業拝見)』朝日新聞:2002年1月21日(月)

 小学校高学年の子どもたちが、総合学習の時間を利用して大蔵川の観察し、そこで絶滅が心配されている淡水魚「オヤニラミ」の生息を知った。計画が進められている工事の影響から「オヤニラミ」を救うため、市の担当者と採取を計画している。

A『米のとぎ汁で釜川浄化・宇都宮星ケ丘中(きょういく21)』朝日新聞栃木2:2002年1月11日(金)

 宇都宮市立星ケ丘中学校が、釜川の水質改善のため、米のとぎ汁を「EM」(有用微生物群)と呼ばれる微生物で発酵させ、川に流す試みをはじめた。EMとは、生ゴミの堆肥化などにも使われている微生物の集合である。米のとぎ汁をEMで発酵させた液体は、水中の不純物を分解し腐敗菌の繁殖を防ぐとされ、実際に全国各地で水質浄化の効果をあげている。

B『水源守る市民の目』神奈川新聞:2002年1月9日(水)

 相模湖に注ぎ込む川上川が、残土処分場の影響を受けていないか神奈川県藤野町民のグループ「市民ネットワークふじの」が定期的にウォッチしようと、定点調査を始めた。上流から下流まで三カ所の水中に網を沈め、石や砂、生物の数や種類など、川の生育状況を調査した。今後も継続的に観察をしようと、年2回、異なるシーズンに調査を行なっていく予定している。

C『水源環境税(回顧2001:3)』朝日新聞神奈川1:2001年12月27日(木)

 「水源環境税」のあり方を検討するために県地方税制等研究会の分科会が開かれた。水源環境税は、県民が対象で、環境保全に使う法的外目的税を目指している。「水源環境を上流の町だけで守れというのは無理だ」「水源環境を守るのに多額の金がかかるのは分かるが、なぜ特定財源なのか」「まず最初に税ありきでは、実現しない」などといった議論がなされた。分科会の報告書は来年の6月までに出される。

D『拍手の中、再会誓う・第9回世界湖沼会議は閉幕』朝日新聞滋賀1:2001年11月17日(土)

 琵琶湖で開催されていた第9回世界湖沼会議は、16日「琵琶湖宣言2001」を採択し閉幕した。

○ 琵琶湖宣言2001の概要

1. 湖沼にかかわるすべての個人・組織のパートナーシップの構築と充実
2. 情報の公開を共有、環境教育・環境学習の推進、人材の育成
3. 調査研究の推進
4. 総合的流域管理の推進
5. 国際協力の推進
6. 資金調達に関する方式の調査検討

E『市民団体が桂川の生態を調査・「田原の滝」改修に要望も』朝日新聞山梨1:2001年9月30日(日)

 市民団体「桂川をきれいにする会」は、本流最大の滝と富士山の湧水が育む生物生態を探る目的のため、都留市の「田原の滝」の下流で生物調査を行なった。参加者は、改修のすすむ田原の滝を観察し、調査結果を踏まえ、改善を要望することも考えている。

 

■b. 今、地球上に何が起こっているか・情報が伝えていることは?

 人々の生活スタイルの変化による水質汚染、人口の増加による水不足、また先進国と途上国の間の不平等な水の分配などといった、「水」に関わる問題は最近よく耳にするようになった。私が毎日通る柏尾川も、鯉や鷺などといった生物を見かけるものの、両岸がコンクリートで固められヘドロが堆積した、ひどいときには自転車までもが投げ込まれているような「川」である。参考にした記事のなかにも、川の汚れとして夏の花火や、タバコのポイ捨てなどをあげているものもあった。皮肉にも川は私たちの生活の身近なところに存在するため、私たち人間によって汚染されやすい環境にあるようだ。

