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雨水の有効利用

 

 人類は自らの欲望を満たすためにあらゆる手段を用いて自然を酷使してきた。だが、中国文明を生んだ黄河など四大文明に教えられる地域は現在ほとんどが砂漠になっている。その後も人類は自然を好き放題に利用し、環境を改造してきた。しかしその結果、逆に人類の活動は大きく制約され、その限界に気づき始めた。中でも飲料水の確保は深刻な問題となっている。

人間の体の約70%は水分で構成されている。人間はたとえ食べるものがなくても数週間は生きられる。だが、水がなければ良くて四日しかもたない。体内の水分を2%失うと喉がかわき、痛みを感じる。5%の減少で幻覚が起こり、12%の減少で死に至ってしまう。(ライアル=ワトソン)それほど人間にとって最重要な物質であるにもかかわらず、どれほどその重要性を認識しているであろうか。地球における水の総量は歴史を通じてほとんど変わっていないが、はたしてそのまま飲むことが可能な水はどれほど減ったであろうか。地球上の水の97%は海にとどまり、2%は氷である。つまり人間が使える水は全体の量からすればほんのわずかなはずなのに、それすらも生活排水や工場排水で汚している。

三鷹市では全国のどこの都市よりもいち早く昭和四八年に下水道の100%整備を実現した。だが、その雨水も下水道に流すというシステムには限界がある。特に、大雨が降った際などは下水処理の許容能力を超えると河川にそのまま放水するか、もしくは下水管から雨水が流れ出してあたり一面水浸しになってしまう。下流域の住民にとっては深刻な問題である。その対策として、三鷹市では雨水貯留槽の設置を助成している。屋根に降った雨水を貯め、庭の散水や洗車、また災害時における消火用水や飲料水にも役立つ。また雨水浸透ますの設置も奨励している。雨水を下水道に流す代わりに直接地中にしみ込ませる装置であり、下水管の雨水流出を抑制し河川の氾濫もその分防ぐことができるとしている。この装置は既存の雨樋に取り付けるだけで、その工事費や維持費は全て三鷹市の方で受け持っている。直接な因果関係はわからないが、最近では井の頭公園や丸池公園などにおいて湧き水が発見され、水質の回復が期待できると報告している。

このように環境問題を訴えるだけでなく、その対策に乗り出す時期にきている。人間一人が環境対策にできることは少ないかもしれない。しかし、その環境を破壊しているのも人間なのだから不可能ではないはすである。特に水はこの世でもっともありふれた液体であるが故に、それについて深く考えることをしない。蛇口をひねれば当然出てくるという考え方を今一度問い直してみなければならない。人口が増え、消費も増えている現状からすれば人間の生活を自然な状態に戻すのすらもはや不可能かもしれない。しかし人類が生き延びていくためには自然と折り合いをつけていかなければならない。モノの豊かさや日常生活の利便性、快適性を追い求めてきた大量生産、大量消費、大量廃棄の私たちのくらしが何によって支えられているかを省みなくてはならない。

 

参考資料

雨水利用と緑化を進める会、「雨水利用」、http://www4.justnet.ne.jp/~ame/ame.html
資料、http://www2.nsknet.or.jp/~najhcdm/mann/seikatu.htm
三鷹市基本構想、第二次基本計画(改訂)、「上水道」
三鷹市基本構想、第二次基本計画(改訂)、「下水道」
みたか広報、1999.10.3
ライアル=ワトソン、「水の惑星」

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