サンゴからの警告

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1998年、オーストラリア海洋科学研究所が行った調査により、オーストラリアスコット礁でサンゴの死滅にもつながる白化現象が顕著に表れ、そのほとんどが死にかけているということがわかった。また、同じ年、国際海洋連の調査によると、オーストラリアだけではなく、世界中の特に太平洋とインド洋で9割以上のサンゴが死滅したということが報告された。それまでにも、サンゴの白化現象は報告されていたが、それはごくわずかな地域であり、また、それらのサンゴは回復していた。しかし、1998年には、ほとんどのサンゴが死滅にまでいたってしまった。また、2002年に入って、日本をはじめとする世界約二十カ国、四百三十カ所以上でサンゴの白化現象が確認されたとの調査結果を、国連環境計画(UNEP)と米国の保護団体、国際さんご礁行動ネットワークが、発表した。この被害は、1998年に告ぐ被害であり、またオーストラリアのグレートバリアリーフでは過去最大の被害だという。なぜこのような深刻な被害が近年起こるようになったのであろうか?

そもそも、サンゴとはどういう生き物なのであろうか?サンゴは、4億年以上もの昔から地球上に存在し、海底の生き物の棲家として生きてきた。サンゴの中には1000年も前から少しずつ成長し生き続けているものもある。また、サンゴは海底の温度が20℃以下では形成されず、30℃以上になると生態系を崩してしまうという、とても繊細な生き物である。また、サンゴは動物であるとも植物であるともいえる。サンゴは、体長1ミリメートルほどのプランクトンを捕まえて食べるという点では、動物である。しかし、サンゴは動くことはできず、ただ、自分の触手を伸ばし、近づいて来るえさを待つだけである。一方でサンゴは植物だともいえる。それは、サンゴが体内に藻の一種である褐虫藻を育てているからである。褐虫藻は、サンゴの体内で光合成を行い養分を作る。そして、その約90パーセントのエネルギーを家主であるサンゴに送っている。また、サンゴは、赤や青、黄色など色とりどりであるが、その色はすべて褐虫藻の色である。つまり、サンゴの白化現象は褐虫藻の脱落によって起こるものである。では、なぜ褐虫藻の脱落が起こるのか?

 それは、海底の温度が関係している。褐虫藻はサンゴに届く日光の50パーセントを光合成に使い養分に変換している。しかし、褐虫藻は水中の温度が30度以上になると、光合成をして日光のエネルギーを処理することができない。そのため、別の方法で光のエネルギーを処理しようとすると、活性酸素を生み出してしまう。しかし、活性酸素は、サンゴにとって有害な物質である。そのため、サンゴは褐虫酸素を切り離すしかなくなってしまう。そして、サンゴは白化してしまう。褐虫藻を放出してしまうことで、サンゴは、褐虫藻から得ていた多大な養分を受け取れなくなってしまう。そして、サンゴは自然と飢えてくる。そして死んでいってしまうのだ。では、なぜ、海底の温度が上昇してしまっているのであろうか?なぜ、突然に、サンゴは死滅してしまったのだろうか?

 1998年の被害は、大規模なエルニーニョ現象が原因だといわれている。エルニーニョ現象は、数千キロメートル以上にわたって水温の異常上昇を引き起こし、大気の流れを変え、世界各地に高温や低温、多雨や小雨など異常気象を引き起こす。この原因の一つとして、CO2の増加による地球温暖化現象が挙げられる。このCO2が与える影響はとても大きい。大気中のCO2が増加する事によって、地球温暖化が起こり、ここ10年で海水温は0.5度も上がっているという報告もある。また、さんごの白化現象の被害が多大だった1998年には、グレートバリアリーフの引潮では最高5℃以上も海水温が上昇し、1998年後半にはその高温の海水が北上し世界中に被害を与えた。CO2が海に与える影響は、水温の上昇だけではない。このままCO2が増えつづければ、そのうち大気中のCO2は海水に溶けていくことになる。そうすると、海水の酸性度があがる。以前は、海水の酸性度があがる事は、サンゴの成長を促進させると考えられていたが、アメリカにあるBiosphereの擬似実験によれば、サンゴの成長は促進されるどころか、30パーセント以上も衰えてしまうことがわかった。彼らの研究によれば、このままの状態が50年も続けばサンゴの被害はさらに世界中に広がり、200年後には全てのサンゴが成長を止めてしまうだろうといわれている。

 

では、私達人類は今、何をするべきなのだろうか?