 浄水場などの浄化システムが整備されている比較的豊かな地域に住む私たちは、河川や水質の汚染、またそれによる水源環境への脅威に非常に鈍感である。湖や川に住む生物にとって、水の汚染は生きる場所を失うほどの重大な危険性を持っているのにも関わらず、私たちは頭で汚染の状況を理解していても、なかなか実感をとしてとらえることができない。しかし、世界には川や池などから汲んできた水の汚染が原因で伝染病などが絶えない地域もあり、途上国では、死因の3分の1、病気の80パーセントの原因が汚れた水にあるといわれている(国際協力事業団『国際協力』2001年9月号)。そのためこのような地域では、これ以上水を汚染しないといった問題とともに、安全な水の確保も重要な課題である。

 また参考記事によると、国内で生じている河川の汚染は大勢の人々が住む下流地域や都市のみの問題ではなく、残土処分場の建設による残土の不法投棄、また廃棄物の不法投棄などといったことにより、上流の流域でも大きな問題となっているという。上流での汚染や汚染とはいわないまでも川の状態の変化は、下流まで通じる川の環境に多大な影響を及ぼすことが予想される。しかし川の上流地域は、小さな町が多いためそれらの町だけで、これらの問題に対処していくのは限界がある。神奈川県は県民から水源環境税をとり、これらの問題への解決に役立てようとしているが、行政がとる環境問題への対策は、ダムの建設などといった問題の根本的解決とならない場合もある。私たち市民が、自身が生きていくためにかかせない「水」といったものにより関心を持ち、何かしらの活動をしていかなければならないと思う。取上げた記事の中には、70を超える国、地域から約3700人が集まった国際レベルの会議である世界湖沼会議や小学生から大人まで幅広い層にわたる市民によって進められている、水環境の保護、改善のための努力とその活動も多く紹介されていた。

 

■c. 人間は・人類は何をすべきか?

 人間はその自身の限られた短い生命期間のため、非常に短期的な視野において物事を考え問題を解決しようとする傾向があると思う。しかし、水環境などといった自然環境問題は、世代やまた地域を超えて取り組み解決に向けて行動されなくてはならないものである。一時的、地域的な解決では、本当の解決とはならない。根本的な解決を見据えた継続的な取り組みが私たち人間に求められていると思う。

○ 国家の枠組みを越えた調査研究

 自然の現状、また人類が今まで自然に与えてきた影響などを知るために調査研究を行なうべきである。水質汚染などの問題を解決するためにも、しっかりとした調査や研究がなされていないと、効果的な対応ができない。例えば、水不足解消のために開発を行なうとする。その時に、その地域の人口や生活スタイル、文化や価値観まで考慮にいれて開発をすすめないと、その開発は自然を破壊してしまうほどの過剰な開発になってしまったり、ニーズに追いつくことができない不十分な開発になってしまったりする可能性がある。また、水などの環境問題は地球的規模の問題であるため、調査研究は、国境などを越えた国際的な協力関係のなかで、行われていくべきであると思う。

○ 「水」問題における協力的なアプローチの樹立

 調査研究のなかでも述べたように、「水」問題には、国家間、国家と市民間、個人と組織間などの協力関係、パートナーシップがかかせない。政府、企業、市民、メディアなどそれぞれの立場の人が、自分の役割を明確にし、主体的に取り組んでいく必要がある。そのためには、世界湖沼会議のようなコンファレンス、2003年に京都・滋賀・大阪開かれる世界水フォーラムや様々な立場の人々が意見を交わすことができるシンポジウムなどの開催を積極的に進めていくべきである。安全な水の確保や水不足に悩む途上国の市民の意見も実際に聞くことができれば、全世界を視野に入れた問題解決が可能になるのではないかと思う。

○ 「水」に対する共通の認識の確立・関心の維持

 現在「水」に対する認識は世界中様々である。蛇口を一つひねって水が出てくる地域に住む人々と、水を汲みに一日の大半を使う人々にとって、同じ「水」であっても、その意味は異なるだろう。しかし世界中で深刻な水不足が進む中、すべての生物は水なしでは生きられず、その水には限りがあるなどといった、水に対する意識を深め、世界に住む人々が共通の認識を持つことが必要だと思う。また、私たちは、水に対する関心を維持しなければならない。水が手に入れやすくなり、水を当たり前のものとしてとらえてしまうのではなく、水を貴重な資源、人類共通の資源として考えていくべきである。

