世界の水不足

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 今、世界では水不足がたいへん深刻な問題となっている。現在、世界人口のおよそ1/5の人が、安全な飲み水を手に入れることができない状態に置かれている。現在の世界人口がおよそ63億人であるから、12億人以上もの人々が、安全な水を飲めずにいることになる。発展途上国では、安全な水が手に入らないために、毎年500万人から1000万人もの人が、マラリア、下痢などの病気のため死亡しており、これは発展途上国において病気で死亡する人の80%をしめている。また、不衛生な水が原因で、およそ8秒に一人の割合で子どもたちが死亡している計算になる。現在南アジア、アフリカを中心に31カ国が慢性的な水不足に悩んでいるが、2025年にはそれが48カ国に拡大するという予測がされている。

 

 20世紀は世界では石油などのエネルギー資源をめぐって争いが絶えなかったが、21世紀には世界の人々が水をめぐって争うことになるだろうといわれている。水は私たちが生きていくうえで必要不可欠なものであるからこそ、もしも生活に必要な量の水が確保できない状況になれば、私たちは生きるために水を奪い合う争いを始めてしまうことになるのだ。水不足の問題の解決なしには、私たちは争いごとのない未来を構築することが不可能であるといっても過言ではない。今や水不足は、地球に生きている我々一人一人に取って、重大な問題となってきているのだ。

 

 とはいえ、日本に住んでいると、世界の水不足が身近な問題として捕らえられないのは否めない。雨の多い日本では、いつでも水道の蛇口をひねれば、飲料水にも利用できるきれいな水が、いくらでもでてくるからだ。しかし、日本が輸入している多くの工業製品、農業製品の生産課程では、莫大な量の水が使われていることからも、これが日本人の生活と無関係ではあり得ない問題であることが分かる。そこで、ここでは、世界の水不足を少しでも解消するために、人類がすべきこと、そして私たちが今いるところでできることに付いて考えていきたい。

 

 水不足の原因には、いくつかのことが挙げられる。一つは、我々の水の需要が、飛躍的に多くなったことである。そのもっとも大きな原因は、工業化と、生活水準の向上である。地球に存在する水のうち97%が海水であり、残り3%が淡水である。そのうちしよう可能な水となるとわずか0.01%しか存在しない。仮に世界の人々が1日に水を1トン使うとすれば、この水の量は250億人が生活できる量に相当し、水不足という問題は起こってこないはずである。しかしながら、実際には先進国ではそれを遥かに上回る量の水を使っている。たとえば、日本人が1日に一人当たり使う水の平均は3トン、アメリカ人では6トンである。それとは対照的に、発展途上国の人々は10から100リットルの水、先進国の1/100の量の水で生活しているのである。このことから、特に工業化と生活水準の向上が、いかに水需要を多くするかということが理解できる。工業化と生活水準の向上は、人工の増加とともに、水の需要を多くする要因となっているのである。

 

 第2に、森林伐採、都市かなどによる水源の現象が挙げられる。原生林は多くの生物を養い、生物は互いに食物連鎖によって支え会っている。落ち葉、生物の糞が、森の土を豊かな物にし、森は雨水を蓄え、少しずつ流し出すダムの役割をする。人類は農地開発、リゾート開発、プランテーションなどのため、多くの原生林を伐採し、すでに世界の80%の原生林が失われてしまった。森が無ければ、降った雨はどこにも蓄えられずに、一気に川に流れだしてしまい、これが水不足の原因となる。また、人間が都市かを進めるために、土をアスファルトで覆ったり、護岸工事を進めたりしていることも、水源現象の大きな原因となっている。

 

第3に、水の汚染が進んでいることにより、使用可能な水の量が減ってきていることが挙げられる。生活排水、工業廃水がその原因となっているばかりでなく、一見水とは関係のなさそうな大気汚染も、その一因となっているのである。水は海や陸地から蒸発し、雲となり、雨としてまた地上に戻ってくる。そしてその水がまた蒸発するというように、地球上の水は太古からほとんど変わることなく、循環を繰り返している。どんなに汚れた水でも、地上から蒸発する時に、ほとんど不純物を含まない淡水となる。しかし、大気が汚れていれば、雨として空から落ちてくる時に、大気中の汚れも水に溶け込んでしまう。その結果、地上に汚染された雨が降ってくるのである。降ってきた雨が、地下にしみこんで地下水となったり、河川や海洋に流れ込んだりするので、水汚染が進んでしまう。水が地球を循環しているからこそ、大気汚染が、地上の水を汚染する原因となってしまうのである。

 

 これら三つの要因を分析して結論づけられることは、世界の水不足は、自分たちの生活の豊かさと便利さのみを追い求め、自然を全くいたわってこなかった、今までの人間の営みの結果、起こってきた問題であるということだ。工業化による水の需要の増大も、森林の伐採や都市化による水源の現象も、水質汚濁も、すべて人間の開発と環境破壊によってもたらされたのである。私たち人類は、今までの開発優先のやり方を改め、どうすれば開発と環境保全のバランスを保っていくことができるかを、真剣に考えていかねばならない。そして、これ以上地球環境を悪化させないために、この地球に暮らすすべての人々が、自分にできる身近なことから実行に移して行くことが大切である。 たとえば、森林の伐採を少なくするために、紙や割り箸の使用を最小限に押さえたり、またそれらをリサイクルする。河川や海洋の水質汚濁を防ぐため、浄化されにくい成分を含む水をなるべく出さないようにする。空気の汚れを防ぐため、車の使用頻度を押さえるようにする。など、普段の生活の中で私たちにできることはたくさんある。私たち一人一人にできることはほんのささいなことに見えるかもしれないが、この地球に暮らす何十億人もの人たちが、それぞれ環境に配慮した生活をすれば、大きな効果が期待できるはずである。水は地球を循環している。だからこそ、地球環境を守ることは、水環境を守ることに繋がるのである。水環境の大切さ、そして地球環境の大切さを理解し、一人一人ができることから地球に配慮した生活をすることがたいせつなのである。

 

参考にした資料

森林破壊による影響
http://www.ricoh.co.jp/ecology/e-/ecotoday/7/source/s.html
 
世界の水問題に付いて
http://www.worldwaterforum.org/jpn/wwf02.html
 
Access to safe drinking water
http://www.worldwater.org/table7.html
 
水と健康の関係
http://www.worldwaterday.org/hilites.html
 
水の循環に付いて
http://www.secom.co.jp/mizuweb/tikyu3.html
 
地球環境の現状に付いて
http://www.chikyumura.org/jpn/eco-info/kankyo_ima.html
 

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