第3回水フォーラムが今年2003年3月に実施される。 それは世界で起こる水問題をグローバルな視点、世界中がその問題をシェアすることで解決を目指そうというものだ。 またそれを実施することによって一人でも多くの人々に私たちに欠かせない水が今深刻な問題にあることを知ってもらうためにもある。 日本で暮らす私たちにとって石油、原材料などの不足とは逆に、幸いにも私たちは比較的恵まれた環境を維持している。しかし視点を世界に向けてみると、水不足、水質汚染、などを始めとするさまざまな問題を指摘することができる。 このフォーラムを機に後世に美しい水、美しい地球を伝えていくため、私たちは水問題を地球全体の問題、他国で起こっている私たちには関係のないことという意識を捨て、自分たちにかかわる深刻な問題として一人一人が考えていかなければならない。
b. 今、地球上で何が起こっているのか
私たちにとって大切な水
私たち人間の体は約6割の水からできている。そして生命活動を維持するためには、1日約2.5リットルの水分の摂取が必要だとされている。人間は水分のうち1%が不足しただけでも激しい喉の渇きをおぼえ、2から4%不足すると脱水症状が現れるといわれている。そして私たちは体や者を洗ったり、農産物、工業製品をつくったりとさまざまに利用している。「地球は青かった」というあの有名な言葉にもあるように地球には14億キロ立法メートルの水の量が存在する。しかしその97.5%が海水で飲み水に利用できる淡水最終的にわずか0.01%にすぎないのである。世界では途上国を中心として約12億人もの人々がその安全な飲料水を確保できないでいるという事実がある。
さまざまな水問題
今日の私たちは水に対しさまざまな問題を抱えている。 第一に水不足がいえる。
人口の急増、産業の著しい発展によって水の需要が増大し、現在アジア、アフリカなどの国々が水不足に頭をかかえている。水不足が原因で年間500から1000万人あまりの人々が死亡し、12億人あまりの人々が安全な飲料水を確保できない。また2025年には40億人の水が不足する見込みである。第二に水質汚染である。これもまた人口増加や工業等が急速に進みそれに追いつかない施設設備が途上国(世界人口の50%の地域は下水施設が未整備である)を中心として広がっている。水の汚染が原因で8秒に1人が死亡、途上国において80%の病気(下痢、コレラ、腸チフスなど)の原因は水の汚染、また、淡水魚の20% の種類は絶滅の危機など深刻な問題を抱えているのだ。第三にあげられるのが環境破壊によって起こる地球温暖化が地球上の雨の降り方に影響を与え降雨の量や強さに影響を与えるということだ。このほかにも水需要を満たすために地下水のくみ上げをどんどん行い、地盤沈下を生み出しているなどのさまざまな問題がある。
水をめぐる争いへの懸念
日本のように四方を海に囲まれ比較的水に恵まれた国とは別に、内陸地にある国々で国境間を流れる河川をめぐり多くの紛争が起こることが懸念されている。現在の、そしてこれからの水不足に不安をもつ国々が自分持ち分を強く主張するようになったからだ。例えばインダス、ヨルダン、ナイル、チグリス・ユーフラテス付近の国々がそうである。「20世紀の紛争が石油をめぐるものであったとすれば、21世紀は水をめぐるものになるだろう」と世界銀行副総裁のセラゲルディン氏が主張したが、その主張が事実となる日が目前に迫っているのが現状である。
c. 人間は、人類は何をするべきか
政治的介入の必要性
多くの途上国で工業が発展すると同時に水質汚濁の問題が深刻化してきているようだ。これは政府が定めた企業に対する法や規制が曖昧であるという理由で企業が工業廃棄物を河川や海に大量に排出しているからである。かつて日本も水質汚濁によってさまざまな不幸を経験した。例えば1953から59年に水俣地方で工業廃液による有機水銀に汚染した魚介類を食したことにより集団的に発生した水俣病は多くの犠牲者を生んだ。日本はこのような不幸を反省し、政治的政策で企業に対する規制をし、水質汚濁を防ごうとした。それが1970年の水質汚濁防止法である。工業、事業場の排水に一定の基準を設け、違反事業者には損害賠償責任、罰則を定め、公共用水域の水質汚濁を防止するための法律である。そして積極的に水の衛星施設設備を整えてきた。その努力あってか日本の河川や海は以前の美しさをほんのわずかであるが取り戻しつつある。これらのことを包括して考えてみると日本や他の先進国が中心となり、途上国、その国の企業に対し規制を設けるよう要請する必要がある。