異常気象から見る現在の地球
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2002年8月、欧州中部を流れるエルベ川とドナウ川流域で150年ぶりの大洪水が発生した。チェコ、オーストリア、ドイツなどで少なくとも94人が死亡、多数の被害者が出た。各地で交通網が寸断し、歴史的建造物が浸水するなど、その被害総額は3か国で約300億ユーロに及んだ。

 

ちょうど同じ頃、私はSea Programに参加し、イギリスのヨークにいた。幸いにして、イギリスは洪水の被害を受けることは無かったが、滞在中に、雨によって水量の増えた川の川幅が、普段の3倍から4倍になってしまった姿を何度か見た。それは、台風が通り過ぎた後の地元を流れる荒川の風景によく似ていた。台風の所為で荒川が氾濫することを地元の大人達は「水が出る」と言う。水が出るのは、ほぼ毎年起こることだったので、イギリスで増水した川を見ても、特に何も感じることは無かった。

 しかし、ニュースで流れていたドイツなどの大陸の映像には強いショックを受けた。街全体が茶色く濁った水に浸かっていた。これは台風レベルの被害では無い。そのとき、何が原因なのかはわからず、漠然とであったが、とても異常な光景だと感じた。

 

 ヨーロッパで洪水が起こる一方で、アメリカやインドでは干ばつが続いた。ここ10年の間、ほぼ毎年地球上で、干ばつと洪水という異常気象が同時期に見られる。これらの異常気象には地球温暖化問題に一因があると考えられている。現在、地球上では、温室効果ガスによる温暖化が進んでいる。太陽から入ってきた熱は地表にぶつかり、反射する。このとき、本来ならば宇宙空間へと放出されるはずの太陽熱の大部分が、温室効果ガスと呼ばれる大気層によって更に反射され、再び地表へと送り返されてしまう。そして、地球に留まった熱が、気温を上昇させるのだ。この温暖化現象は、随分前から話題になっている環境問題の一つである。それにも拘らず、それを解決するための動きは、あまり表立って見られない。災害のような差し迫った問題ではないため、私達の生活の中では、ついつい忘れられてしまうのだろう。だが、その災害を引き起こす一つの原因は、この温暖化なのだ。多くの災害を乗り越えたとしても、原因を解決しなければ、本当に解決したとは言えない。温室効果ガスは二酸化炭素、フロン、メタン、亜酸化窒素などから構成されるが、その内の約64%を二酸化炭素が占めている。人類は今こそ、温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素を減少させるために、行動を起こさなければならない。

 二酸化炭素が増加する要因は、大きくわけて2タイプある。一つ目は物質の燃焼、二つ目は二酸化炭素を減少させる要因の減少である。現在、原子力発電の割り合いが増えてきたとはいえ、火力発電も%と、まだまだ大きな割り合いを占めている。火力発電では、石炭や石油などの化石燃料を利用して電力を発電している。電力消費量が増加し続けてるのは周知の事実だが、それに伴って発電電力量も増加している。これは同時に火力発電による二酸化排出量も増加することを意味している。よって、我々は火力発電以外の電力発電法を確保する必要がある。太陽光発電、風力発電、地熱発電、波力発電など様々な方法が開発されつつあるが、まだ火力発電程の電力量をつくり出すことは出来ない。しかし、これらの発電方法を上手く組み合わせることにより、二酸化炭素排出量を減らすことは可能であると考えられる。

 また、二酸化炭素排出量を減らすと同時に、それを減少させる要因を増やしていくことも必要である。二酸化炭素を減少させる作用として、森林の光合成や、珊瑚による炭酸同化などが挙げられるが、大規模な森林伐採、海洋汚染やエルニーニョ現象などによる珊瑚の白化現象により、大量に排出される二酸化炭素の処理が追いつかないのが現状である。減ってしまった森林や珊瑚を保護し、増やしていくことによって、地球が本来持っていた浄化能力を取り戻していくのだ。

 これらは各国規模で行うのではなく、世界全体で取り組まなければ意味がない。先進国では各自でその費用を用意し、研究していくことが可能であるかもしれないが、発展途上国で同じように研究を進めていくことは難しい。もし出来たとしても、先進国と同じ早さで行うことは不可能に近いだろう。より早い、より良い結果を期待するならば、世界全体で協力して行うべきである。

 

 では、私達個人のレベルでは、一体何が出来るだろうか。電力や、資源の無駄遣いをしないことが、温暖化を防ぐ一番良い方法だと言える。例えば、冷房の温度を1℃高く、暖房の温度を1℃低く設定する、炊飯ジャーの保温を止めることにより、それぞれ1世帯当たり一年間で約31kgの二酸化炭素削減効果が表れる。また、家族が同じ部屋で団欒し、暖房と照明の利用を2割減らすと、年間で約240kgも二酸化炭素が削減されるのである。その他にも、一日5分のアイドリングストップを止める、風呂の残り湯を洗濯に使いまわすなど、環境庁HPでは、『一人ひとりの地球温暖化対策』として、これら取り組みの具体例を挙げている。1から10までの取り組みを一年間日本全体で行うと約34.7百万t、我が国の温室効果ガス排出量を2.8%ほど削減することが出来るという。そこに挙げられた例は皆、すぐに実行できる簡単なものである。しかし、便利な生活に慣れてしまった私達現代人にとっては、少々不便を感じてしまうかもしれない。行動例は地味なものばかりなので、本当にこれで温暖化が止まるのだろうかと疑問を感じることもあるだろう。

 だが、世界をまとめ、動かしていく人々よりも、その他の、ただ地球に住み、生きている人間の人数の方が、ずっとずっと多いのだ。一人が出来ることは、とてもささやかなものばかりであるが、地球上の人間が皆行えば、とても大きな効果が期待出来るだろう。私達一人ひとりが動き出さなくては、何も動き出さないのだ。二酸化炭素を削減し、温暖化を食い止めるために、日々ささやかだが非常に重要なこの取り組みを広げていかなくてはならない。

 

参考資料

水に関する資料

・読売新聞朝刊 2002年8月21日

・読売新聞朝刊 2002年12月21日

http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/junkan/index-4/11/11-5.html

 :健全な水循環系構築に向けて

水資源と地球環境 1984年から2001年までの異常気象を掲載。2001年8月13日

 

環境に関する資料

・環境省 http://www.env.go.jp/earth/ondanka/katei.html

:一人ひとりの温暖化対策 取り組み例 2003年1月24日最終更新

・気象庁 http://www.data.kishou.go.jp/climate/elnino/mikata/whatiselnino.html

 :エルニーニョ現象についての説明 2003年1月15日最終更新

 

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