何度も述べているとおり、この大規模なサンゴの被害の原因はCO2の増加による地球温暖化である。この問題は、このサンゴ以外にも地球のいたるところで大きな被害を与えると予測されている。そして今、各国でCO2を削減しようとする条約が結ばれたりしているが、実際の成果はほとんどあがっていない。しかし、それではいけないのである。私達は、今、無駄なエネルギーを使いすぎている。それを、国や、国連がもっと規制するべきである。自分たちの楽な生活のことだけを考えていてはいけないのである。また、私達が今しなければならないのは、世界規模で地球の事を考える事である。いくら、オーストラリアのグレートバリアリーフは管理が行き届いているからと言っても、海水温の上昇が起こればサンゴは死滅してしまうのである。そして、海水温の上昇を一ヶ所でくい止めることは出来ない。どこかの国で、場所で、たった一ヶ所でも私達人類が勝手な行動をしただけで、その影響は世界中に広がってしまう。そして、日本はこの悲惨な現状やこれから起こるであろう危機をもっと、私達市民に伝える義務がある。実際、私もこのレポートを書くまでは、サンゴのここまで差し迫った危機について全く知らなかった。知らないからこそ、私達はのほほんと過ごしてしまうのである。

 

また、私達が個人的に、地域で、今できることは何なのであろうか?

それはやはり、できるだけ無駄なエネルギーを使わないという努力ではないだろうか?暑いから、寒いからといってすぐに冷房や暖房をつけてしまう。歩いていくのは疲れるからといって、すぐに車で送ってもらってしまう。そういった小さい事をひとりひとりが改善していきさえすれば、少しずつであろうが状況は改善されていくであろうと思う。学校や地域でも、もっともっと、この地球温暖化に対する対策や、勉強会を開くべきであると思う。私は、神奈川県の逗子市に住んでいるが、地球温暖化が進めば、いずれは、美しい逗子の海岸もなくなってしまうであろう。そういった地域の身近な事を問題にすれば、人々はもっと真剣に取り組むのではないだろうか?また、個人としても、こういった地球の現状に目を向けることがとても大事であると思う。そして何と言っても、一番重要なのは、ひとりひとりの意識の改善である。自分が本当にそのことに危機を感じさえすれば、自然と行動は伴っていくはずである。そして、その小さい力が世界規模にまでつながっていくのである。

最後に、サンゴは、地球の変化にもっとも敏感な生き物であるといわれている。また、何百年、何千年もの間生きてきたサンゴは、その海の歴史をからだに刻んでいる。

サンゴは、4億年前から生息しているが、実は、一度だけ、絶滅しかけたことがある。それは今から6500万年前、恐竜たちが絶滅した頃である。その時も異常気象が起こり、大気中のCO2が増え、海は酸性化し、ほとんどのサンゴ礁が滅亡した。そして、それらのサンゴ礁が再び蘇るまでには、1000万年以上もの時を要した。

私達は、今、その時と同じような状況に立たされているのだ。今、私達が何もしなければ、あの美しいサンゴ礁が蘇るのに1000万年、いやそれ以上のときを要する事になる。何千年もの間生きてきたサンゴを、私達はわずか数十年で死滅させてしまうのか?

私達は、本当に、今、このサンゴたちの警告を聞き逃さず、対処しなければならない。

 

参考資料

国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターHP

http://www.coremoc.go.jp/index.html

白保サンゴ礁の自然と現状HP

http://bungakubu.kokushikan.ac.jp/chiri/TEACHER/Hasegawa/webpages/shiraho.html

京都新聞ニュースHP

http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2002oct/29/K20021029MKC3Z100000091.html

NHK BS1 2003年1月24日(金) - 午後 10時00分 〜 午後 10時50分 _ 放送

ワールドドキュメンタリー セレクション 「サンゴからの無言の警告」

▽地球温暖化に敏感に反応するサンゴの生態

〜1999年 オーストラリア オーストラリアABC制作〜

 

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