世界の水事情

W6F2

 

 

   昨年ヨハネスブルグで「持続可能な開発に関する世界首脳会議」が開かれた。そこで、清潔で安全な水の確保と公衆衛生、漁業資源の回復等の項目について数値目標が定められた。安全な水の確保と公衆衛生に関しては2015年までに安全な水接し又は購入出来ない人の割合を半減させる事が目標である。

 日本では全国ほとんどの家庭において上水道が完備されており、塩素滅菌等により安全な水が供給されていて水不足の取水制限でもなければ水のありがたさを実感する事はない。しかし、アジア、中近東、アフリカなどの発展途上国では慢性的な水不足が起こっており、それに加えて人口増加により飲み水、かんがい用水の確保などの水の需要が多くなる事が予想されている。日本と世界の国々での水事情には大きな開きがあるというのが現状である。

 水は循環性の強い物質であるため局地的だった水問題も今や全世界に広がり砂漠化、塩害、河川水量の低下等で世界人口60億人中10億人以上の人々が水不足や衛生問題に直面している。また紛争が起こると政治的背景や国際河川の関係から水問題はより深刻で複雑になるという。

 

米軍基地跡で土壌や水汚染

フィリピンの米軍基地跡で米軍が放置していったポリ塩化ビフェニル(PCB)などの有害物質が原因で癌、白血病、脳性小児マヒの健康被害が起きたとして、住民が米国、フィリピン両政府を相手取り汚染除去と損害賠償を求めている。

環境汚染や健康被害が問題となったのはベトナム戦争や湾岸戦争で武器弾薬の補給地となったクラーク基地とスービック基地跡でアメリカ会計検査院(GAO)からはこの両基地ではアメリカの環境基準が守られず燃料や化学物質が地面に捨られていたという報告が出ている。クラーク基地がピナトゥボ火山噴火の際避難所となった頃は井戸水が生活用水として使われていた。またスービック基地のゴミ捨て場から金属などを

拾って売る仕事をしていた両親から小頭症の子供がうまれたり、家族が癌や白血病で亡くなっ

ている。クラーク基地の井戸水を飲んだ避難民が皮膚疾患や腹痛を訴え、井戸水の汚染が原因と見られる病気で76人が死んだというデータも出ているが米国との間に特に環境の取り決めがなく裁判は住民側の主張が退けられた。

スービック基地の裁判はまだ結論がでていない。

日本でも同様の被害が充分起こり得る。沖縄では嘉手納基地のため池にPCBを含む廃油が投棄される問題が実際起こっており、また横須賀基地では97,98年の防衛庁の調査で埠頭周辺の土壌や地下水から環境基準を超える水銀や鉛が検出されている。基地には大量の危険物質があるのに何がどう処理されているかは全て秘密で健康被害が起こる前に全ての基地の環境調査をすべきと主張されている。また、日米地位協定にもフィリピン同様米国との環境に関する規定がない。NGO「沖縄環境ネットワーク」の砂川かおりさんはヨハネスブルグの「環境サミット」で基地に関するワークショップを開き軍に汚染除去の責任を負わせる国際的な規約を作るよう国連に働きかけていく事を決めた。

 

水質浄化に外来水草栽培

旺盛な繁殖力と水中の窒素やリンを吸収する力が非常に強い事を買われて茨城県、霞ヶ浦をはじめ全国各地でホテイアオイ等の外来水草が水質浄化のために使われている。環境に優しい浄化手段として環境工学などの工学系の研究者に推賞されてきた。が、しかし一方ホテイアオイは国際自然保護連合や日本生態学会が「侵略外来種ワースト100」に指定する程で、霞ヶ浦で分布地が95年は1カ所だったのが浄水施設から逸出して現在は17カ所に増えた。その結果、湖岸にはびこり船が交通できなくなったり、魚や貝も育たなくなるなど生態系にも影響がでている。水質浄化のために栽培されている外来水草だが生態学者によれば水草も収穫されずに放置されるとせっかく吸収した窒素もリンも水中に戻ってしまい人間がきちんと手を入れない限り水質浄化の効果は上がらないという。国交省や環境省では外来種の問題性は認識しているが、現場では平気で外来水草が使われているなどの認識のギャップなどの問題もある。

 

人類の今すべき事

地球上の人類が使用できる淡水資源は全水量の1%に満たない量で貴重な物である事と水は循環性の高い物質であるという事をまず自覚する事から始めなければならないように思った。先のアメリカ基地の汚染問題でも世界の水はつながってる言う意識が低くまた他国の国土だから汚しても良いと言うエゴイズムがあるように思った。その上、責任を取る必要がないという判決がどうも納得がいかない。もしも誰かの部屋でジュースをこぼしたとしてそのこぼした人間に責任はないのかと人間に置き換えると単純な話だが国単位になるとそれがねじ曲げられるからおかしいと思った。とにかく世界中の人々が地球市民としての自覚を持ち汚染に対して厳しくなる事が必要だと思った。国際的な規則を設けて罰していく法の整備がやはり必要である。しかし先進国と発展途上国とではこれまでの汚染に関しての責任の比重が異なるので、先進国がある程度は貧しさが原因で水を汚染している国々に表面的ではなく実のある援助を経済的にも技術的にもしていくべきだと思った。

 

私たちが今いる場所からできる事

企業だったら工業廃水に有害物質を垂れ流さない事、排煙を浄化する事があげられると思う。しかし、それらはずいぶん前から言われており、確かに隅田川も一時期よりは水質が改善されたなどの事は耳には入ってくるが、実際なにがどうなって改善されたのかという事を問われても説明できそうにない。しかしこれは裏を返せば何がどう水を汚染しているのか知らないと言っているようなものでもある。やはりこのような無関心が一番いけない事で改善できるものも改善しない事態を招くように思う。実際、世間の関心が高まる事で変わってきた事もたくさんあるのだから水を大事なライフラインとして見守っていく事を忘れてはいけないと思う。また、やはり日常生活で実行できる事は手を伸ばす事かなと思います。

皿洗いひとつにしても汚れを全部流してしまうのと拭き取ってから洗うのとでは随分違いがあり後者を実践する事で水の汚染を防げると言う事なので無理し過ぎない程度に日常にも取り入れていく事だと思います。

 

<参考資料>

「米軍基地で健康被害」伊藤 景子記者(9.23.2002朝日新聞)
「水質浄化に外来水草栽培」清水弟記者(朝日新聞)
環境ニュース 世界の水事情〜「持続可能な開発に関する世界首脳会議」をうけて〜
URL=http://www.chuoaoyama.or.jp/environment/booklet/pdf/autumn2002_5.pdf

戻る