○具体策の提示と具体的行動

 「水」の問題は、緊急に対処していかなくてはならない問題であり、私たちには積極的な具体的な行動が求められている。環境保全に必要な高度な知識や能力、また技術を身に付けていなくても、私たち人間は皆、毎日の生活の中のどこかで水を使っているわけであり、一人ひとりが「水」問題へ何らかの具体的な形で取り組むことができるのではないかと思う。そして「水」についての知識を抱負に持つ学識者や研究機関、NGOなどが、市民に進んで「水」を守るための具体策を提示していくべきである。

 

■d. 私たちは、今いるところで何ができるか?

 「水」問題という地球的規模の問題と私たち一人ひとりの人間とを比べると、一人の人間の力はとても小さなものなのかもしれない。しかし、その一人ひとりの取り組みが結果、「水」に関する問題への解決につながっていくのだと思う。

 近年、市民が主体となって「水」問題に取り組む様々な活動がある。地元の川、池や湖は、地元の人々によって守られていくべきだと思う。実際、川の生態調査や米のとぎ汁を使って川の浄化に取り組むことなどがなされている。私の住む鎌倉でも数年前から、木炭を使用して川を浄化する試みがされている。

 しかし、このような市民のグループとしての活動でなくても、私たち一人ひとりが普段の生活のなかで小さな力ながらも、「水」に関する問題に取り組むことができる場面は多々ある。例えば、

・ 歯磨きのとき水を流しっぱなしにせず、コップなどを使用する。
・ 食器洗いはお湯をためて行い、水を出しっぱなしにしない。
・ お風呂の残り湯を洗濯に再利用する。または、洗車や植物への水やりに利用する。
・ 植物への水やりなど、雨水を有効に使う。実際ニュージーランドの多くの農家では、生活用水のほとんどに、家の隣に設置したタンクに溜まった雨水を使用している。
・ シャワーを長い時間使用しない。またお風呂に必要以上に水を溜めない。
・ 油は絶対に下水に流さない。食器などについた油は洗う前にふき取る。
・ 水洗トイレのタンクになかに、水の入ったビンやペットボトルを沈め、流す水の量を減らす。
・ トイレの水の二重流しはしない。
・ 水は限りのあるものであり、お金を払って手に入れているということを忘れない。

                (参照:国土交通省関東地方整備局『渇水はなぜ起こる・水は命の源。』

                      http://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/1_topics/6_kassui/kassui.htm)

 そして、私たちはもっともっと自然の水と接する時間を作るべきだと思う。海や川、湖などに遊びに行き、水と触れ合い、遊ぶ時間をもつことは、私たちに水の尊さや大切さ、面白さなどを教え伝えてくれるのではないかと思う。

 

 

■参考記事

@『河川工事前、魚を救いたい・北九州市祝町小学校(授業拝見)』朝日新聞:2002年1月21日(月)

A『米のとぎ汁で釜川浄化・宇都宮星ケ丘中(きょういく21)』朝日新聞栃木2:2002年1月11日(金)

   http://dna.asahi.com:7070/cgi-bin/

B『水源守る市民の目』神奈川新聞:2002年1月9日(水)

C『水源環境税(回顧2001:3)』朝日新聞神奈川1:2001年12月27日(木)

   http://dna.asahi.com:7070/cgi-bin/

D『拍手の中、再会誓う・第9回世界湖沼会議は閉幕』朝日新聞滋賀1:2001年11月17日(土)

   http://dna.asahi.com:7070/cgi-bin/

E『市民団体が桂川の生態を調査・「田原の滝」改修に要望も』朝日新聞山梨1:2001年9月30日(日)

   http://dna.asahi.com:7070/cgi-bin/

 

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