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1. 世界の「水」を取り巻く状況
現在の世界では、中東での水資源の枯渇。中国での湖の消滅、アメリカでの難分解性部室による地下水の汚染、ドイツでの酸性雨など、例を挙げればきりがないほど「水」を取り巻く環境状態は厳しい。深刻な水不足がアラブ諸国やアフリカの砂漠地帯で起こっている。アラル海は急速な速さで干上がりつづけている。旧ソ連時代の大規模灌漑により、アラル海に注いでいた2つの大河からの流れが止まってしまったことが原因である。干上がった湖底からは吹きすさぶ風に乗って大量の塩が飛び、周辺の土地を侵食。農地が砂漠へと変貌するなど、水資源の問題は水というカテゴリだけには収まらない影響を周辺環境に与えてしまう。水資源は前者のような直接的な影響も、アラル海のような間接的な影響も、多種多様な影響を人間生活に及ぼしてしまう。また、その影響を受ける人間の数も増えつづけ、水資源は枯渇の一途をたどるばかりである。
(現在、水が豊富に存在する日本では、巷を歩き回っても水の問題を聞くことはめったになく、逆に水問題に対する関心は非常に薄い。しかし、これからは石油の時代ではなく水の時代になるといわれるように、水を管理できた国こそが次の世代、世界で富を集めることになろう。その場合、水資源の豊富な日本はまた世界のトップに返り咲くチャンスが生まれてくる。水が富を生むのだ。)
2. 世界規模での対応策として
これらの問題に対して人類は如何に対処していくべきであろうか?
一つ目に、世界人口の削減があげられる。現在の環境問題の原因は突き詰めれば殆ど人口増加問題にたどり着く。水資源の枯渇問題、地下水、海洋汚染問題などの水問題も大抵、環境増加による大量摂取、汚水の大量排出が原因である。加えて、もともと地球の環境は六十億もの人間を養えるほどの力は持ち合わせていない。六十億という数字は地球のキャパシティーを越えているのだ。水問題でも、このまま人類による過剰摂取が続けば2025年には80億人に達する人類は、うち半数近くが水不足に見舞われると予測されている。
次に挙げられるのが、地球の七割、地球上の水の9割を占める海水の利用である。これまでは海水を蒸留して純水を取り出す方法が取られており、非常にコスト高であったが(サウジアラビアなどの一部の財力を持った国のみが可能)、新しい技術、特に浸透膜を使って塩水を淡水化する逆浸透法が、全く新しい純水製造法をもたらした。逆浸透法は高圧により水を膜透過させることで、水と溶解している塩(イオン)を分離する膜分離法である。これは1960年にロブとスリラーヤンが非対称構造の酢酸セルロース膜を開発したことで実現したものである。逆浸透法は機械的な圧力のみを使用するので、蒸留法などの海水淡水化法に比べ省エネルギーでの潮の分離が可能な分離法であるので、今後の水不足問題には朗報となりそうである。
最後に、水の再利用が挙げられる。現在、世界でも水の再利用が進んでいる。イスラエルでも、都市部で使う水の70%が再利用されている。用途は主に灌漑農業や飼料用作物の栽培に供給することなどである。水資源の再利用は水不足が深刻な国ほど再利用の割合が高く、日本やその他水が豊富な国ではそれほど進んでいない。ただ、水質汚染が広がり水の再利用が不可能な地域もあり、問題も多く抱えている。
リ 地域の活動として
ここで、小規模の活動で水資源を有効に使う(回復できる)方法に話を移そう。湖の水質向上のためのアサザプロジェクト(茨城県 霞ヶ浦)や、全国各地で行われている山間部の植林などは有名である。
アサザプロジェクトはアサザなどの水生植物を湖や池に植えることで、水の中の余剰栄養素を取り除き、湖水の富栄養化を防止する趣旨のものである。このプロジェクトは小学生の参加や地元住民の協力など、地域の小規模な活動ではあるが、確実に水質改善の一部を担っており、加えて小学生に水の大切さや自然との強制の重要さを教える良い機会となっている。これはアサザプロジェクトの特筆すべき天ではなかろうか。
このような、自然による自然環境の回復は(在来種使用に限るが)、科学技術による自然回復などよりも環境に対する影響も少なく、長期的実験も不必要な場合が多いなどの利点が多い。これによる水質の浄化で、さらにおいしい、上質の水の接収が可能となり、日本の水資源量は相対的に上昇するだろう。