しかし、このような工業廃液を処理するためにはそれを任せられる技術者と施設建設、その維持などの費用が莫大に掛かる。それらの費用をどのように工面するかが非常に難しい問題なのだ。しかし長い目で見ると多少の費用を掛けてでも水質汚濁に対し積極的な取り組みが望まれる。まず、美しい水が保たれることが今後の私たちにどれほど意味があるということを理解してもらう必要がある。そのために発展途上国の政府、企業、また各個人に対しても環境における教育が必要となってくる(発展途上国の多くの人々にとっては工業化の飛躍が現状の最も大きな目標になっており、なかなか水質汚濁の問題を深刻視する傾向にないため)。そして日本、他の先進国、国際機関、NGOなどの資金、技術協力と途上国自らの努力によって改善されることが望まれる。また水不足という問題をとってみても環境問題(地球温暖化)がひとつの要因になっていることや、工業化の進展にともなる水の大量利用などがあげられる。これらの問題も政府が企業に対し規制をすることで緩和できることが期待できる。
日本の持つ技術世界へ
水質汚濁を防止するため、日本の企業間では競うように次々と洗剤を始めとする「自然にやさしい商品」がつくられている。最近では洗剤のいらない洗濯機までつくられ話題となった。水不足の補給技術も日本は大変優れたものを持ち備えている。それは地球上の水の90%を占める海水を原料とする海水淡水化の導入である。最近では「逆浸透法」といい
水は通すが、塩分を通しにくい「半透膜」と呼ばれる膜を使う方式が多く使われている。わが国では昭和42年以来この事業が行われ(現在では50以上の施設が点在する)、そして平成7年には沖縄県に日本最大規模の海水淡水化施設(日量4万トンの生産水量)が完成している。 海外においても特に水不足に悩む地域、アラブ諸国などにすでに日本の海外協力のひとつとして施設が設けられ、これらの技術指導も行っている。今後もこのような高い日本の技術が世界により広がり、ひとつでも水に携わる問題を解決できることが望ましい。
d. 私たちは今いるところで何ができるか
私たち各個人全員が水問題に対して政府が行っているような大々的なことを行うのは大変難しい。しかし、今私たちにできることは水を大切にしようという意識を常にもっていることが必要である。まず、身近なことから始めてみることが大切だ。例えば炊事を行う際に水の無駄使いや油を流さない、「地球にやさしい」洗剤を使うように心がけるなどである。少しの努力でもそれを大勢で行うことによって改善される部分が多く現れてくるのではないだろうか。
参考資料
「今、世界の水に何が起こっているのか」政府広報オンライン
<http://www.gov-online.go.jp/publicity/tsushin/200302/topics_e.html>
「世界と水」第三回世界水フォーラム推進京都実行委員会
<http://www.wwf3kyo.com/world/index2.html>
「世界の水問題」第三回世界水フォーラム事務局作成のパンフレットから抜粋
<http://www.city.kyoto.jp/kensetu/mizuf/page1.htm>
「水が足りない」
<http://members.jcom.home.ne.jp/stolatos/essay2/mizusigen.htm>
「水問題が地球的関心事項に」岡澤 和好 環境省地球環境局長
<http://www.suidanren.or.jp/essay/essay2_body.html>
「水の世紀」の始まりにあたって (社)アジア協会アジア友の会会報
<http://mishiwa.hp.infoseek.co.jp/mizuno.html>
「共有された水資源に関する協力的かつ持続的な管理の謎」
<http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/kananaski02/g8gai_f_ini.html>
「海水淡水化」先端ビジネスファイル
<http://www.ari.co.jp/sentan/tansuika.html>
「逆浸透海水淡水化システム」神戸製鋼
<http://www.kobelco.co.jp/enviro/kbiz/list/k067.htm>
「国際協力と海水淡水化」
<http://www.milt.go.jo/tochimizushigen/mizsei/wwf3/shisaku>