b. 今、地球上に何が起こっているか、情報が伝えていることは何か?
今、世界で起きている水問題はどれも深刻なものばかりである。途上国で顕著になっている人口爆発や急速な産業化が引き起こす水不足や水質汚濁。その結果起こる河川の渇水や地下水の汲み上げすぎによる地盤沈下。また温暖化など、地球規模で起こる環境破壊が引き起こす洪水や干ばつなどの異常気象が世界各国で起きている。
このように数ある水問題の中から2002年の間に特に気になった水問題を三つこれから取り上げてみたい。まず、はじめに地球温暖化に伴う水問題に関しての記事について見ていこうとおもう。
去年私が大学の入学式に来たとき、もうすでに桜の花は散っていた。私は高校からICU高校に在籍していたためそれが例年より早いということはわかっており少し残念な気持ちもした。そのときはただそう思っただけであったがそれが地球規模で起こる温暖化の暗いかげを暗に示していたことには気づいていなかった。
この記事では、去年三月の世界の平均気温が1880年以来最も高かったことが米海洋大気局(NOAA)の分析でわかったとの報告をしている。具体的には平年より0,77度高く、1月から3月までの平均気温も0,72度高く、海水温度が数年に一度高くなるエルニーニョ現象がおきていた1998年に等しい記録を打ち出していた。このような非常に高い気温が続けば南極の氷は大量に溶け出し海面が高くなってしまう。そうなれば当然海沿いの地域は海の底に沈む危険性が高くなり、そのような地域に住む人には直接の死活問題になる。また、異常な高温によりロシアなどでは雪解けが平年より早く始まっていることが人工衛星から確認された。水資源を雪解け水に頼っている地域の水不足が心配された。
三月の降水量は、イランやアフガニスタン、パキスタンでは平年をしたまわり、三年前から続いているアフガニスタンの干ばつによる水不足に拍車をかけることになった。一方で八月の半ばに発生したヨーロッパ洪水はヨーロッパ至上最悪の洪水となり、エルベ川、ドナウ川が氾濫し初期の段階で少なくとも68人が死亡しチェコ、ドイツなどで30万人が非難した大惨事となった。このとき私の兄がちょうどドイツあたりを旅行していたので気が気ではなかったのだが。
次の記事は南アフリカのヨハネスブルグで開かれた「持続可能な開発に関する世界首脳会議(環境開発サミット)」での主要テーマのひとつである水資源と衛生問題に関する国連の専門家の報告書についての記事である。この報告書によると発展途上国の子供は安全な水を飲めないために一日約6000人死亡している。中国やインドではそうした不衛生な水を飲んで下痢になり死亡にいたるケースがエイズ死亡者の二倍にのぼるとした。
報告書はまた、地下水の過剰な汲み上げ問題も取り上げている。世界中で一年に汲み上げられる地下水は降水量よりも1600億立方メートルも超過しており、中国やインド、アメリカなどで水位が低下している。この過剰な地下水汲み上げには効率の悪い灌漑システムがかかわっている。灌漑に使われる地下水や河川水の25−40%を利用せずに無駄にしていることから世界の水資源問題は深刻化している。このように世界では水資源確保が大変難しくなっていることから各地で、特に幾つもの国に接する国際河川においての水獲得紛争がおきている。この問題は今後も潜在的に大きな問題として考えていかなければならない。
三つ目の記事は安全な水の確保にはあまり不自由することのない日本で起こる水問題についてである。この記事によれば近年作られたダムや取水堰による川の完全な遮断は有明海の環境や周辺水域の生態系に悪い影響を及ぼすという。江戸時代に作られた取水堰は完全に川をせき止めるわけではなく増水した場合は川の流れや魚の遡上を妨げることはなかった。しかし近代的なダムは川を完全に遮断するためにアサリやハマグリの成育に大きくかかわる砂の海への流出が妨げられ、ヘドロ化した泥しか流れてこなくなったため周辺の生態系は大きく変わってしまったという。また川を人工的な護岸で固めてコントロールしようとすればするほど大きな川の氾濫時に堤防が決壊したときの川の勢いははかりしれなくなるとの危惧もある。自然の流れを過度に変形してしまうことは結果的には私たちの生活を脅かすことにつながり、さらには地球の環境を壊し、取り返しのつかない事態へと導きかねないのである。
C. 人間は、人類は何をすべきか?(Think globally)
