水との歩み
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 私達は水より生まれ、水によって生かされている。私達人間は水と長い歩みを共にしてきた。生命の源でもあり、生命を支えている柱でもある水は私達人間をはじめ、多くの生物にかかせないものである。水という資源は地球上に99パーセントもあり、それ故ありふれているため、人々はその豊かさに甘え大切にしてこなかった。確かに水は豊富にあるため、日本などの豊かな国にいる私達には水不足という概念すら持たずに水を当たり前のように使っていることが多いが、それは世界中で共通していることではない。世界の中では水不足という問題に日々直面し、毎日を生きている人たちがいる。無限大の力を持った水は、我々生物に限られたものしか与えてくれない。その事実を知っている私人間ができることはたくさんある。世界中の人々がこれからも水と共に歩めるよう、その豊かさに甘えず、限られたものからどうやってその無限大の力を引き出すか今真剣に考えないと、もう次はないかもしれない。

水という物質は私達の生活と非常に密接に繋がっている。それは、命を助けてくれるものでもあるが、逆に命を奪うものにも変身し得る。水が持っている力は本当に驚異的で、さまざまな病気や災害などを引き起こせる。水から起こり得る問題は、本稿で大きく取り扱う水不足の問題、水質汚染から引き起こされる食糧難、伝染病、洪水災害、さらには水紛争などたくさんある。全ての問題が私達人間に非常に密接に関係しているものであるが、ここでは水不足というひとつの大きな問題を取り上げてみたいと思う。

 2003年1月13日毎日新聞朝刊によると、「2000年に60億人を突破した世界の人口は、2025年には80億人に達し、うち半数近くが水不足に見舞われると予測されている。」人類が最初に10億人になったのは19世紀初めで、1920年代に20億人、60年代に30億人、74年に40億人となった。シンコー株式会社によると、利用可能な淡水は全体の約0.01パーセントである約9000立方キロメートルであり、もし一人一日1トンの水を使うならば250億人が生きられるとしている。しかし現状は、日本人は3トン、アメリカ人は6トンというように、先進国の水消費量はすさまじいものである。そのため、現在の人口と利用可能な水の量を比較してみると、明らかに全員が満足して生きていける割合ではない。アフリカなどの発展途上国では一日に約10リットルの水しか使用していない。さらにシンコー株式会社は、1900年から人口は3倍に増加しているのに伴い、水の消費量は6倍にも増加しているとしている。今現在でも発展途上国などでは水不足が発生しているのに、このまま人口が増加していけば、もっと深刻化していくのはいうまでもない。

 では、水不足の原因は何であろうか?上でも述べたように、先進国を中心とする人々による水の消費量が非常に多いということが考えられる。地球上のどこかでのいわゆる水の無駄遣いが地球上の違うところで水不足の原因となっているのである。我々はあまり考えずに水を使っている。近年日本で水不足という言葉がよく使われ、その時初めて水の無駄遣いをやめようという考えが広まったかに思えたが、自国の水不足の心配がなくなると、その考えすら見えなくなってしまった。急激な人口増加も水不足の背景にある。

 

 水不足の原因としてシンコー株式会社は「@工業化による工業用水の急増、A生活レベルの向上による生活廃水の急増、B開発による水源の破壊、C都市化による水源の破壊、Dダム」以上の五つを挙げている。このどれもが人間の手によって行われているものである。人間が自然を第一に考えず、開発だけを見てきた結果が多くの環境問題を生んでいるが、水不足も例外ではない。@とAの原因により水質汚染が起こり、その結果使用可能な水が減少するのである。また、B、C、Dのように、都市化による土地利用の急激な変化や、降った雨水をためておく保水力を持つ森林の伐採が水不足の原因となっている。森林伐採などが行われることで、生態系そのもののシステムが狂わされ、壊されている。森や林などに住む生物はその家を追われ、その結果として食物連鎖で成り立っている生態系が崩れる。また森や林など、木の役目の一つである雨を蓄えるという役目を奪ってしまうことにより、降る雨は蓄えられずにそのまま流れていってしまう。このようにバランス良く成り立っている自然界のシステムを壊してしまっているのである。地球温暖化も水不足を招く一つの大きな原因である。石油の大量消費による地球温暖化が世界の気象バランスを崩し、各地で大規模な干ばつと洪水被害をもたらしている。温暖化により、雨の多い地域にはさらに雨が降るようになり、乾燥地はさらに降らなくなるという。

 

 このままこれらの原因を放っておけば、水不足の問題がもっと深刻化するということはいうまでもない。ではそれを防ぐために我々人間にはなにができるのであろうか。国連では第47回国連総会本会議において、1993年から 毎年3月22日を「国連水の日(World Day for Water)」とすることが決議された。この「国連水の日」が制定されたのは、多くの国々において深刻な水不足や水質汚濁の問題が発生しており、淡水資源の安定供給の確保が大きな課題となっていることが背景にある。このように世界共通で「水の日」という日を制定することで、世界の人々が一年に最低でも一回は水について考える機会が与えられた。また世界の水問題の解決に向けて水関係のあらゆる分野の専門家、あらゆる水の利害関係者が共に活動する仕組みが求められ、1996年に誕生したのが世界水会議(WWC: World Water Council)である。この組織は水に関する国際シンクタンクを目指している。そして、世界水会議(WWC)で水問題の解決に向けた議論が行われ、それより提案された会議が世界水フォーラムである。このように、世界規模ではさまざまな団体が水問題に取り組み、そこで得た情報を世界へ発信している。

 

 水問題に取り組むためには根底から考え直していかなければいけないと思う。日々私達の生活にあふれている水を有限なものとして大切に使い、またそのように我々が意識をもつことが水問題への着実な解決と取り組みになる。ダム建設などの話がある場合、それは自然と仲良くなっていける開発であるのかどうか、関心を持ち考えることが開発を行っている人間の義務である。他の国で起きている水不足の問題に関心を持ち、援助することも我々ができることである。一番大事なのは、行動に移す前段階である、意識の改善であると思う。世界中の人々の意識が高まれば、自然とそれに伴い行動は表れてくるものである。開発を止めろ、などという難しいことではなく、頭の中の水に対する意識を変えるという誰にでもできることから皆が取り組むことが大事なのである。

 

<参考文献>

水についての知識(シンコー株式会社)

http://homepage1.nifty.com/shincoo/m052kyuusui-sigen.html

水問題についてのニュース

http://www.idi.or.jp/vision/wwv-02.htm

http://j.peopledaily.com.cn/2002/03/25/jp20020325_15559.html

http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/science/Earth/200301/2week/07.html

http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/science/Earth/200012/10/01.html

水に関する各団体

http://www.waternetwork.org/society/

http://www.worldwaterforum.org/jpn/index.html

 

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