水と人間
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 水は人間にとって必要不可欠である、ということは言うまでもない。その当たり前かのような事実が全ての人に認識されているにも関わらず、世界ではあらゆる水問題が人を常に悩ませている。今年京都を中心として、世界水フォーラムが開催された。そこでは現在注目すべき水問題にとりかかっている。地球スケールであるこれらの問題をいかに我々人間の生活スケールに持っていくかが重要であるようだ。このレポートでは、世界水フォーラムのホームページで紹介されている数々の水問題のいくつかに焦点を合わせ、対策を考えていきたい。

 

 「人口の急増、産業の著しい発展により、現在アジア・アフリカの31カ国が絶対的な水不足に悩んでいます。さらに水不足から深刻な食糧不足へと進行している地域が広がっています。」というキャプション付で水不足について世界水フォーラムのホームページは紹介している。もちろんこれらの国々では大問題とされているが、実は水不足は我々にとっても人事ではないのである。TBSラジオで毎朝放送されている番組、「森本毅郎スタンバイ」で世界水フォーラム開催にあたって水についての特集が組まれた。それによると、日本人一人当たりの年間の水の消費量は約600トンであるらしい。食料を作るのに水が必要、動植物を育てるのに必要な水も換算して計算するとこのようになる、と言っていた。地球上で存在する限りある水をどう大切に使うかがこの問題の最大議論点であるように思える。この番組では、食べ残しを減らすことが大事だと述べていた。「食べ残しを減らす」。これは我々に必ずできる、一番身近な解決法であると言える。単純に「水不足」と言うと、環境問題によるものだと思ってしまい、そのような大規模な問題を日常でどうにかできるものではない、と思いがちである。しかしこの番組で述べられたように、原因も解決法も身近なものであったりする。大切なのは、このような日常を意識しながら毎日を過ごすことではないか。地球スケールである問題の解決法が浮き上がってくるかもしれない。

 先ほど述べた600トンという数字は「日本を中心とした仮想水の輸出入」という記事でも出てきた。日本の水使用量は取水量で、年間890億m3らしい。そして、仮想水の輸入量は年間651億m3であるとのことだ。つまり、890+651=1541億m3/年の水を使っている。日本の人口は1.2億人であるため、一人当たりにすると年間1284m3の水を使っている。M3の水は1トンのため、一人当たり1284トンの水を一年で使っている。その中で輸入している仮想的水の量は一人当たり651億/1.2億=542トンとなる。先ほど述べた600トンとはこの仮想水のことだったのである。これで分かるように、我々にとって問題なのは直接飲んでいる水だけではないのだ。牛肉を食べるにしろ、背後には莫大な水が使われていることを認識し、やはり「食べ残し」を気をつけなければならない。最近ではもちろんEVIANのように直輸入している飲み水もあるが、人間一日必要とする水分が2リットルだとして、年間0.7から0.8トン。1284トンの仮想水とは比べ物にならない。

 世界水フォーラムは開催をきっかけに人々に水問題の解決に取り組んでほしいと考えている。ネット上の朝日新聞で(朝日ドットコム)「水フォーラム機に市立小すべてに設置」という記事を見つけた。そこでは、世界水フォーラムを機に子どもたちに水の大切さを知ってもらうために京都市立小学校179校に雨水貯蔵タンクを設置した、という情報が載っていた。校舎の屋上に降った雨をため、雨水を花壇への散水などに使うらしい。この記事によると、「水はただ」と思っている児童は多く、その考えを直すための環境教育としてもこの企画は成功しているという。考えを正すことも大事な問題解決法になるのであろう。

 このようなことを踏まえ、水不足を身近な問題と認識することが当たり前のようだが意外と達成されていない第一の目標かもしれない。

 

 水汚濁は我々が一番認識している水問題かもしれない。東京で水道水を飲もうとする気にはなかなかならない。夏に海に行ってもあまりの汚さに泳ぎたがらない人も少なくはない。日常でこの水の汚さ、そして濁りを目のあたりにしている。京都は国内の中でも屈指のきれいな水が手に届くところとして知られているが、そこでも地下水の汚染、そして減少が大きな問題である。NHKで放送された「千年の水脈たたえる都」で紹介された豆腐屋のコメントからもこれは明らかである。豆腐の質というのは水質によって決まってしまい、地下水が地下鉄の増加により汚く少なくなってしまったため、同業の人達は次から次へと失業してしまったらしい。彼も一時期やめなければならない危機に立たされたと言っている。日本は島国であるということもあり、水には恵まれているはずである。それに加え、日本は世界平均降雨量の約二倍の雨に毎年恵まれている。それにも関わらず、日本に住む人々は天然で清らかな水とは遠縁である。もちろん、中には例外もあると思われるが、一般的に考えると遠縁であると思いざるを得ないほどの環境に我々は立っている。