人間は、人類はというふうに考えるとまずいえることは、今まで地球を散々いじめてきた人間のエゴイズムを捨てさることなのではないかとおもう。現在起きているすべての水問題は結局人間の欲を追求し続けてきたことがすべての原因である。何かの文章で読んだことがあるのだが、古来の日本は自然と共存してきたからnatureにあたる単語がなかったという。つまり人間も自然に存在する一切合切の存在の一構成員に過ぎないという考え方であった。一方西洋の考え方は、人間が一番で人間は自然を支配するという自然に対して絶対的優位な立場にあると思い込んできた。その考え方が産業革命を起こし無謀な開発や環境破壊を起こしてきたといっていいように思う。近代化した日本もこれと同じである。これもどこかで読んでそれもそうだなと感嘆したことだが、公害が問題になったとき、環境保護という言葉がしきりに使われたようであるが、この「保護」という言葉を使っていることがすでに人間が自然を守ってやると言っているような人間中心思考が垣間見えているというのだ。むしろ人間が自然の中で生かされているというのに、このような考え方を人間がいつまでもしているようだったら、地球の構成員の一員として認めてもらうことは永久にないのではないだろうか。長い目で人類の存続を考えるならばまず、人間は自らの驕りを捨て、大自然の恩恵の上でいかされていることを謙虚に受け止めなければいけないと思う。これがすべての出発点になっていくのではと考える。
次に水問題の多くは地球規模でおきていることが多いので世界全体で考え取り組んでいくことが何より大切なのではないだろうか。温暖化をとってみれば直接の原因を作っているのは産業化の早かった西欧諸国ではあるが温暖化による異常気象で被害を受けているのはむしろ発展途上国のほうが多いのである。それを自分らで解決してくれというのはあまりにも傲慢すぎる。先進国には技術があるわけだから、好きなことをやり放題やらせてもらった恩返しに途上国と協力して世界全体に還元していくべきなのではないだろうか。今も世界規模の環境会議は数多く開かれているようだがこれまで以上に真剣に世界全体で取り組むことを重要視していくことが不可欠であろう。
世界全体で動くと同時に二ヶ国間や数ヶ国間での協力もより実行力がある方法として重要である。ひとつの例として、新たなエネルギー発電として佐賀大とインド政府が共同開発をした世界初の海洋温度差発電は火力発電よりコストは低く、汚染物質や温暖化ガスも出ないという優れものである。また水不足の最大の原因である人口増加の解決は先進国の途上国への教育など多方面での支援が不可欠である。このように二ヶ国が技術と資金を出し合って利益優先にならない環境に配慮した技術の開発を進めていくこと途上国と先進国の強調、また国際河川の水獲得権を各国間で何度も協議を重ねて戦争なしで解決していくことなど、規模は大きくはないが実践力のある国際協調も必要となってくるだろう。
d. 私たちは、今いるところで何ができるか?(Act locally)
世界規模で起こる水問題だがその一因になっているのは便利な生活を何不自由なく享受している私たちの行動にあるのかもしれない。つまり私たちのちょっとした心がけがちりも積もれば大きな力になる可能性もある。最初にも言ったがまずは欲を少しでも捨て人間のおかれている立場を自覚し、世界で起きているさまざまな水問題に問題意識を持つことがはじめの一歩だろう。
私たちは電気やガス、石油などを使って便利な生活に慣れてしまってなかなかそこから抜け出すことはめんどくさいことかもしれない。しかしまずは小さな努力を始めてみるべきだ。その責任があるといってもいいだろう。ほんとに初歩的なことだと思うが物を大事に使ったり食べ物をありがたいと思って食べたりすることは本当に大切だと思う。現代日本は大量生産、大量消費、使い捨てというサイクルが蔓延している。この状況を支えるだけにどれだけ環境が破壊され問題がおきているだろうか。また膨大な電気エネルギーを作るのにどれだけの資源が使われ温暖化ガスが排出されているのだろうか。そんなことを考えていると無駄な電気は消して冷暖房も洋服で調節して過剰な使用をやめていくべきだ。また直接水に関わることならお風呂の水を洗濯に再利用することや料理の後に出る水を汚す原因となる滓や油などを垂れ流すことはせずにふき取ったりすることも本当に基本的だが毎日のことだから心がけていきたい。
また身近な水環境に関心を持って、区市町村が企画している水に関する催しものに参加してみるのもいいだろう。新たな発見があるかもしれない。
さまざまな水問題は突き詰めていけばやはり私たちの便利な生活を成り立たせるために起こってきた問題であると思う。私たちは常にそのことを忘れずに自分たちの問題という認識を持つようにしたい。
参考文献
世界気温:3月の平均気温は1880年以来最高 2002.04.19 毎日interactive
有明海に注ぐ河川、ダムや堰で寸断 asahi.com
佐賀大学海洋エネルギー研究センター助教授 asahi.com