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a.記事の概略
【サンゴからの無言の警告】NHK衛星第1(再放送)/1月24日(金)
地球温暖化によるエルニーニョ現象の頻発とCO2の増加により、世界各地のサンゴが死滅の危機に瀕している。グレートバリアリーフやスコット礁を例にあげ、サンゴの生態変化に迫る。
【温暖化とサンゴ礁】http://www.wwf.or.jp/shiraho35vil/threatcoral3.htm
サンゴはCO2とカルシウムを体内に貯蔵し骨格を作る一方、CO2を排出することで海水中のCO2濃度を一定に保ってきた。しかし地球温暖化による影響で、そのバランスが崩れサンゴの白化現象が深刻化している。
【水質浄化に外来水草栽培 水面侵食やっかい者に】朝日新聞/2003年1月8日(水)
水質浄化のため、外来水草を利用している。しかし旺盛な繁殖力があだとなり、生態の変化や除去の必要性といった問題を引き起こしている。
b.今、地球上に何が起こっているか
地球温暖化が生態系に悪影響を及ぼしている。アメリカ・フロリダにある国立海洋保護区では70年代からサンゴの白化現象が観察されており、80年代に深刻化した。90年代になると、毎年大被害が報告されるようになった。とりわけ1998年にはサンゴが激減し、太平洋やインド洋では9割以上のサンゴが死んでしまった。また生き残ったサンゴにも白化現象が見られた。これらの原因として、地球温暖化による頻繁なエルニーニョ現象による海水温度の上昇と、CO2の増加が考えられている。実際、前年の1997年には最大級のエルニーニョ現象が起こった。サンゴは20〜30℃の温度内で正常に生息している。しかし地球温暖化が原因で、1600年代には6年周期だったエルニーニョ現象が、最近では2.5年周期になっている。これにより海水温度が30℃を超え、サンゴ内に生息する楊虫藻が太陽エネルギーを処理できなくなる。この余剰エネルギーが活性酸素となり、白化現象が起こるのだ。さらに温度が急速に上昇していることも問題である。例えばグレートバリアリーフでは19世紀から1℃上昇しているが、最近では10年で0.5℃の上昇とペースをあげている。またCO2の増加により生息状況のバランスが崩れると、サンゴが楊虫藻を切り離し海中に放出するため、白化現象が進み骨格成長が阻害される。この状態が200年も続けば、サンゴの成長は完全に止まるという。
外来水草の問題も、生態系の変化と結びついている。全国各地で、国際自然保護連合や日本生態学会が「侵略的外来種ワースト100」に選んだ外来水草が水質浄化に使われている。外来水草の利点は、旺盛な繁殖力と水中の窒素やリンを吸収する力が非常に強いことである。しかし一方で、人間が手入れを怠り過剰に繁殖しているという問題が起きている。この過剰繁殖が生態系の変化を引き起こしているのである。例えば霞ヶ浦湖岸の水路は茶色く枯れたブラジル原産のオオフサモで覆われ、水底に太陽光線がまったく届かないため、魚や貝が住めそうにない。土浦港にある土浦ビオパークでは、オオフサモや欧州原産のクレソンなどが使われ、水中にシジミが大量に生息している。また処理の困難さも外来水草の問題点である。徳島市では7000万円の予算を計上し、佐賀市では1500万円かけて水草を除去した。高松市ではホテイアオイやボタンウキクサの除去にレッカー車が出動した。水草が放置されれば、せっかく吸収した窒素やリンもやがて水中に戻ってしまう。在来種であれば虫や水鳥のエサになるが、外来植物を食べる動物は少ない。植物の能力を利用することは確かに環境に優しい浄化手段である。しかし人間がきちんと手を入れない限り、水質浄化の効果は上がらないという。
c.人間は何をすべきか?
1世紀以上はかかると考えられているサンゴの再生には、白化現象の進行抑制とCO2削減が不可欠である。そのためにも世界全体で管理していくことが必要である。例えば京都議定書の批准を促進し、CO2削減の目標値を達成するよう努力するべきである。またアメリカの批准拒否問題や、発展途上国と先進国間の主張の食い違いなどを早急に解決しなければならない。具体的なCO2削減方法としては、石油や石炭に代わる新エネルギーを貪欲に採用することが現実的に考えられる。新エネルギーとしては、太陽発電・風力発電・水素燃料・バイオマスエネルギーなどが挙げられる。実際、ソーラーシステムは新築の民家にも取り付けられるようになり、水素燃料によるハイブリッドカーも普及しつつある。だが一般の人々が利用できるようにコストを下げるなど、今後の課題も山積みである。
外来水草は日本国内の問題である。外来水草の利点のみに流されず、欠点について理解を深めることが重要であろう。実際、国土交通省や環境省では外来種の問題性を認識しているが、現場は平気で外来水草を使うという。いきなり外来水草をすべて除去するというわけにはいかないだろうが、少しずつ在来種の割合を増やしていき共存の道をさぐっていくのはどうか。
サンゴや外来水草の問題は、人間が利便性を最優先に追求した結果に起きたといえる。「水」だけでなくさまざまな環境問題が深刻化する今、もはや利便性を犠牲にしても地球環境と共生していくべきである。すでに味わってしまった利便性を手放すことは、本当につらく難しい。しかし、選択の余地がないまでに地球環境は悪化したのだと、全人類が共通認識を持たなければならない。
d.私たちは、今いるところで何ができるのか?
先ほど述べた共通認識を持つためには、まず我々が環境問題について学ばなければならない。多少はマスメディアを通して見聞はあるものの、やはりそれでは不十分である。幼児教育の段階から、小・中・高校と徐々に学習していくべきである。また学習だけでなく、実際に自然と触れ合うことも必要である。例えば今回取り上げたサンゴに関しては、WWFジャパンが主催する白保親子教室というプログラムがあり、石垣島でサンゴや海について体験学習できる。こういった活動を通して、環境を身近な問題としてとらえられるようになるだろう。
次に、我々はどのようにしてCO2を削減していけるだろうか。ハイブリッドカーの使用は無理かもしれない。だが、夏場にエアコンの設定温度を1〜2℃高くすることはできる。これはよく提案されていることではあるが、実際は目先の快適さに負けてしまう人々が多いのではないだろうか。電力の節約も大切である。だれもいない部屋の電気をつけっぱなしにしていたということは誰しも経験があるだろう。こういった細かいところからこまめに努力していけば道は開けるはずである。なにもしなければ解決するはずがない。千里の道も一歩からである。