植林に関してはもはや触れるまでもなく、全国各地で行われている。森林はその働きによって雨水を山地に貯え、洪水を抑制し、逆に干天が続いたときには徐々に貯えた水を放出して河川の流量の変化を少なするという役を担っている。そしてこの役は水に根ざした生活を送っている人類にとって、大変重要なものとなっている。古来、治水は政治の重要な部分であるから、植林による河川の水量の安定を図る計画というのは現在においてもあってしかるべきであろう。
そしてそれに加えて地下水の汲み上げの制限もすべきである。現在の工場や農家の膨大な量の地下水利用に加えて、近年の生活用水使用量の増加は、地下水量の低下を招いた。そしてそれによる河川の水位低下などが各地で問題となっている。河川の水位低下ならまだしも、メキシコシティーでは、水不足による過剰な地下水の汲み上げにより、この100年で平均7.5メートルも地盤が下がってしまったそうである。流入する川が1本しかないメキシコシティーでは、地盤沈下するとわかっていても地下水を汲み上げざるを得ないそうである。ここまできてしまったらもはや地域の小規模な活動ではどうにもならないという面はあるが、こうなってしまう前に何らかの対処をすべきであり、また、これ以上の地盤沈下が起こる前に地下水使用量の制限などの規制をすべきである。地下水とて無理な搾取を続けていたら遅かれ早かれ枯れてしまうであろう。
また、未だ実験段階ではあるが、水の再利用方法としてアクアポニックスという新技術が米国で現在注目を浴びている。魚の養殖「アクアカルチャー」と野菜の水耕栽培「ハイドロポニックス」を合わせたシステムで、水を循環し再利用する。これはメ閉鎖循環型モとも呼ばれる、限られた水と空間で行うシステムであり、農業に不向きな乾燥地での食糧生産に期待されている。
このアクアポニックスを使ったシステムのひとつとして「ラコシー・システム」というものがある。これはヴァージン諸島大学のラコシー教授が考案したものであり、これは、「雨水を貯め魚の養殖に使う。魚の排泄物などで汚れた養殖の廃水は養分を含み、野菜栽培に利用される。水は野菜の根に吸収されると同時にろ過されるので再利用できる。」というシステムであり、水資源も少なく、農業に不向きな乾燥した地域での食料確保という面に重点を置いている。ここでの、魚の糞や餌によって汚染された水を植物によって浄化、そして水槽に入れ再利用するという工程は次世代で重要になるはずの工業用水、生活排水の再利用への新たなる方法を垣間見せてくれる。また、この技術は人口問題の解決策ともなる可能性を秘めている。このような新技術の開発が今後も継続して起これば、水問題、ひいては人口問題、地球環境問題までもかいけつしてくれるかもしれない。
上記の植林と地下水の制限に関しては日本でも殆どの自治体で全く対処がなされていないのが現状である。排水の再利用にも関心の薄い日本人はこれらのことに関心を持つ事とが重要である。水資源の懸命な利用こそ、今後日本という国を本当の意味で「森と水の国」にできるかもしれない。そしてその賢明な水の利用、再生方法は他の国へのいい道しるべとなるのではないだろうか。
引用文献
http://irws.eng.niigata-u.ac.jp/~chem/itou/memb/m_int2.htmlhttp://www.unu.edu/hq/japanese/news/news2001/prej08-01.html
http://www.con-pro.net/readings/water/
http://www.tv-asahi.co.jp/earth/midokoro/20020512/20020512.html
http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/science/Earth/200301/2week/07.html
http://www.asahi.com/nature/news/020408a.html
http://www.asahi.com/nature/news/020917a.html
ここには乗せませんでしたが、「仮想水」という、ものを輸入して国内で消費することは間接的に海外の水資源を消費しているという面白い考えがありました。