水汚濁問題は発展途上国ではなお重大であるようだ。人口が急増、そして産業が著しく発展している国では下水道等の整備などが追いつかないらしく、水汚濁問題に悩まされている。汚水により発生する病気が80%もしめている。これはとてつもない数字であることは誰もがわかるだろう。問題の重大さを再認識させられる。そして世の中で起きていることの皮肉さに心痛めてしまう。人の生活を向上させるための発展なのに、それが間接的ではあるが人の命を奪ってしまっている。

 

 これより他にも洪水・渇水・地球温暖化などとさまざまな水問題が世界を悩ませている。いかに水が人間を支配しているかが分かる。水は歴史的にも非常に力を持っていたことが「千年の水脈たたえる都」の番組で明らかである。京都は昔から水に恵まれていたのである。京都御所・下鴨神社・神泉苑は地下の大きな水脈の上に一直線に並んでいる。つまり、この上にあることで水を豊富に手に入れることができた。水恵まれているところに権力があった、と言っても過言ではない。水が人間を支配しているとすれば、水を支配しているものは人間をも支配できる、と言えるかもしれない。そのように、水は歴史上政治的にも大切なものであったのである。「天皇は見えざる水脈の上に水の要衝を置き、京都千年の礎を築いていたのです」と番組で述べているように水の重要さが分かる。「都の水源地、下鴨。政治の中心、京都御所。そして飢饉に備えた神泉苑」と番組で紹介されている。この三大名所は水を支配することができたため、人を制することもできたのだろう。だが「治水」、つまり「水を治めること」は現代の社会ではなお困難なこととなってしまっている。それをどう乗り越えるかがこれからの課題であるのではないだろうか。一人がどうあがいても水は治められない。一人一人自分のまわりを見て、水を大切にきれいに使うことが大切である。交通面でも科学面でもステップアップしている現代社会では環境問題が無視されがちである。国としての成長と国民の健康を平行して考えることは難しい。欲がある国としては、前者の方を優先させてしまう傾向がある気がする。そのため、優先されていない環境問題、および水問題に関しては、日常で一人一人が気を配ることが一番の解決法のような気がしてならない。

 これまたNHKだが、「大河出現〜タクラマカン砂漠・ホータン川〜」という年末に放送された番組でも水が人々の生活を支配する様子が描かれていた。タクラマカン砂漠のホータン川は南の崑崙(コンロン)山脈からタクラマカン砂漠を北に500キロ横断して走り、北のタリム川に合流する。崑崙山脈に冬に降る雪や氷河が夏の間解けて大量の水となってホータン川が出現する。たった夏の三ヶ月だけこの砂漠に存在する川であるが、その流域に水を供給、農業がこのめぐみを受けるありがたさが身にしみる大切な三ヶ月である。

 

 このレポートで紹介した情報からだけでも、水をコントロールすることが人類にとっていかに重要かが分かる。水は人間をいい意味でも悪い意味でも支配している。つまり、水は生きていくために貴重であるが、洪水も起こしたりマイナスな面もある。必要であるには違いないが、暴れまわられるととんでもないことになってしまう。上手くコントロールすることが生存のために大切なのである。それにはまず身近なところから取り組んでいくことが適切だろう。

 

 

参考資料

http://wwf3kyo.com

世界水フォーラムのホームページ。「世界と水」「人と水」と数々の特集を組んでいて、今現在世界で起こっている水問題を紹介して情報を提供している。

http://mytown.asahi.com/kyoto/news01.asp?c=5&kiji=334

朝日新聞オンラインの記事。1月15日に載っていた。「水フォーラム機に市立小すべてに設置」というヘッドライン。京都市教委が市立小学校に子どもの教育のために雨水貯蔵タンクを設置した詳細が記されている。

http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/Info/Press200207/Doc/MiyakeMizuFinal.doc

東京大学の教授などの専門家が「日本を中心とした仮想水の輸出入」という題で論文を発表した。その内容がインターネットで公開されていた。「仮想水」という今注目されている問題をテーマにし、グローバル的な議論を論理的に述べている。

・ TV番組「千年の水脈たたえる都」

NHKで12月30日に再放送された番組。京都を中心に清らかな水のすばらしさを現在の古い街中、そして歴史的視点からも描いていた。

・ TV番組「大河出現〜タクラマカン砂漠・ホータン川〜」

NHKで12月15日に放送された番組。タクラマカン砂漠に住む家族を中心に川が流れてくるときの騒動を一部始終紹介している。

・ ラジオ番組「森本毅郎スタンバイ」

TBSラジオで1月21日に放送された中に水についての特集があった。普通の生活に目線を合わせ、今、我々が何を水問題のために何ができるかを調査し、発表していた。

 

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